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「なんならてっぺん登れるけど行きたい?
あれ、高いとこ…気圧って…それくらいなら大丈夫だよな、確か」
エレベーターに向かいながら安慈はそう言ったがそれより…。
「てっぺんってあの針の上なんですかね!?」
あの針の上って、気圧以前の問題だと思う…。
「あーわかんない、一回しか来たことないから…でも、針の上じゃないと思う」
「今日で、二回目?」
「うんそー。
一回目はマジで20代…大学生だったな、友達に「行きたい!」て誘われて息抜きで来た。その時はすぐ側の水族館だったんだけどさ。
普通に楽しかったんだけど何故か「あんたなんか思ってたのと違うわ」って言われてその人とはそれから音信不通」
「えっ」
…それ、フラれたエピソードじゃない…?
ん?てゆうかつまり7階?魚どうやって運ぶの?
「ペンギンいっぱいいてさー。
でも金魚が大量にいるのはなんというかで…デザイン性とか世界観はまぁわかるんだけど、「わ〜、金魚すくいとか行きたいね〜、得意そう!」ってそれ見て言う気持ちは全くわからんかったわ」
「あ…確かにそれはそうかも…。
…その人は多分、お祭りとかにお誘いしたかったんじゃないですかね…?」
「まぁ多分、確かに祭りは意識してるんだと思うんだよね、あの展示。
あとは珊瑚礁が…The 水槽だったけどチンアナゴは可愛かった。ずーっと見てるとたまに乱闘するんだよ、あいつら」
「チンアナゴ…?」
「なんか細くて小さい棒みたいな魚。皆同じ方見てるんだわ。
同じフロアだし行ってみる?流石に疲れるかな」
気になるのもあるけど…お祭りのお誘いをした気持ちはわからなくはない…かも。
「そうですね。また来てみたいです」
「いいよ、楽しみ増えたな」
ふわっと、とても穏やかに優しく笑って言ってくれた。
…アンジさん、フラれたと思っているのかいないのか…わかってたりして。
と考えているうちにエレベーターが来て、あっという間に7階に着いた。
本当に目の前に水族館があった。これはきっと、デートしやすいようにだ…。
安慈が受付に行くので、自分も支払いをと(安慈の収入ではあるが)思ったが「はい」と、券を一枚さっと渡してくれた。
あ、なんか…。
「プラネタリウムって大きい機会あるよね、あ、なんかよくわからないけどリクライニングの…人をダメにするソファがあったっぽいんだけど埋まってた。けどなんかさ、椅子に座って見るのがいい気がして普通に椅子にしちゃった」
めっちゃ楽しそう。
なんだかこちらも笑顔で心地よく「はい、全然OKです」と言えてしまうほど嬉しい。これは、言葉に出来るものではない。
月のキーホルダー。
券を大切に、バッグの内ポケットにしまう。
会場に入るとあぁ、この静かな空気と閉鎖感。懐かしいしやっぱり落ち着いていいな…。
「あれ、」
そんな中、安慈がヒソヒソ声で前を見て指差す…投影機だろうか。
「今のって小さい…のかな?」
「ホントだ…」
「“楓”のPVの印象強かったな…」
「ん?」
「俺世代かな、良い歌だよ」
雰囲気に言葉少なになる。
上映中の注意のアナウンスが流れ、「ただいまより…」と会場が暗くなる。
閉鎖感が一気に、開放感に変わる瞬間。
────
東京の夕陽が沈んでゆきます…これは、冬の夜空です。
南側には冬の星座の代表とも言えるオリオン座が見えます。オリオン座は比較的見つけやすく、この並んだ三つの星、通称“オリオンズベルト”。
しかしこのオリオンズベルトの真ん中は…惑星ではありません。
オリオン大星雲と呼ばれ、星が集まってひとつに見えるものです。それを挟む二等星。
その上に見える、赤く強い光を放つ一等星ベテルギウスと、下に見える一等星リゲルを目印に、他の星座を見つけることが出来ます。
狩人、オリオンの右肩、赤い一等星のベテルギウスは近年、消滅している可能性も囁かれています。およそ600年の時を経て私たちが生きるこの地球に光を届けているのです。
オリオン座流星群は毎年10月初旬から11月初旬まで観測出来ます。今年は10月21日が1番見える日です。
では、現在に少しだけ近付き、秋の夜空へ。
───
15分ほどの番組だった。
出る人の中にはやはり「水族館も見ようよ!」とそのまま入っていくカップルもいるようだ。
すぐ側にある小さい売店の天井に目が行く。惑星がぶら下がっていた。
「…この上のやつ…」
「売り物ではないだろうね…でも凄いな」
ちらほらと人は入っていたが、それほど大きくはないし、次の番組もある。皆早々と去って行き、ゆったりと売店に入ることが出来た。
「あ」
「何かありました?」
「アロマ……。そういえばリラクゼーションに力入れてるんだっけ…」
「こちらは実際に使われている物ですよ」
店員さんが穏やかな口調で説明してくれるが、安慈がさりげなく「そうなんですねぇ…」と離れる。ピンと来なかったらしい。
透花がふと、後ろの棚を見れば…マグカップとコップそれぞれ二種類ずつ見つけた。
真ん中のテーブルを見ていた安慈も「あ」と振り向き、目が合った。
「合ったか!」
「色変わるんだ…」と星座のマグカップの箱を手に取り眺める。
「へー、コップが…夜行?」
「暗くなると…光る?みたいです」
「…丸い方もなんだ…綺麗だね。コップどっちも買おうか、透花どっちが良い?」
「細い方…」
「だよね、俺こっちの丸いのにしよ…。
マグカップも2種類ある、どっちが良い?」
「え、」
「いやマグカップも欲しいっしょ。暖かいの飲むじゃん?」
「…じゃあ、そっちはアンジさんは?」
「じゃあ青い方。そっちも何色になるんだろうね?」
「ですね…!」
楽しみが増えた…。
そういえば。
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