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「…アンジさんも何か見つけたんですかね?」
「あ、そうそう」
ふと棚に連れられ「この時計さ、可愛くない?」と見る…あ、可愛いというか不思議…惑星の周軌道かな、デザイン。
「オシャレ〜!」
「でしょ。どう?」
「え?」
「そう言えば透花、似合わないほどゴツい」
「ロレックスです」
間があり、「あ、この時計どう?似合いそうだなって。俺じゃ似合わないけどさ」と言われた。
そんなに似合わなかったんだろうか…確か、母だった人がコラボして流れてしまった案件のやつ。
「…確かに欲しいかも。でも」
「あ、俺が思っただけだから無理に…あ、これよく見たらレディース…?」
うーん…と悩み始めた安慈を見て自分もやっぱり…これ、オシャレで可愛いな、欲しいかもとは思ってるんだけど…と言えずわたわたしてしまうが、それを察してくれたらしい、ふとこちらを見て「ねぇねぇ」と楽しそうに振ってくる。
「その時計なら…金…ピンクゴールド?に青か、白に金?か迷うよね」
「青が見やすそうだし一番可愛い…」
「気に入った?気に入ったなら買っちゃおう」
「えっ、でもたくさん…」
「こんな時くらい、いいじゃん。物はタイミングだよ?買っちゃっていい?」
「え、は、」
迷っているうちに…どうやらウキウキでレジに行く安慈を見て…あ、楽しかったのは自分だけじゃないんだ…と嬉しくなる。
荷物を持ち「ちょっとだけ歩きまーす」と、駅から少し離れたパーキングに行き、車に乗る。
ガサゴソ、と時計を取り出し「着けてみる?」と言ってくれた。
「…アンジさん…」
「ん?もしかしてなんか」
「ありがとう……嬉しい」
「………」
ふと黙り、支払いをしてタバコに火を点け「…うん、」と…少し素っ気なく言ったけれど。
「…楽しかった?」
「はい、凄く」
「よかった。俺もなんか、はしゃいだかも…」
「見ててわかりました、よかったです」
「……あ、そういうもん?なんかよかったわ…」
家に帰り、コップもカップも洗い「じゃじゃーん!」とロールキャベツとシチューを出した。
「…めっちゃ美味そう」
安慈はふっと電子レンジの上を見、「一…二枚?」と食パンを手に取った。
「ん?」
炊飯器の前でシャモジとお皿を持っていたのだが、安慈が「あ、カレースタイルなのか!なるほど…」と食パンを元に戻している。
「……あれ?」
「透花の家はいつもそんな感じだった?」
「あ、はい…えっと…」
手が止まってしまった。
安慈は「あ、いやえっと…」ともどかしそうで…。
「…俺ん家、パンスタイルだったんだ、日本人で関東出身なのに…」
「あ、そうだっ…え?パンスタイル…?」
「あほら、関西ってなんでもパンで食うじゃん?」
「そうなんですか?」
「…うん、そうらしい…」
「あ、なんかすみません、えっと…パンとシチューとロールキャベツってどうやって食べれば…」
「シチューをパンにつけて食う」
「あ、なるほど…」
「…てゆうか、」
ふふ、ふふふ…と徐々にツボに入ったらしい、安慈は笑い「大丈夫大丈夫!気にしないで!」と言った。
「え、いや…嫌だったなら」
「違う違う!いやまぁ確かに一瞬ビックリしたんだけど、それいま議論するやつじゃない…っ!
あーいや、ダメならダメって言うけど食べる食べる。腹も減ってるし」
「さ、」と、安慈自らお皿にご飯を盛り「どんなもんなんだろ、カレーくらいだった?」とあっさり流しているのにいや…馴染みない食べ物って絶対嫌なんじゃないかな…と不安が過ぎる。
…ロールキャベツに気を取られすぎた、こっちは微妙だったか〜っ!
結局「ほら」と言い、持ったままになっていた透花のお皿にご飯を盛ってくれたがやはり慣れないらしい、安慈のご飯、かなり盛ってある…。
「あっ、それの、半分くらいでお願いします…」
「…やっぱりこれ多い…よね…」
少し釜に戻している隙に、なんとなく透花は率先…当然と言えば当然だが、適量を盛れば案の定安慈はそれを眺め「あ、カレーくらい…」と目安にしたようだ。
テーブルに持って行くと安慈は思い付いたらしい、「あ、どうせなら」と…プラネタリウムで買ったマグカップに紅茶のティーパックをぶら下げ運んでくれた。
「…あっ、」
灰色は青くなるらしい、と気を取られたが「いただきます」と安慈が手を合わせたので「あぁあ、いただきます!」と…何故か昼の「ナマステ〜」が頭に浮かびつつそれに倣った。
スプーンを持った安慈は少し止まり、「あ、俺の見て、黒だ」と言う…いや、気になるけど「あ、ホントですね」とそちらを見た隙にパクッと一口食べたらしい。
「あ、意外にイける…」
「………っよかったぁ〜!」
やっぱり若干抵抗があったのか…!でもよかった!
「うん、イケるわ。なんというかご飯に合わせてあるし…。
ロールキャベツ、これ手作りか!すげぇ」
お行儀が良いらしい、ナイフとフォークの使い方に品を感じる…。
これは“ウキウキ”ではないな、“ドキドキ”だな…と眺める。
一口食べてハッと目の色を変えた。
「…美味っ。
美味い、ギュッとしてて。これは腹に溜まりそう」
「あー、そっちもよかった〜〜!」
「透花なんでも出来るよな…いつもありがとう」
「え、いやいや…」
「きょーはこれ、風呂入ったらすぐ寝れそう……。あ、いつも通り」
「…はい。どんなにぐっすり寝てても何かあったら頑張って起こします…」
「うん」
シチューご飯とロールキャベツを「美味い美味い」とよく食べてくれている…。
「あっ、」
肝心なことを忘れているけど…まずは、自分でもそれぞれ食べる。
「あ、よかった美味しい」…いやぁ、苦労しただけあった…良い出来だと内心満足。
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