無色透明色彩


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 ほぼ下北沢駅だな…と気付きコインパーキングを探すのに手間取り更に、どうやら停める口を間違えたらしい。
 ケータイマップに住所を入れ歩いて散策。雰囲気が随分…カオスさが増した気がする。何屋街がどこでどうなったのか…。

「…間違えたかな…」

 目的地デス。

 え、鉄筋ビルなんだが…いや、確かに昔もあったけどThe 鉄筋ビルだ…。
 昔のディスコやクラブ=現在は大体ライブハウス、の感覚ともまた違うThe 鉄筋ビルの地下階段に、スプレーの落書き…殴り書きで「welcome」だの「処方箋↓」だのと書かれているヤバそうな場所だった。

 処方箋…間違いはなさそうだが間違っていそうだとつい、先に着いた同僚に「もしもし…」と電話をした。

『もしもし』
「お疲れ様です平良さん…。
 下北沢まで来たんですが場所が…」
『…わかりにくいけどわかりやすく処方箋と』
「あ、わかりました…本当にここなんすね…」

 電話を切り、思わず透花と目を合わせ「…ここらしいんだわ…」と言うしかない…。

 マジなカオスの真骨頂。

「からかわれてんのかな…」

 苦笑いする透花に…何かあったらまずどうやって逃がそうかな…と考える。

「ウェルカム…」

 呟いた透花にうん、逃げる時は手を取って走る以外にないなと、自然と手を取り階段を降りた。

 スプレーの雑さとは違い、ドアはめちゃくちゃアンティークで洒落ている…あぁ、これ謎の外国人が出てきて何か買うまで帰してもらえない竹下通りの服屋と同じ原理じゃないか…?

 ドアノブに掛けられた札は「CLOSE」…。
 あ、帰ろっかなと思ったが、見えた店内のカウンターに見知った背中があり、仕方ないな…と観察をする。

 「ミックスバー」だの「メンズオンリー」だのはない、ドアの上には鉄板を削った「Item Shop HAZE」。

 …あぁ、ここだわ…。恐る恐るドアを開けた。

 ちゃらんちゃらんと鳴るだだっ広い店内にはなるほど…展示品のようにアクセサリーが数点、ショーウィンドウに飾ってある。

 …ここはもしかすると本当にバーか何かの跡地なのかもしれない。薬棚と対面式のカウンターテーブル…奥に部屋がありそう。

 左奥のカウンターテーブルにはあの橋田製薬の袋が置いてある。写真で見た通りの白髪で日本人離れした顔立ちの若い男がリーフレットを眺めている。煤か何かが付着した白衣着用。

 男と目が合うと「あれ」と言い、平良もちらっとこちらを見た。

 早速眼鏡だ。左隣の椅子にも橋田製薬の袋が置いてある。

 平良から何席か離れた椅子に子供が座りパッド端末の画面を眺めている…足元のランドセル…多分その子供に気を遣い離れてタバコを吸っている…んだろうが…。

「平良さんっ!?」

 ツッコミどころがありすぎて着いていけない。この混沌をどう対処すべきか。

「お疲れ」

 …異常事態だ。
 異常過ぎて……あぁ、病院に透花を引き取りに行ったらようわからん製薬会社の調査依頼を受けたりなんだりうん、自分のメンタルが疲れているのは重々わかってるけどこれはちょっと追い討ちが行き過ぎているどうしよう…の果てに「…何人?」という男の一言。

 ついつい透花を背後にし腕で「前に出るな」とやる防衛本能の中、端末からはバンドか何かのライブ音声が聞こえてくる…。

「…は?」

 以外に言うことが見つからない。なんせオーバーキル気味だ。

「あのイカレ闇医者に頼まれたんだろ?」
「………平良さんちょっと待ってあぁ、そうなんですけどこの状況は一体全体」
「…とにかく座れば?後ろの子肌白めなんで今日、暑いっしょ?
 クソ眼鏡さん、袋退かしなよ。あ、俺はハゼと申します」
「クソ眼鏡って呼ぶなクソガキ。子供に悪影響だ」

 ……何その矛盾。

 ボソッと「透花、逃げる時はあの子を連れて先にドアを開けて…」と言っておき、透花を子供側に座らせた。

「ついに仮面奥さんか、もしくは慧が来るんかと思ってたのに」

 サラッと爆弾をぶん投げたハゼはしれっと灰皿を置いてくれた。

 …この灰皿…多分、手作りだ。

「…ありがとう…一本吸う…。一個一個処理したいんで爆弾を投げないでくださいね。
 えーっと…慧ってのはこのクソ眼鏡の…何か兼福山風味の養子の」
「ふはっ!そうそう、このクソ眼鏡の元セフレ兼ここのオーナーヤクザの現妻」
「うるせぇよこの薬機法違反紛いが」
「……あ、セフレだったんすねあの子」
「海江田てめぇ、子供の前だぞおい!」
「そう!その子はなんですか、なんの子!?
 あんた何、隠し子とか産ませて放置してたパターンのクソ野郎かどっかから攫って来たのか趣味が」
「俺をなんだと思ってんだよ、養子だ養子!」
「えっ…」

 様々色々ぐちゃぐちゃになったが「ちゃんと養子!」とハッキリ言われた。

「……あ、そーゆー感じではなくってえ?より謎なんですけどつまり仮面奥さんってのは…」

 「一年前くらいに仮面奥さん作ってるらしいけど知らない…か、指輪ないもんね」と、何故かハゼからアンサーが来た。

「ゅ、びわ!」

 子供が突然声を出したのでビクッとする。

 子供と一緒にライブ動画を見ていた透花も少し身を引くが、ポケットを漁る子供を見てなんとなく端末を退かしてやっている。
 小さな巾着を出し、そこからコロンと何かを転がした子供…どうやら、指輪だ。だが小さい。

 子供は太陽のような笑顔で「ママ」と指輪を見せてきた。

「こ、こぃちゃんがく、くれ、た。リョータ、くんが、ななおって、くれた!」

 ん?という雰囲気に平良が「少し吃音があるんだ」と言う。

「こいちゃんってのが、書類上の俺の妻」
「…マジな話なんですか…。
 え?なのに慧くんに粘着」
「してない。慧は飲み仲間、いまは」

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