無色透明色彩


3


「…話そうって、言ったのに…」

 でも。

「透花の中に今…何かはあるんだよね?」
「……うっ、ん、」
「透花、教えて。透花は俺に何を求めたの」
「……わか…ない」
「暴走しちゃったのか、あいつ…当たって砕けろ的なやつだったのかな…」
「……ん、」
「硝子みたいなやつだなぁ。
 まだ破片はあるんだよ。こんなにも、透花が思っているなら…」

 状況は芳しくない。
 オリバーがどうするかなんて、わかっているような気がするけど…。

 …でも?

「…先生と話したかったのって、どっち?」

 聞いた頃には下に着いていた。
 救急車から藤沢がぱっと出てきて…なんとなく察したようだ。特に何も言わず、まずは救急車でも出来る処置をしてくれた。

 病院に着く頃には静かになっていたが、パタパタパタパタ、と医師が駆けずり脳波検査の部屋へ入っていく瞬間にふっと一言「子供が遊びたがるのだ」と言い残された。

「…え」

 安慈は藤沢にざっくりと「別人格が現れたようで…」と説明を始める。

「今日は少し出掛けたんですよね…。
 互いに疲れて俺は完全にノンレムってましたが…」
「透花ちゃんもノンレムっていた可能性は高い…ですかね?お薬は?」
「飲んでないはずです。
 透花は昼から買い物に行き手の込んだ料理まで作ってくれましたからね…。
 別人格が…イタズラをしに俺の布団に入ってきて起こされました。
 少し話しをし寝ようと話を付け再び眠ろうとした時には透花で…震えに気付きました。
 抜けた、と言った瞬間に…あれは癲癇時の震えですね…こう、ぎゅっとしてたので…。
 今はあの通り…なんなら話をしながら降りてきました」
「…意識は多分、ありましたよね…電話口でも…」
「ですね……。
 わかんねぇんですが…いま、なんとなく実は延長線上でユリシスなんじゃないかなって…」
「ノンレムってる」

 オリバーがササッと現れ、脳波のパソコンを眺め始める…。
 いつの間に?

「…あ、先生!」
「ん」
「すんません、こんな夜中に…」
「確かに家でレムってた。
 ん〜……まだ終わってないけど今の波形はミオクロニーっぽい……あの傷から出て…そう…かな。
 事情わからない医者なら即、突発性か部分癲癇て診断すると思うし実際そうだけど厄介かも。
 連続レムってるというか…うーん、アンジが言う通り、混濁やら消滅するなら治療も高難易度になるよ。
 オレ話そうと思う、クソガキと」

 あっ。
 眠いんだろうな、オレって言った。
 いや、待て。

「出てきたらだけど」
「いやいや先生?マジ?」
「マジマジ。楽しそうじゃん」
「いや〜…えぇ…」
「原因わかればワイパか…何にするかな。今んとこワイパ。コーローショーのオマエに言っとく」
「と言われましても医師に任せるしかないわけで…」
「てか眠くないん?」
「眠い、非常に。先生は?」
「ちょー眠いやる気ない」
「ですよねっ」
「何が心配?第3種だし薬機変わんないじゃん。リタリンがいい、ホントは」
「いや、大丈夫なら劇薬より第3種の方がコーローショー的にはいいっすよ?」
「じゃ何が不満?」
「不満じゃないんですがどちらかと言えば先生の身の安全も心配せねばならんわけでして、イカれてるから余計に!」
「あのIQ高すぎて調子乗ってるクソガキっしょ。一回くらい殴った方が」
「ほらぁ、やめたげてくださいよそこまで言ってないじゃん…あの子自殺しちゃう…」
「融解と言え、やっと諦めたんだよ。ムダなテーコーはよせ!て取り押さえたらいーじゃん」
「いざとなったら止めますけどそれ……先生、なんかドラマでも見ました?」
「シーズン23、そろそろ終わる」
「…透花もあれ好きなんだけど信じらんねー…」
「気が合う〜」
「…あんた大麻キメてないっすよね、素でこれなんすか」
「No Commentッ」

 キメててもキメてなくてもヤべぇじゃんこの人…流石イカレ闇医者…。

「気張るな息抜け。だからダメなんだよアンジ」

 …それはもうみんなから言われてますが先生が若干ぶっ飛んでるので「確かにっ」と同意が出来るメンタルにはなれました…。

「…じゃ俺も深夜のパジャマパーティー参加OKっすかね?あの出しゃばりクソガキと話そうって言った直後で……腹立ってきたな人質取りやがってあのクソガキっ」
「深夜テンショーン!誰かダークバッチに氷用意!」

 …皆、無視。

「…俺ライ麦飲んだことないんでプレミアムからいきません?てか勤務中じゃん…」

 物凄く楽しそうに笑う主治医、深刻な雰囲気だけどこの医者を空気のように扱うというか慣れまくってる他の助手達の精神力が凄ぇ、鍛錬されている…。

「もーいーよワイパなら。まだマシでよかっ」
「本気で言ってんならオマエにヒ素ぶっ込むかんな?案外真剣にどーしよーか結果待ってんだかんな?」
「……すんません、ですよね、よかったっす…」

 全然大丈夫じゃないくせに優秀な医者…これは確かに「深夜テンショーン!」と気を抜くくらいの方がいいのかも…。

 黙りこくると次は「ふふっ、」と藤沢は上品に笑ったが…どうやらマジなツボだったらしい、「ふっ、ははっ、へ、いや、すみません真剣にふっ、ははっ、お、おふたりがお…面白くてついっ、」と笑い出してしまった。

 全然大丈夫じゃねぇ。マジで。

「……オリバー先生、薬機じゃなくて労基に言ってもいいですか?藤沢さん激務じゃないんです?これ」
「いやフジサワはいつもこれだ。何度殴ろうと思ったか。不思議なタイミングでいつもこう」
「…労基もギリ回避してきやがったかこの医者…」
「でも私が一番長いですよ?みんな辞めちゃいますから、先生の下に着くの」
「あー…」

 なるほど…このイカレ闇医者の下で働くなんて、メンタル不思議ちゃんじゃないと無理か…。

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