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「……いや、」
「そうだよ、全然楽しくないの取り残されてんだよ。
オマエね、アンジをトウカから寝取ろうとしたクソガキなんだよ」
「あっ、言われてみればそうか」
「だってこれは、」
「トウカの“身体”だ」
「…………なるほど。
私は透花をずっと傷付けてたの?そう言いたいの?」
「そう言ってる」
…ここだな、止めに入る所は…。
「確かに君は透花の幸せを願ったんだとは思うよ。
先生、追い込まないであげて」
「ツッ、甘いな。じゃぁ、どうぞ?」
「はい。
だから、仲間外れではないからね、ユリシス」
「…んん……?」
「透花を幸せにする、いや、嫌なことを察して無理矢理幸せ変換し捻じ曲げて君が出来た。わかるよ?透花は可哀想なんだもんな?」
そう煽る安慈に「向いてないけどそれ」とオリバーに言われたが「しっ!」と黙らせる。
「どうなの?」
「…可哀想だからとかそういうのは」
「君がいるから可哀想じゃないんでしょ?」
「アンジ、ユリシスにそこまでの感情がまだ」
「だとしたらより質が悪いね?ユリシス。随分上から目線だし捻くれている。俺は透花を…同情もするけどそんなに安いもんだと思ってないから。
じゃあはい、俺のことが好きだとします、抱いたとします、本人は知りませんでしたって何?そーゆー自己満が一番嫌いなんだわ、俺」
「………ぅん、」
弱々しくなったユリシスに「泣くなバカバカしい」と叱る…。
この子は叱られることを知らない“個性”だ。純粋さゆえの不純。これもひとつの被害ではあるんだろうが…。
「俺と透花の涙…血液成分を返せクソガキ。
別にね?いいよ。お前の浅はかな承認欲求に俺を利用しようとね?
いーよ抱いたるっつってんだよただな、君以外は相手方となるんだよそれに同じ物を求めんな?わかる?いちいちメンヘラぶっこいてその場しのぎでセックスセックスってほど俺は鳥頭じゃねーんだわ、いーー両親に育てて貰ったんでね!」
「……あれ?それオマエの闇じゃ…」
「はいそーです。俺もいっそ吐き出しますよ。
嫁いびりの延長戦で俺は意地悪ババアの家で世話になりましたァ、母親は病んで、っしたらよ、死ぬ死ぬ詐欺連発して最終的に親父に「抱いて抱いて」してそりゃーもう後は猿以下。
でも俺は大人だからね、過去は過去でしかないと知ってんだわ。見識が、広くなったんで!俺はスナッフフィルムじゃねぇんだよっ!」
「……そんなつもりじゃ…」
「はっ、わかっててこれ?お前は俺の親と変わらねーな、無理なんだよねそういう無機質で無意味な等価交換。
好きか愛か?笑わせんなんな事言って仕事せずババアの金で貧乏ぐらしセックスセックスってナメてんじゃねぇよこっちとら薬剤の勉強中だわって」
「矛先変わってる…アンジ怖いよそれ…」
「あっ、すんませんねっ。
愛情は同情じゃねぇんだ、わかりましたかユリシスくん!」
こっちも寝てねぇから気が立って昔のこと掘り起こしちまったじゃねーか!
ふぅ。
「…タバコいっすか」
「……ダメだけどはいはいはい。
んへ?」
「咥えんの早っ」
タバコを吸いながら「…別に怒ってないけどさ」と頑張って言ってみたが「いひゃほれは無理はほほもふよ」タバコ咥えながら喋んなクソ医者!
「怒ってないけど釈然としない。
見下ろしてんじゃねーよ自分をって…でも俺も同じだから、余計腹立っただけ。
ユリシス、お前それで言いたいことは?反論あると思うけど?」
「………いや、なんか」
「何」
「あんた、やっぱマザーテレサだなって」
「はぁ!?だーかーらー、」
「わかったごめんごめん。
…透花も、私も…愛してくれてありがとう。イタズラしてごめん」
「…ん、」
「でも親の件凄く関係なくて半分寝そうになった」
「だろうな!俺も眠ぃし何言ってっか途中からわかってねーよ!
とにかく透花にもイタズラすんな。出来るだけ頑張ってみるけどこれもお相手方、透花が辛いこと隠してそうならチクリに来い。俺も24時間体制じゃねぇ、これでも公務員だからねっ!」
「…うん」
「で、今日は楽しかったんか、お前は」
「…え?」
「プラネタリウム!って…。
先生、そういう時ってこっちにも記憶に残るんですか?」
「ん〜、実感は湧かないと思うから感想は聞けないかも」
「…わかりました。
ユリシスは好き?星」
「…それは何?」
「宇宙」
「火星とか?」
「そーそー」
「私自身が、だよね…ごめん、よく知らない…船にも部屋にもなかったから」
「じゃ、好きなもん見つけろ。透花フィルターからよく見とけ。お前、哲学好きっしょ」
「いやそれは嫌ーい」
「あっそうなんだ…まぁ、なんか見つけたら教えて。…家主が訳わかんなくならないようにな、二人で話しつけろ、互いに自覚したなら」
「…出来たらいいなとは思ってるけど…会えないから…」
「マジで片思い中の女子高生みたいだな。じゃ、交換日記は?」
「アンジ名案」
「ユリシス、お前よかったな、たまたま部屋一個あって机もあるから。ノート買ってやるよ。
あ、消える消える詐欺しないように覗くかんなたまに」
これなら、本当に消えてしまったときにわかりやすい。
「…わかった」
「でも人には寿命があるんだ。君の方が俺より見てきたんだと思う」
「…確かに」
「覚えてるんだな?」
「……うん、消えないよそれは…」
「…それと同じだよ、わかった?」
「それって、」
「そうだよ」
しばし考え「…そっか」と言った。
「わかったら寝ろ!ノンレムれ!」
「わかった」
「最後にひとつ。俺は可哀想という自己満が嫌いだ。次に言ったら先生にお前を封印してもらう」
「…わかったって。
ありがと、おやすみ」
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