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静かになったところでオリバーがガンっと脛を蹴り…痛い…「どうしてくれるんだオマエ」とキレている。
「…っすねー…どーします?」
眠さマックスだろう不機嫌さで腕を組みながら「あ?」と言うオリバーの迫力に負けそう。
「左か右の腎臓と左か右の肺と右脳か左脳どれがいい?腸20センチも選択肢に入れてやる」
…闇医者ムーブ来た…。
外国人特有の綺麗めな顔立ちが、若干恐怖だ…。
「じゃあ…左の腎臓を透花に」
「バカかオマエ。透花はAマイナス、オマエは凡Oプラス。キンタマでいいか?」
「まぁ…」
「バカか全く…。呆れたなんもいらんっ!」
「すみません、ホントに…」
「は〜ぁああっ。これじゃあのクソガキが現れるときどーすんねん」
いやこちとら医者じゃないから聞かれてもわからんねん…、これまた微妙な日本語を使うのもクレイジーさ加速なんだよ…と、「い、いっそメジャー…」と言えば「はぁ?」と凄まれる。
「メジャーだと?オマエら島国の猿共みーんな薬薄めやがるから増えて長期戦なんだよコーローショーそれでいいんか?ん?お上にチクるぞ?」
「…現状日本って大体それっすよね…」
「一生薬漬けでいいんか?リボトも考えたけど腎臓片方ないからどないすんねん」
「…最早一旦ワイパ常備で後はこう…対話がいいような気もしてきた…」
ふむ、と一度溜飲を下げ「冴えたな?」と目が合う。
「そうだ薬に頼らず出来たな?」
「でも痙攣はキツいか……」
「ちょっと待ってろ処方箋出す。一生モンになるかもしんないかんな、オマエ」
でも…。
「…第3種で済んじゃった?」
「黙れ殺すぞ」
「……狙ってたでしょ」
ぼそっと言えば「はぁ!?」とまた凄まれた。
流石だよファミリードクター。きっとオリバーは試したのだ。全てを。
「夜中だから今日分は院内処方な」と薬を渡される。
1日1回、夜。1.0mg。
「3日分くらいは院外に仕事振る」
多分波瀬だ…。何気に取り入ったな、このイカレ闇医者に…。
「…そうだ。仮眠時間は決めるといい、と言うのは伝えました。アラームも設定してましたよ」
まぁ、なんでもかんでもアラームになったが…。
「…ん、そう……あーダメだ寝てけオマエら…私の眠気がキた私はいつも昼勤時は22時に寝ると決めてる」
平良が言っていた事を思い出す。確かにこの人は一見クレイジーだが、その実適切で慎重で…丁寧で。人間味を感じるような研究者兼…医者だ。
「…2時過ぎましたね、すみません。
はい、一晩入院します。登庁…9時なんですがいや8:30なんですがその前には帰ります電話もしなきゃだし…」
「あー寝ろ!うるさい!私はいつもの……えー確かゴゴシン入ってたけど12号室にいると伝えるフジサワに…起きたら帰れ」
「わかりました」
「はい、出るよココ治療用!」
そうだった。
普通に何本かタバコを吸ってしまっていたと気が付いたのは、助手が頑張って消臭しているのを見てだった。
いつもの…12号室を覗けば、藤沢がデータを眺めている。
「あ、先生!」
オリバーは研究室に入りつつ「データサンキューカルテまとめる。途中で多分寝るコイツらはどっか空きで寝かせとけ」と矢継ぎ早、多分本当に眠さのピークなんだろう。
「ちょっと見て来ますね」と藤沢が透花のストレッチャーを見、病室のエリアへ向かう背を眺めちょろっと、所長と平良にメールを送っておいた。
8:30には電話もしないとな…。
思い出し、透花のスマホのアラームを解除しようかと思ったが、そもそも持ってきていないことに気付いた。
眠りを覚えていないと言うし、一応…と、いつも掛けている時間に設定する。
藤沢がすぐに戻り、「では…」と透花を見たので「ありがとうございます」と毛布にくるんだ透花をおぶり、藤沢に着いて行く。
透花は完璧にノンレムっている、全く起きないが、そういえば団地でのジャンキー襲来事件…透花を一時避難場所から旧宅へ送迎した際、おぶろうが抱えようがぐっすり眠っていた。
…そうだ、当時透花が通っていたのであろうメンクリで安定剤を処方されていたな…不安で眠れなくて飲んだから、と…。
「藤沢さん」
「はい?」
「ふと思い出したのですが透花は…以前メンタルクリニックで薬を処方され…このように、超ノンレムっていたことがありました」
「…あら、それって」
「その時なんだったか……忘れてしまいましたが、長期処方に注意喚起が出ている物でした。どれくらいの頻度でどれほどかというのがちょっと…その頃はこういう関係ではなかったのでわからないのですが…。
あ、そうだ。当時のお薬手帳…もしかしたら家にあるかも…」
「使用したことのあるお薬データはあると助かりますよね、同じもので一度効いていたなら傾向もわかりますし。
後でお電話とかでも大丈夫だと思いますよ。先生は今の状態で診断と処方をしていますし。
転院の際のカルテもありますから、こちらでももう一度見てみますね」
「はい、ありがとうございます」
どうぞ、と、空いていた個室に案内してくれた。
「海江田さんのベッド…」
「あ、大丈夫ですよ。俺側で寝ます。明日は休んで土日…と決めましたし、どこでも眠れますから…」
ふと藤沢に腕を見せ、「これで気付いたんです、発作」と言っておいた。
「…なるほど…」
「手を握っていればこの後何かあってもすぐ、気付けるから…」
「わかりました。
あ、明日起きたら誰かにお声掛けください、帰りのタクシーを手配しますので」
「うわぁ、ありがとうございます」
「では、おやすみなさい」
ふぅ、と息を吐いた瞬間完全に眠気が来る。
透花の手を握り、側で突っ伏しすぐに寝た。
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