無色透明色彩


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 食べたい物を聞き…うーん、こういう話は自宅の方がよかったような…しかし送ってしまったからには仕方がない。
 フラットでいて静かな店がいいな…と考えていたら「ラーメン屋さんがいいです」と返信が来る…ラーメン、覚えたんだろうなと少し暖かい心境。

 フラットで丁度良い。
 透花には帰宅時間を送っておいた。

 家族の親睦を深めましょう定例会なんて死ぬほど行きたくない。
 けれど、どうせ形式張って出来る状況ではないだろうし誰も来ないからこんなにギリギリな“報告”なんだろう。

 …いや、祖母なら微妙か、資産はあったし。尚更後で行こう。

 あとは……。
 透花の高卒認定やら資格やら、兎に角何かがあった方がいいのかもしれない。勿論まだ、言って反応を確かめよう、くらいだが…。

 未来がどういう形であれ、社会には一回出た方がいいだろうと、ぼんやり考えていた最中にあの、波瀬の店で知った、まさか透花自身があのライブ配信を知らなかったなんて。

 こんな機会だからより思考が絡まって行く…母は中学卒業後に田舎から離れ、取り敢えずは大卒であった父をふと捕まえてすぐに自分を産み専業主婦をしていた。

 どうも、不意に訃報を知って心は纏まっていないらしい。どうとも思ってなかった癖に今更…自分は動揺なんてものをしているのだろうか。

「ただいま…」
「おかえりなさい」

 テレビを見ていた透花がふいっとこちらを見、少し間を置き「お疲れ様です」と言ってくれてわかる、肩の力がまだ少し抜けていない。

 既に着替えていた透花にそうか、冠婚葬祭等の服装とか、持ってないかと気付いた。

「あ、行こっか、どんな感じの店がいい?」
「波瀬さんと行った時、系統の種類?わりとありそうでしたよね…僕、少し調べた…テレビで見たんですけど…」

 透花がスマホを見せてきた。
 なるほど、少しオシャレ系だ。サラダが乗ってる…。

「こういう系か、丁度いいね。これはどこに……あ、近場で探したんだね」
「はい」
「あ、そうそう。坂下先輩が喜んでたよ、揚げ出し豆腐」
「あ、よかった〜」
「俺も今度作って。
 さて、行くかラーメン。ここは個人なの…かな?」
「多分…。
 テレビのやつは行列だったので似たようなので探したんです…」

 ナビを見るが「うーん…」となっているうちに「あれです、よく通る…ショッピングセンター沿いに」と言われ考える…。

「あったっけ…まぁ、走ればわかるか…」

 店の外観を画像検索してみた。
 「あー、わかった、意外と小さいとこだ、通り沿いの」と思い当たる。あれ、どうやって入るんだろ…。

 まぁいいかと透花にはい、と手を貸し気付いた、あ、多分これ癖だな、と。
 透花も当たり前のように手を取り「楽しみ」と笑うのに少し…安心する。

 ガス抜き、か…。

「そうだ帰り…ちょっと寄りたいところがある」
「はい」
「あー、あとそうだった…」

 車を走らせコンビニに寄る。
 「飲み物選んできなー」と言いつつ安慈はATMで1万円を降ろし、香典袋を探した。

「あ、これ」
「そうそう…あれ…じいちゃんのやつ、俺何で入れてたっけ…こっちだった?」

 透花に聞いてみて「いや、こちらでした」と“御霊前”の袋を指される。

「俺じいちゃんの時調べたんだよな…意外とマナー多いらしい」
「そうなんだ…」
「お気持ちってやつだけどね、非課税だし」

 御霊前の袋をカゴに入れ、飲み物とタバコを買い車内に戻る。

「…誰か、亡くなっちゃったんですか?」
「そうそう、それ話そうと思っててさ。ウチのババ…祖母が他界していたらしくて…職場に三回忌のハガキが送り付けられてきたんだわ…」
「あっ、良いご両親の」

 そこ記憶あるのかー。
 つい「いや全く良くない両親の親」とつい返してしまった。

「あっ、そうなんですね」
「んー…、全くなんなんだよってモヤモヤしてたんだよね。相変わらず常識ねーなと思ったんだけど…。
 透花さ、後で行く?」
「ん?」
「…まぁ、俺は透花のジイちゃんにも会ったし…てだけなんだけど…見識は広がると…思う、多分……あ、俺ん家ね!てゆうか実家…?」
「ジッカに………?」

 何かを考える間を持ったが「あ、えっと、ひとりはきっと、寂しいですよね…」と気を遣わせたようだが、これは間違えたな。

「いやー…えっとなんて言うか…。
 超ノンデリ発言かもしれんけど、俺じいちゃん時さ…なんか学んだなって思ってさ…。
 あ、注意喚起すると俺の親父は結構ダメなやつだから、正直行きたくはない、くらいの人。マジでもう…大学卒業以来の連絡だったわ」
「…なんか聞いたような…」
「どこまで誰に話したか…なんだけど、当の祖母は厳格を隠れ蓑に母親いびって」
「……実はよく意味がわかってなかったんですが“いびる”って…イジメみたいなことですかね…?」
「あっ、うんそう。
 俺の母親、若ママでさ…21の時の息子なんだわ」
「えっ、そうなんですね…。紀子さんは確か20の時にってことになってます、逆算すると」
「そっちのが若っ…あ、でもそっか…。
 ウチはこの時代に見合い婚だったらしい、祖父とかが、なんというか長男教みたいな感じで…親父もなんつーか、抑制されまくったり窮屈だったんだろうなとは思うけど…そんなこんなでバツ3。年の差12的な」
「…へ、へぇ…」
「わかんねーよねぇ…俺もわっかんねぇし。日本は昔、なんつーかそういう時代があったんだわ、俺ら世代じゃ馴染みないし叩かれそうだけどね」

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