無色透明色彩


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 「と、脱線したけど概要は終わりまして…」と言ったところでラーメン屋が見える。
 車前提じゃないよなと、コインパーキングを探し、停車する。

「僕…その、よくわからないかも…色々…」
「あー…まぁね。俺も正直わからんというか…多分これをきっかけになんかあったらとか…迷ってはいるんだよね、自分が行くのも。
 別に会場が書いてあったりするわけじゃないし、親戚呼んで…とかじゃないと思う。もし大掛かりだとしても1週間ズラそうかなと、ダルいし」
「……なる…ほど?」
「まあ言うなら、俺自身でも行っても行かなくてもどっちでもいいし気分で決めようかな感はある…って。
 気付いたわ、これ、透花に答え投げてるよな、ごめん…」
「いえ、いいですよ」

 ハッと見ればニコッと…あ、控えめじゃなくて満面のやつだ…と思えば「ウチにもいてくれてる…し?」と言うのだから…ポケっとしてしまったが。

「っはは、ありがとう。なんか一瞬にしてスッキリしたわ」
「アンジさんが言ったんですよ?」
「そうだわ、確かに」

 ラーメン屋に入り…メニューを見て察した。これは多分…ラーメンではなくフォーだろう…と。

 所謂“映え”というやつだろうか、紫玉ねぎやら水菜やら…極めつけは花。これは食うべきやつなのか…と迷う。

「……迷いますねこれ…」
「…おすすめ、のやつを頼むのが多分1番いい…と思う、こういう場合」
「…お店のアカウントあるんだ…」
「完璧“映え”だねこれ…」

 言い出しっぺだしと、アンジはおすすめの…花入りのオシャレなやつを頼む。
 透花は「当店1番人気!」を頼んだらしい…大丈夫だろうか器かよってくらいにローストビーフが乗ってる…白いやつだ。

 やはり来てみれば声にはしないが驚いたらしい…意外と器は小さいようだがそれは最早麺率よりローストビーフ率の方が高いのではないか?

「…いただきます」
「いただきます。透花、無理しないでね…あ、ローストビーフ1枚くれる?」
「あはい…」
「なんとなくこっちは花以外完食出来そうだから食えなくなったらSOS出してね。君外食行くとわりと無理するから、波瀬くんの時もスープキツそうだったし」
「…わかっちゃいました!?」
「うん。スープ残さない派なんだ…と思いつつあれ?と…」
「残さない派…でした、ということで…。
 いやなんか申し訳なくなっちゃって…」
「あっ、なら今超思い出した豆知識…中華料理は残す…いや、汚す?のが「美味しく食べました」ってマナーらし」
「ラーメンって、日本の料理では…?」
「あ、うん確かにそうだな」

 言いながらスープ一口では「美味い」ではあった、互いに。
 結果ローストビーフは3枚貰い、あっさりめだった安慈のスープを数口あげた。

 「飯は美味く食おうな」と助言もしたので無理はしなかったようだった。

 新感覚“映え”ラーメン。見た目で圧倒されたくらいで普通に美味かった。なるほど確かに、ギャップというかなんというか。
 “映え”という言葉が少し浸透した頃、問題になった…食わずに捨てる。それはせず、写真も撮らずマナー通りに食べた。

 しかしたまに見る「あ、うん。これは明らかに食べさせる方じゃないわ」映えを提供された場合のマナーってどういう認識なんだろうか…という話をぼちぼちした最中…。

「寄りたい場所通り過ぎた…透花の礼服買おうとしてたんだ」

 くるっと引き返す。

「へ?」
「スーツ。リクルート用も一応。チャチャッと買っちゃお」
「あっ、そっか…」
「人生他でも冠婚葬祭はあるからねぇ…でもまぁリクルートでいいか、まずは」
「……礼装、ですもんね…そっか、考えて来なかった今まで…」
「いいきっかけ…かな。多分透花の方が似合うよスーツ」

 元々英国文化だし。

 チャチャッとリクルートを買い、「高いスーツとかはきっと、これをバネにというか、自分で選んで買った方がいいと思う」と言っておいた。

「身に付けるものは、基本的にね。その方がなんか、達成感あるし」

 …透花を見てきて思う、この子は自分の欲しいものはおろか生活、基本的な尊厳の為に働いてきたわけではない。

「ロレックスだってそうだったわけだし。今の時計は二人で選べた。次は何か…自分で欲しいものやしたいことの為にお金を貯めると、少し人生が豊かになる気がする。車の免許に似てるかも。
 仕事も、よくさ、仕事するために生きてんのか生きるために仕事してんのかって意味をさ、履き違えたりする人がいるけど。全部、自分のことなんだからって俺は思っててさ」
「……仕事のためにか生きるために、か…」
「自分のためにしたことが返ってくるに決まってるじゃんな?圧倒的に愚痴の方が多く聞くけど。そりゃ、好きなことにだって不満は出るけど、それも含めてな気がしてる」
「……アンジさんの為のことって、例えばなんなんですかね?」
「なんだろ…。それ最近考えるんだけどさ、今はただ、人生初挑戦の、誰かと共に歩んでいる生活が新鮮で楽しくて…歳の割に人を見ていなかったんだなって気付いた…答えになってないけれど…」
「…いいなぁ。
 僕自身はまだ…わりともどかしさを感じていて、最近。色々な人と出会って…どうやったら何が伝わるのかな…とか。
 元母となんて打算的だった気がしてます、今は。でも…多分この先もきっと…本当に伝わる人ではない気もしてて」

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