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「…偉いなぁ…」
その悟りは恐らく間違っていないだろうが、透花はそれでも、きちんと考えて前に進んでいるのだから。
「やっぱ、行くかー…来週。
ドライブがてら…見ていい気分はしないかもしれないけど、いいかな?」
「はい。是非」
…やっぱり、偉いなぁ。
恐らく自分の父親も透花の元母と同じで、わかり合える日は来ない。
しかし少し遠出にはなるな、と診察の際にオリバーに聞いてみたら「サイタマって隣だろ?」と言われた。
「電車で1時間くらいで往復なら…泊まりじゃないよね?だったら救急車出ない」
「あ…車って思ってたけど確かに……週末、超混むんですよね道路インフラ凄くて。
電車か……確かにそっちの方が早い…どうする?透花」
「えっ。何…を?」
「どの道酔い止めは貰っておくとしても…電車は人酔い、車は倍近く掛かる、時間。
まぁすぐ帰るんだけども…マップ見たら駅近物件ではないから、電車で行ったあとはタクシーかレンタカーなんだよね」
「…どちらも疲れ度合いは一緒ですね?きっと」
「まぁそう、間違いない」
「電車…この前乗ったんで慣れてみないとかな〜とは、思いました、東京ですし…」
「確かに。
そうだなぁ、あそこまで行くとなると…まぁどこかでは座れるはず…。出入りは激しいかな、途中とか」
「前の日ガッツリノンレムって体力とか貧血とかに気をつけるもん食ったらいいんでない?」
「そうですね。
ちょっとドライブ程度だけど、具合はきっちり」
「はい、ちゃんと言うようにします」
「オマエらシンミツになったね、なんか」
感心したように言ったかと思えば「ナカヨシしたん?」と聞いてきて、一瞬わからなかったが「毎日仲良しですよ?」と透花が答えたのに「若い、ダメ、毎日は。トウカはノンレムらないとならない」と言われ理解し「いやいや違う違う」と否定した。
「……え?仲良く…な…」
「あーそれも違う!仲は良い!先生変な日本語使わんでくださいってか、一瞬わかんなかったわ、誰から教わるんだその表現!」
「これはサトイが言ってた」
「……なるほど、言いそう…」
「アラタとのナカヨシの頻度がそんなに高くないってグチを」
「あーあー患者のそういうのを暴露しないの!」
「…ナカヨシって意味違う?」と聞くトウカに「うん、この人の日本語たまにおかしいから」と答え「コラ!違くないだろ!」と怒られる。
取り敢えず酔い止めを二回分くらい貰ったが、まぁここに来るとドッと疲れるし変わらないか…と、毎度デトックス効果もあるのが不思議なところだ。
「ナカヨシ……」
「ストレートに言うよりマシだけど変態さ漂うから不思議よな、日本語マジックだわ…」
ケータイで検索し始めたので咎めたくはなったが我慢…と思えば「んー…ん?ん!?」と様子を変えている。行き着くのか、それ…と若干興味もありつつ。
「あっ……」
気まずそうにこちらを見上げる透花にあぁホントなんなんだよあの医者…と思いつつ、平常心で「今日は何がいい?」と自販機の前で興味を逸らす。
「イチゴオレ…」
…これまた微妙に初な反応だな…。
ボタンを押してやったが「ナカヨシ……」と頭から離れなくなったらしい。
「いやそれ、若干痛い表現って認識だと思う、今」
「日本語って難しい…」
「それな…ちなみにネットスラングだから…未だにたまに見かけるけど、なんか逆にキモい表現な気がしてる…わからなくはないけども…この話シンプルにやめない?」
「あ、はいすみません!」
「いやいやいいのよ…」あの医者のせいだからねとイチゴオレを渡す。
「ありがとうございます…」と受け取りチビチビと飲んでいる。
車に乗りふっと空を見た透花は「僕のお父さんとお母さんってどんななんだろ…」とポツンと言った。
…やっぱり、気にはなるのか…。
自分でも、禄ではないとわかってはいるだろうに。
「…難しいね。
俺みたいにわかっていれば幸せかと言えばそうじゃないし、でも知らないときっと…どこかで引っ掛かるんだろうな」
「あまり言ってこなかったんですけどね。言っちゃダメだって、お父さん…えっと、忠恭さんに言われていたし」
「……そうだったの?」
「ええ。
まぁ、施設の方針…?いや、雰囲気かな…それもあって」
「…そっか」
自分の父と会ってしまったら、その心境はどう転ぶのだろう。
「あ、今回はマジにドライブ感覚でフラッと行こうと思ってるから1個注意点。父親、精神病あるし…」
ナカヨシ中毒…?言えないな…。
「それも引っ括めて無理ない感じでフラットに…人生こんなんかーくらいで捉えてくれたら良い…かも。何を考えるかは各々として。俺もわからないからさ…父親のこと、よく。そんで、良くも悪くもこれが最後、もう会わないと決めてる」
「…わかりました」
今、透花は紀子や…忠恭、唯三郎をどう思っているのだろうか。
「…身体もそうだけど、精神的にもね。キツかったらすぐに伝えて欲しい」
「はい」
自分は今、何をどう考えているのだろうか。透花に投げた言葉や思いを自分になぞらえる。
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