サイケデリック・アワー R18
日吉は押しに弱い、そして流されやすい。そう思っていた。そこを利用しようと思ったがなかなかうまい方向に傾かない。
財前は勘違いしていたようだ。快楽に弱いのは確かだが、流されやすいわけではなく鳳に知られたくなくて我慢していた。押し切られたなんてのは財前の勝手な憶測で、日吉もそれなりに想いがあるからこそつき合っているのだろう。
「……はぁ」
好きなアーティストの曲を聴いているのに全然頭に入ってこない。ため息まで出る始末。
感情がめまぐるしく動く。
必死になっている今の自分に、財前は苛ついてしまう。
ださい、かっこ悪い、みっともない。こんなのは俺じゃない——
改めて考えると日吉なんかのどこが好きなのかよくわからないし、面倒くさいことに関わらず今までどおりが気楽でいい。
そう思うならさっさと決別すればいいのだが、躊躇ってしまう。
これまでが無駄な時間だったと思わない、合宿中のささやかな楽しみだった。
堂々巡りでたどり着く答えは『終わりにしたくない』
悪態をついたところで離れられないのは自分の方なのだと思い知った。
部屋に二人きりになると、日吉が声をかけてきた。
「この間は悪かった。焦ってたとはいえ、腕でも痛めたら大変だ。大丈夫だったか?」
気にしてほしいのはそこじゃない。
と、思いながら財前は身体を起こす。今朝はギリギリまで寝ていたからベッドの上は着替えが散らかっている。片付けるのも億劫で放置しているが、日吉は気にした様子もなく当たり前のように腰かける。
「あれくらいどうもないわ。なんなら胸のが激痛やった、抉られたで」
日吉は何も悪くない。仮にどこか痛めたとしても、あの時無理やり押さえつけた財前の自業自得だ。それくらいの自覚はある。
生真面目に謝ってつけ込む隙を与えるとも知らず、日吉らしい心配の仕方だと思った。
「痛めたのか?」
「…いや、心って言うべきやったな」
日吉が本気で心配しているのはわかるから、ボケ体質とは言わないでおいた。
「心…?」
「そらそうやろ。あいつの声聞いた途端、邪険にされたら」
「ああ…そういうことか。邪険にしたつもりはないが、ドアを開けられたらまずいと思って焦ってたんだ、鳳だけじゃなく宍戸さんがいたからな」
「ふーん…。なら、許したってもええか。俺もこれからは遠慮なくいかせてもらうし」
「偉そうに言うな。というか、これからは…って今までとどう違うんだ?遠慮してたようには全然見えないんだが」
「ん?俺の気持ちの問題や。モヤモヤ吹っ切れたっちゅーか、ハラ決めたっちゅーか」
言い終わらないうちに日吉の身体を押し倒す。
すると小さな声が呟いた。
「吹っ切るなら俺をだろ。どうでもよくなれよ、いつもすぐ面倒くさいって言うだろ」
「悪いけど、お前だけは他とちゃうねん」
「……」
「…ま、今のところは」
日吉に無言で見つめられると、ツッコまれる方がましだと気恥ずかしくなって付け足した。
わざと音を立てて舐めると、日吉は案の定嫌がって身を捩る。
「お前わりと変態くさいんだな」
「こんなん変態ちゃうわ」
だが減らず口を叩いて感覚をやり過ごそうとしているのがわかって
「我慢せんでええよ?」
と、追い打ちをかけるように乳首に舌を這わせた。
「我慢なんか、するか…」
明らかに我慢している声で言われると、我慢しなくていい環境ではないからこそ悪戯したくなる。
もう片方を指先で弄ぶ。
ふるふると身体が震えるのを見ながら、肌の上に口づけの跡を残した。
「キスマーク、あいつならすぐわかるやろ」
「…、くだらないことするな…」
他人が見ても痣だと思うだろうが、独占欲の強い彼は怪しむはずだ。
心の痛みを仕返しするならこういう方がいい。特に、日吉が嫌がりそうなことが。
「なぁ。この前みたく、挿入れてもええ?」
「…俺に拒否権はあるのか?」
「ないな」
「なら聞くなよ」
「確認や。俺を受け入れる気があるか」
日吉のジャージに手をかけると、下着ごとずり下げた。抱え上げた足から抜き取ったジャージをベッドに投げる。
勃ちかけているモノのぬめりを借りて後ろの孔を撫でる。傷をつけないようゆっくりと解し、指先を沈めた。
「…っ、」
「きつくない?」
「ああ…」
日吉の両脚を抱え上げ、膝裏を持たせた。財前は自分のモノをそこに押し当て、
「ちゃんと見ててや、自分が誰に何されてるか」
日吉に手を重ねてさらに深く開かせた。先端をゆっくりと飲み込ませていく。見せつけるように抜き差しを繰り返すと、だんだんと日吉自身が硬くなって反応を示す。
「この間も思ったんやけど、案外すんなり入るもんなんやな。それとも日吉が特別?」
軽口を叩いてみるが、どうやら日吉はそれどころではないらしい。
「んん…っ」
「…気持ちいい?」
「いい…、っ…あ、ぁ…」
「えらい素直やん。本心やと思ってまうで」
財前としては言わせたかったわけだが、あまりにも素直に口にされ、言葉どおりの表情を見せられてたまらない興奮が込み上げる。
しかし日吉が自分の手で自身を握ろうとしたので、即座にその手を掴んだ。硬くなっているモノに触れればすぐにでも解放できるだろうが、あえてそれを許さなかった。
「放せ…っ」
「だめ。俺のだけでイくとこ見して」
言いながら腰を押し付ける。
「やめろ…、ぁ…あっ」
勝手が掴めず反応を見ながら押し進めるしかないのだが、苦しそうな素振りもなく甘い吐息を漏らす姿に財前自身も昂っていく。
深く突いてはゆっくり戻すを繰り返すと、そこは鼓動するようにひくつき、内壁が吸い付くようにまとわりついて財前を誘い込む。背筋を駆け上がるような快感を堪えるのに苦労した。
「ちょ…やば…」
「あ…ぁ、んぁっ…!」
白濁が飛び散る。
なんとか日吉を先にイかせたが、限界だった財前もすぐに続いた。
財前は倒れ込むように覆いかぶさり、お互いに荒い息のまま舌を絡ませる。
どことなくいつもと違う、放心したような様子の日吉が気になった。
「…もしかして後ろだけでイッたの初めてなん?」
返事はなかった。まぁ、あの彼ならとことん甘く優しくするだろうと察しはつく。おあずけのような意地悪はきっとしない。
「憶えとって…俺の感触。あいつとはなんもかんもちゃうやろ?」
自分の存在を日吉の中に残したかった。
「……憶えたくない、お前なんか…っ」
「俺の方がいいって言うまでやめへんよ」
携帯の時計が限られた時間の終わりを告げる。全然足りないと思いながら日吉を抱きしめた。
「…時間も人目も気にせんと居れたらええのに」
──だが。
「そんなことより早く窓を開けろ」
このあとの片付けを思うと甘美な気分は吹き飛び、一気に憂鬱になった。
2025.05.24
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