君が僕に溶けるまで

君が僕に溶けるまで








もうすぐ合宿が終わる。
部屋で二人きりの時間は今日が最後になるだろう。
そう考えると少し寂しい気がした。

「…そろそろ合宿も終わりやな」

財前のベッドに腰かける日吉も馴染んだ光景となっている。
梯子から足を外してぶらぶらさせるのは、たまに見せる仕種だった。

「あっという間だった。…限界を超えて鍛えぬくつもりだったのに、お前らが面倒事を持ち込むから集中できなかったじゃないか」

「なんで人のせいやねん。日吉の集中力が足りんのやろ」

「隙あらばくっつきたがる奴とそれをネタに脅す奴がいて、どう集中しろと?」

「ようするに隙を作る日吉が悪いっちゅーことや」

「勝手なことばかり言いやがって…まったく」

「…ほら、たとえばこうやって」

財前は言いながら日吉にキスをした。

「ふん。隙があってもなくてもやるんだろ」

「せやな」

さらに引き寄せて深く口づけ、押し倒した。
空調の効いた建物は外の暑さを忘れさせる。午前中の練習で大量の汗をかきシャワーを浴びたので、乾いた身体が冷えるくらいだ。
日吉の肌に指を滑らせると、同じようにやや冷たい。

「…なぁ、合宿が終わったら解放される思うてる?」

「思ってる。まさか新幹線で東京に来る気はないだろ」

「さすがにないわ。せやけど、うまいことやれる方法考え中や」

「やめておけ、時間の無駄だ」

「無駄かどうかは俺の感覚やろ」

今のところ、ただ弱味を握っているというだけ。しかしだからこそここで終わらせる気はない。
先輩たちがいつも騒いでいる感情と同じかどうかはわからないが、久しぶりに心を動かされ、はまれるものを見つけたような気持ちだった。

日吉のTシャツを捲り上げると、以前つけた跡はすでに消えていた。

「あいつにバレへんかった?」

「まぁ、見られてないからな」

「え」

「一緒に風呂にいくタイミングもほとんどなかったし、あったとしても何かやらかしそうだからあえて避けてた」

「…それ以外は?」

「それ以外ってなんだよ。まさか合宿所の中でやってるとでも思ってたのか?ありえないだろ」

「思うやろ、だって俺としてるやん」

さすがにトイレや浴場に監視カメラはないだろうから、できないこともないとは思う。

「財前はたまたま同じ部屋で、空き時間が重なって、青学と立海がコート使う時間で……」

日吉は何か思いついたように黙り込む。

「…急にどないしたん?」

「いや、なんでもない」

「気になるやん」

追及するほどでもないが、悪戯半分に言って胸に口づけを落とす。早くも主張し始める胸の尖りを摘まむと、日吉が息を飲む気配がした。

「ほんまここ弱いな。てかなんか、弄られすぎて色素が濃くなってへん?」

「そんなわけないだろ…っ、」

舌先で転がすと堪えようとする身体が震えた。
軽く歯を立てれば声が甘くなることは知っている。
あいつがどれだけ日吉の身体を解っているか知らないが、この短期間で引けを取らないくらい理解した自信はある。などと、くだらないことで張り合う自分に苦笑が浮かんだ。

「…ぁ、噛む、な…」

「ん?なんて?」

「だから噛むな…って、やめ…ぁあっ」

無視して繰り返し噛んだ。ふと気づくと、日吉の腕が財前の背中を抱いていた。
前からこうだったか?
はっきり覚えていない。
触れる感触はまるで愛撫のようで、与えるつもりが与えられていることを実感する。

「ちょ…そういうのナシやわ」

今更手遅れとはいえ、忘れられなくなるのは財前の方だ。

硬くなったものが当たる。以前なら早すぎるとからかったが、もう日吉のことだけを言えなくなってしまった。
日吉のズボンと下着をずり下げて露出させると、続けて自分も張り詰めたものを露わにした。

「なぁ。前みたく擦り合わせて」

互いのものを添わせて腹と腹の間に挟む。日吉はすでにあふれ出した粘液で濡れていて、腰を動かすたびにぬめる音を立てた。
弾かれそうな勢いで勃ち上がるものを押さえつけるように日吉の腰を抱いた。

「んん…っ、あ…ぁ」

すると日吉は快楽を追うように腰をくねらせ、自身を擦り上げられた財前は抑えきれなくなる。

「えっろ…めっちゃ興奮すんねんけど…っ、」

茶化したのは、そうでもしないと財前も吐息が漏れてしまいそうで、さらには達してしまいそうだったからだ。
自分でやらせておいて先に落ちたくない。ある種の見栄を張りつつ、まずいとばかりに日吉の後ろに指を忍ばせると、秘部は財前を待ち侘びているかのように解れて指を飲み込む。

「だめ…、ぁっ、あ…っ」

間もなく日吉は達したが、それは財前も同じだった。
二人分の白濁で汚れた肌はさらなる熱を灯すのに十分だった。
脱力で無抵抗な日吉の身体を仰向けにして、財前は自身を挿入した。

「う、ぁ…、まっ…待て、まだ…」

呼吸も整わないうちに新たな快感を押し付けられて、日吉はやや苦しそうだった。

「今お前を抱いてるのは俺や。甘やかすだけのあいつとはちゃう──忘れんでや」

「何…あっ、あぁっ…ん…」

日吉の弱いところを確かめながら腰を動かすと、びくびくとわかりやすい反応が返ってくる。

「…ここ、好き?」

「ッく――」

半ば強引に射精させられた日吉は、財前が中に納まったままでいる意味を感じ取ったのだろう。荒い息を吐きながら見上げてくる。睨んでいるつもりが、できていない潤んだ瞳に、ぞくりと身体が疼く。気を散らすのに精一杯だった。

「いいかげんに…っ」

再び動き出した財前によって声は搔き消された。休む間もなく立て続けに吐き出した日吉はぐったりしている。

「キスして」

唇を近づけると、アホ…と返ってきた。関西人にはバカじゃなくてアホだ、と言ったのをこんな時でも律儀に守っているのが愛おしかった。
結局は財前からキスをしてしまう。

「っ…、さっさとイケよ…」

「ん?」

「お前がイかなきゃ終わらないだろうが」

「そら自分は3回もイッて満足やろけど」

「ふざけんなっ、おまえがやったんだろっ」

死ぬほど我慢していることはどうやらバレていないようだ。
すぐに済ませたがる日吉を引き留めるため達しないよう堪えていたわけだが、さすがにもう無理だ。

(…にしても、どんどんエロなってく気すんねんけど…)

最初の頃より反応や仕種がいやらしくなったというか。どことなく色気を帯びた、表情のせいかもしれない。

「ぁっ…嫌だ、いきたくないのに…っ、」

再び日吉が達するのを見て、財前もとうとう日吉の腹の上に吐き出した。

「死ぬ──」

日吉は枕に突っ伏して顔を埋めた。

「ちょお、俺のベッドで死なれたら困るんやけど」

「うるさい。死因は財前だ」

「やば、最高やん」

「こっちは最低なんだよ、変態野郎」

「はいはい」

憎まれ口を叩くものの、ベッドに沈んだままの日吉の腕を引っ張って起こす。

「着替えんとあいつら帰ってくるで」

自分にも半分責任があるので強くも言えず、財前は身支度を手伝った。

「……今日で終わりなんだな」

日吉がぽつりとつぶやいた言葉が耳に残る。
名残を惜しむように聴こえたのは今の雰囲気のせいだろうか?




2025.09.01


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