16だいちさんしょう


ああ。母なる大地よ…!久しぶりだぁ…!

そう拳を握りしめ土の感触を靴底で感じた。







少し時間は遡り…。

朝にあったエースさんにお嫁入騒動からと言うもの、船内を歩けば
「よ!オシドリ夫婦!」だの「お、新婚さんが来なすった」だの
めっちゃひやかしを受けるのだが、どうしてくれようか、この状況。

そしてお前も、おーう!とか言ってないで否定しろよソバカス野郎!!と
隣を歩くエースさんをキッと睨みつけた。

だいたいコイツ年下じゃん!!私もう25なんだけど!年下とかありえないし!!と言えば
「今は言っても15・6だろい、幼な妻だねい」と言われた。
マルコさんおっさん臭い!!!!!やめて!!その響きなんか犯罪の臭いがするから!
あ、こいつら海賊の犯罪集団だったわ…。

そんなわけで周りからはからかわれ、エースさんはエースさんで
仲間だの家族だのしつこい。

もーーめんどくさいんだけどーーーー。
そう項垂れていれば白ひげさんにとどめの一言を頂いた。

「おうエース、孫の顔見る日も近ェかぁ?」
「バッ!オヤジ!なまえとはそんなんじゃ…!!いや、でも…」
なまえが欲しいってんなら俺は…。と少し照れながらエースさんはこめかみをポリポリと掻く

「そこは否定しろよ!!!!!!!!」
「イッテェエ!なまえてめぇ!!!!」
思いっきり弁慶の泣き所を水を纏った足で蹴りつけてやった。
ばかめ!ざまあみろ!

「ほら!ちゃっちゃか歩いてよ!」と悶絶しているエースさんに言えば
お前は鬼か!!!と近くにいたクルーの人にツッコミをいれられた。
この船、ツッコミスキルたかくない?

「お…!オメェ…!何様だよ!」
「迷子様だよ!!!」えばっていう事か!!!スパーーン!
いった!!なにすんの!!と叩かれた頭を押さえながらエースさんに訴えていれば
「お?早速夫婦喧嘩かァ?グラララ!仲良くやんな!」
そう言って白ひげさんは去っていった。

なんなの…もうやだこの人たち…。

「てか、おまえ、ほんと迷子の天才か?なんで船首の甲板行くのに
船尾の方に迷いなく歩くかねぇ」
はぁーっと溜息をつくエースさんについて歩く。

島が見えたぞー!!と見張り台にいる人の声を聴いて
え!どこどこー!私も見たーい!!と甲板に出ようと走り出した先で迷子になった。

駆け出した時に「おい!一人で行くなよい!」と制止するマルコさんの声が聞こえた気がしたが
シカトした。
そしたらまぁ見事に迷ったわけです、まる。

あれ?と思った時には追いかけて来てくれてたのか
エースさんに無事保護され、今は共に船首の甲板へと向かっているのでした、まる。

「いやぁーこればかりは、迷宮入りですね。」
「島に降りても一人で出歩けねぇぞオマエ。」
そういわれれば、そうじゃん!私、自由行動できないじゃん!
あ、いやでも島に着いたらトンズラこくんだった!そう意気込んでいれば
視界いっぱいに海が広がる甲板にたどり着いた。

「おー!後数十分もすれば着くかー」と目を細めながらまだまだうっすらと小さい島影を眺めるエースさん
つられて私も手摺に身をもたれかかければ
「気ぃつけろ、落ちても助けてやれねぇぞ」と首根っこ掴まれて後ろへと引き寄せられた。

「いや、私泳げるし。」
あ、そうだった。とうっかり八兵衛なエースさんに
「ふ、うらやましかろう。」とニヤリ言ってやれば
てめぇむかつくなーー!と頭をぐしゃぐしゃにされた。

「ちょ!やめ!ちょー!レディになんてことしやがる!!って、んん?」
なんだあれ、と視界に入った物を追うようにジッと海面を見ていると
なにか木の板の様な物が海面を漂っていた。

しかも何か乗ってるぞー?

「エースさん、ほら!アレ!なんだろ!」
「んんんー?何だアリャ?何か乗ってるみてぇだが、ちと遠くて良く見えねぇな…」

なんだぁ?と二人して眺めていれば
どうしたどうしたとクルーの人達が集まって来た。

「私、ちょっくらみてきますわ!」
そう言ってバッと躊躇なく上着を脱いだ私に周りの人達がぎょっとし、
「なまえ!おま!恥じらいをもて!!」と両手で顔を覆っているが、おい、指の隙間から目が丸見えだぞ。

ていうか、ヒーローなんてやってりゃ服なんてしょっちゅう破けるんだから、恥じらいも何もない!とうの昔に捨てたわ!わははは!
それに
ホークスさんの個性で背中から羽出したら服破けるし!と
上半身下着姿のまま、背中からバサァっと真っ白な羽を出し、目的の物に向かって羽ばたいた。

乳が隠されてるなら水着と変わらん!


バサバサと数回羽ばたかせて空を飛ぶ、
「うーん!空飛ぶのきもちー!」

だが、落下する浮遊感、お前はダメだ。
体の一部を変形させる個性は元気な時でないと
エネルギー消費が激しいから普段あまり使う事はない。
この船に落下した時も体力が底をつきかけていたから、お茶子ちゃんの無重力の個性で落下を防ぐしかなかったのだ。

羽が出せていれば羽ばたいて何処かへ飛んだ事だろう。

そうこう考えているうちに例の漂流物へとたどり着いた。
「んんー!!?なんか毛玉!!!」
ぷかぷかと浮いている木の板の上には動物かな?もこもこの毛玉が丸まっている。
なんだぁ?と更に近づいてみれば、私の気配に気づいたのかその毛玉はひょこっと顔を出した。

「え…猫…?」
一見すれば猫だ。紛う事なく猫だ。
猫なんだけど…んんんん!?

「耳、ながくね…?」
そう、その猫(仮)には何故かうさぎの様に長い耳が、頭のてっぺんにぴょこんと生えていた。
にゃぅう…と、猫(仮)は力無く唸りながら私の目をまるで捨てられた子猫の様な目で見つめてきた。

おまえ、なんか、かわいいな…。









とりあえず私は猫うさぎを抱っこして船に戻れば甲板にはサッチさんやマルコさんも見えた。

「おおーい!エースさぁーーん!
この子船で飼ってもいいですかぁーー?」

スト、と甲板に降りれば
「なまえちゃん!!!!なんて格好を…!!!!!」そう言ってサッチさんがズボッと先ほど私が脱ぎ捨てたシャツを頭から被せてきた。

「…ぷはっ!何ですかいきなり!!」
「何だじゃねぇ!年頃の女の子がなんて格好しやがんだ!!!ばか娘め!こんな子に育てた覚えはありません!」

「育てられた覚えもねぇよ」
そうピシャリと言えば、ガーーーン!と効果音が付きそうなくらい落ち込んだサッチさんが

「マルコぉ…なまえちゃん、反抗期かなぁ…っ」と、マルコさんにダル絡みをしていた。

「おう!なまえ!そういやなんか飼うとかって、何拾ったんだ?」
おーそうだそうだ、と服の中でその子を抱えつつ、片腕ずつ服から手を出し、お腹の所から

むんずっと毛玉を引き出した。

「ねこうさぎ、拾いました。飼っていいですか?」


「「「えええー!?なんだそいつー!!?」」」

うにゃあ!と驚いて襟ぐりから服の中に潜り込んだ。こそばゆ!!







「で、マルコ。コイツどうする?」
そう指差しながら私の膝の上でゴロゴロと喉を鳴らしながら寝てる猫うさぎ。
時々耳がピクピク動いて可愛い。

「マルコさぁん、ちゃんと世話するからぁ」
いやお前それ絶対世話しないやつじゃん。
とエースさんが言ったが聞こえなーい!

「いや、そもそもソレは猫なのかよい?」
「え?なんでしょう?この世界の猫基準がわかんないんで、え?猫ですよね?」

「いやぁーー?オレはそんな耳が長い猫は見た事ねぇよ??」
「サッチ、コイツ猫柄のうさぎなんじゃねえか??」
「ええー?でも尻尾長いですよー??」

うーーーん??と私たちは更に首をかしげるのであった。


島に着いたぞーー!と声がしたのは間も無くの事だった。






で、冒頭に戻る。

「ひゃあーー!やっぱり地面は落ち着くー!!」ありがとう大地!ありがとう自然!
この世の全てに感謝をしている私の腕の中には未だに猫うさぎかいる。

「ほら、ぴょん助。お前この島から流れてきた子じゃない?」そっと地面に下ろしてやれば鼻をひくひくと地面に近づけ匂いを嗅ぎ回っていた。

「ぴょん助って…コイツの名前か?」
え?そうですけど?とエースさんを見れば
お前センスねぇな!と小馬鹿にされた。

「じゃあエースさんならなんで名付けるんですかー?」

「ん?俺か?じゃあなぁー…兎丸タイガー!」



オメェの方がセンスヤベェよ。


冒険の匂い!

にゃん!とぴょん助が駆け出し、ああー!!まってーー!!と私も追いかけた。

後ろで待てコラなまえーーー!!!!とエースさん達が叫んでいた。