17家族とは


あれ?何処だここ。
と、気づいた頃にはもう遅かった。


どうも私です。
この世界に来て、地味に長い船上生活ともやっとおさらばできる!と地に足をつけた途端に迷子になりました。

走り去っていったぴょん助を追いかけて気づけば陽の光もあまり届かない、鬱蒼と茂った森の中をかれこれ二時間ほど彷徨っています。

ヤベーこれまたマルコさんに怒られるやーつ。

ていうか、あれ?これ
「船からおさらば出来るチャンスじゃね?」
「なんのチャンスだってェ?」

突然背後から話しかけられハッ!?と驚き後ろを振り向けば船で見たことあるような顔がそこに居た。

「ゼハハハ!嬢ちゃん、こんな島の外れまで迷っちまって!エース達が探し回ってたぜ?」

そう笑いながら随分と腹がポンポコリンでデカイ男が近寄ってきた。

あ、私コイツ苦手かも。

そう直感が伝えてくる。
「あ、あはは、それはどうも、ご迷惑をお掛けしました。では、私は行きますので」

じゃっ!と振り向き歩き出そうとした瞬間、ガシッと手を掴まれた。

ゾッ…っ
「(な、なんだコイツ…ッ)」
「オイ嬢ちゃん、船はそっちじゃねぇぞ」
そう言って、船はあっちだ。と男に連れられ歩く。

「ゼハハハ俺ァ、ティーチ。エースんとこの隊のモンだ」そう言って自己紹介を初める男だが
私の耳には全く入ってこない。

やばい、やばいこいつ、なんなんだ…
なんだこのゾワゾワする感じっ
…そう、あの時と同じだっ

…死柄木 弔…!!

過去、私たちの前に突如として立ちはだかった
途方も無い悪意。
初めて襲撃された時、感じたソレとこの男からは同じようなものを感じた。

「(ど、どうしよう、逃げるか?いや、でも…)そ、そういえば私ってばうっかりこんなところまで来ちゃったんですけど…
えぇーと、ティーチ?さんは何でまたこんな森の中へ…?」
「俺かぁ?俺はちぃっと”探し物”があってなァ
そしたら嬢ちゃんを見つけたってわけだ!」

は、はぁ。と頷く。
こんな森の奥で何探してんだ?と疑問に思ったが男に聞くことはなかった。

「あのー、わたし、一人で戻れるので
どうぞその探し物を探すの続けて頂いても構いませんけど…」
「そうかぁ?でもオメェちゃんと帰り道はわかるのか?」
「あ、あの、まぁ、空飛べるので…上からなら…」

ゼハハハ!!!と男が笑う。
急に笑いだすもんだからビクッと肩を震わせれば「”飛ぶ”ねぇ…。」とまじまじと私を見ながら言うティーチさん。

「嬢ちゃん、知ってるかァ?
この世界で”飛行能力”を持つ悪魔の実は”5つ”しか確認されてねぇンだ。
そのうちの一つァ、一番隊のマルコが食ったトリトリの実、ゾオン系、幻獣種モデル不死鳥。
あとの4つは何だろうなァ?」

「な、何でしょう…鷹、とか?」

「ゼハハハ、嬢ちゃん飛べるからって鳥だけとは限らねぇんじゃねえか?」

んん?つまり…どういうことだ?

「まぁ、自分で帰れるってんなら俺ァ”探し物”再開としよう!ゼハハハ!」

気ィ付けて帰れよー。そう言ってティーチさんは森の奥へと消えていった。

ドクドクとなる心臓がうるさい。
私はそこに立ち尽くしたまま、動けなかった。

ゴーーーンと遠くの方で鐘の音が聞こえた。
どうやらこの島は一時間おきに鐘を鳴らすようで、それに気がついてから今ので三度目の鐘の音だ。
はやく、はやく帰らなくちゃ…
早く…船に…!
パッと顔を上げ、はたと気づく。

「あれ、何で今普通に”船に帰らなきゃ”とか考えてんだ、私。」

このまま姿をくらませておけば、あの人達は諦めてくれるだろうか?そう考えていれば近くの茂みでガサリと音がした。

「(ヒッ!アイツ帰ってきたか!?)」
そう身構えていれば、茂みからぴょこんと見慣れた長い耳が見えた。
次いでひょっこり現れたその顔に

「「あ!ぴょん助!/ミケ丸!」」

「「え?」」










「わたしはルイ!この子はミケ丸!
おねーちゃんがミケ丸を助けてくれたのね!」
ありがとう!!と涙で頬を濡らしながら笑う女の子はルイちゃんと言うらしい。

そしてぴょん助と名付けた猫うさぎはミケ丸と言うそうだ。
うん、確かに三毛猫模様だもんな!

「この子、数日前に嵐で飛ばされて…
もう会えないかと思ったの…良かった無事で…」
にやぁあん!とルイちゃんに擦り寄るぴょん助改め、ミケ丸。

「おねーちゃん!わたしのおうち、すぐそこなの!ミケ丸のお礼もしたいし…一緒に来てくれる…?」

え?ようじょのお願いだよ?断る理由なく無い?と二つ返事で了承し、やったぁー!と喜ぶルイちゃんに付いて歩いた。

子供の笑顔いこーる正義、だな!





しばらく森を歩けば、原っぱの様な開けた場所に出た。
そこは少し小高い丘になっていて、空を覆い茂っていた木々も生えていない。

緑の屋根の、小さなお家がポツンと一軒建っていた。

家の近くにはそこそこ大きな湖があり、桟橋がかかっている
その桟橋にロープで一隻の小舟が繋がっており
ぷかぷかと浮かんでいた。

何だかとても穏やかな所だなぁ、頬を撫でる風に乗ってふわりと草花の香りが鼻をくすぐる。
「おとーーーさぁあーーん!」と女の子が家の方へと駆けていく
とてとてとミケ丸もルイちゃんの後をついて駆けている時、視界から一人と一匹がフッと消えた。

「え?あれ?消えた!ルイちゃん!?」
ギャァアアアアア!!!と悲鳴が聞こえ、何事!?とルイちゃんとミケ丸が消えた辺りまで行けば
「っと、うお!あ、穴…!?」
何だぁ?と中を覗き込めば中々穴は深いようで、
下の方から「おぉーい!誰かいるのかー!!?助けてくれー!!!」と野太い声が聞こえた。
「え!もしかしてこの穴にルイちゃん達落ちちゃった?!」
てか助けを求めるこの野太い声は誰じゃぁ!!
そう思いながらも慌てて無重力の個性で穴の中へゆっくりと身を下した。





「いやぁ〜!助かりました!一時はどうなる事かと!」
そう言って、どうもどうも。と私の手をブンブン降るこのちっさいおっさんはルイちゃんのお父様らしい。
らしい。と言うのも「(随分似てない親子だなぁ、お母さん似なのかな?)」と思ったからだ。

「いやね、つい穴を掘るのに夢中になっちまって!気が付いたら自力で登れない程深く掘っちまってよ!
どうすっかなーって頭抱えてたら、おめぇ、上からコイツ等が降って来たもんだから驚いたわぁ!!」
アッハッハと能天気に笑うお父様。
そんな所を私が助けに入り、二人に触って無重力状態にし浮かせて助け出したわけだ。

「ミケ丸!すごいねー!私たち!浮いたのよ!ふわぁって!」
にゃんにゃんにゃー!!とルイちゃん達は興奮冷めやらぬようだ。

「しかし、また…どうして穴なんて?」
そう、その落とし穴ともとれる穴は一つに止まらず、家の周りをくるりと囲むように転々と掘られていたのだ。

「いや、まぁ…ちとワケありなんだがな…
っと、この話は置いて!ミケ丸を海で拾ってくれたって聞いた!それに俺達の命の恩人だ!」
ささ!大したもんじゃねぇが、と温かいお茶と木苺がたっぷりが盛られたお皿を差し出して頂いた。

「いえ、お構いなく!当たり前の事をしたまでですから!」

朝採れたばかりなの!食べて食べて!とルイちゃんがお皿を差し出してくるので
では、遠慮なく…と一つ摘まみ口に入れる。
「んぁあんまぁーい!おいしいです!」

「「だろぉー!/でしょー!!」」
ニヒヒと笑うその笑顔は二人ともそっくりだった。
なーん!とミケ丸も嬉しそうに鳴いていた。

「どころで、なまえさんって言ったか?ここいらじゃ見ねえ顔だが…しかも能力者だろ?旅のモンか?」
「あー…えぇー、まあそんな所です」
煮え切らないような私の答えにルイちゃん達はんん?と首を傾げた。

「何と言いますか、私ちょーーーっと迷子になってしまったと言いますか…
自分の故郷への帰り方が、まぁ、その、少々特殊な事情がありまして…
帰る方法を探し、海を旅していると言いますか…。」
白ひげさんの船で、と言う事は何となく伏せた。

「えええ!おねーちゃん!たいへんじゃん!!」
「おいおい、そりゃぁまた…苦労してんだなぁ…。

まぁ、なんだ見ての通り狭い家だが、部屋は余ってんだ!俺達の恩人が困ってんのを
見逃す訳にはいかねぇよ!好きなだけ休んでいけばいいさ!」

「いえ!そこまでお世話になるわけには…!」
「おねーちゃん気にしないで!それにもうすぐ日が暮れちゃうし!
夜になると森の中歩くのあぶないよ?」

た、たしかに…!ただでさえ方向音痴なのに、暗闇の中森を抜ける自信は皆無だ!(どーーん!)

「じゃぁ、じゃあ…」と言えば二人はパぁッと顔を見合わせ嬉しそうに久々の客人だ!夜はご馳走だな!と手を取り喜んでいた。



御夕飯の後、今夜はここに泊まるといい。と案内された屋根裏部屋。
大きめのベットと、小さなテーブルが一つシンプルだが、優しいピンク色の壁紙の部屋は随分と可愛らしい雰囲気だ。

「あれ?ここ、ルイちゃんのお部屋ですか?」
疑問に思ったことを聞いてみればお父様こと、コルクさんがルイは下の部屋で俺と寝てるから
この部屋は随分使っていない、と教えてくれた。

「使っちゃいねえが掃除はしてるんだ!少々狭ェが部屋の物は好きに使ってくれてかまわねぇよ!」
「ほんと、何から何まで…助かります。お言葉に甘えてお布団、お借り致しますね。」

遠慮すんな!ゆっくりと休むといいさ!とコルクさんは下に降りて行った。



ベットに腰を掛け、考える。
ルイちゃんの部屋にしては、随分ベットが大きいなと思った。
夕飯を頂いている時に、ふと壁際にある棚の上にあった女性の写真。
隣には小さなガラス瓶にピンク色の可愛らしい花が1輪活けてあった。

「おかあさん…なのかな…」
この部屋は、きっとルイちゃんとお母さんのお部屋だっただろう。
随分とこの部屋は使ってないと言っていた、飾ってある写真と合わせて考えれば…
おそらく、写真に写るあの女性は…もう…。

ぽすん、と身体をベットに預ける。ふわりと石鹸のいい香りがした。

「あー…ベットって素晴らしぃーふかふか…しあわせ…」
診療室のベット固いからなぁー、ギシギシするし。久々の柔らかい布団の感触に癒される。

「まるっと1日、経っちゃったなぁ…どうすっかなぁ…」
昼頃に港に着いてから、ミケ丸を追いかけ気づけば森で彷徨い、今に至る。

ティーチと言ったか、あの胡散臭い男。この男の事は少々引っかかるものがあるが
「さて、どうしたもんか…このまま離れるのもありだよな…」
チクリ。と胸に違和感を感じた。

「…まぁ、明日起きてから考えよう。」うんそうしよう。と目をつむる
多分、ルイちゃんのお母さん。お部屋借りますね。と薄れる意識の中考えながら眠りについた。







深夜の来客

ガシャン!とガラスが割れる音で飛び起きた。
不穏な気配を感じ、急いで階段を降りた先の光景に私は息をのむ。