20ヒーローを助け隊


島中探してもなまえがいねぇ。
森に迷い込んじまったかと思えばティーチが森から出たなまえを目撃しているそうで、また町に戻って探してみたが見つからねぇ。


「もしかしたらクルーの誰かが見つけて船に戻ったかもしれねェから、戻ってみるかよい」

そうだよなぁ!一日中探して見つからなかったんだ、もしかしたらすれ違ってたかもしれねぇしな!とマルコとサッチと船へ戻る。

ティーチは酒屋に行くといって森の前で別れた。

「しかしよぉ、こんなに探しても見つからねェとは…なまえちゃん…島から出て行っちまったのかなァ…」
仲間になるの拒んでたし、逃げるとか言ってたしよォ…。と落ち込むサッチ。

「滅多なこと言うんじゃねぇよサッチ!」
きっともう船に戻ってるさ!と自分に言い聞かせながら早く、早くと船に足を進める。










「隊長の嫁さんですか…?船には戻ってきて無いですけど…え?隊長まだ夫婦喧嘩してるんッスか?」

帰って…来ていない…。船番をしているクルーの言葉に俺の焦りはもう限界だった。

「本当にッ…本当にまだ帰ってきて無いのか…!?誰か他に見た奴はいねぇのか!?」
クルーの胸ぐらを掴み必死に訴える俺にそいつは驚きながらも「お、オーーイ!野郎ども!誰かあのお嬢ちゃん見なかったか!!?」と他のクルーに問いかける。

クルー達は

見てねぇぞー。
まだ帰ってきて無いのか?
町から戻ってきたのは隊長達だけっすよー。

と、どれも期待する答えではなかった。

そんな時、見張り台に居る奴が何かを発見したのか
「オイ!ありゃぁなんだ…!
おーーい!みんな!向こうの森の方から火が上がってる!!!」

なんだなんだと船が騒がしくなる。
俺達も森の方へ目をやれば煙が立ち上っているのが見えた。

嫌な予感がする。何故だかとても其処へ向かわなければと言う思いで頭ン中がいっぱいになり
気づけば駆け出していた。

「ッおい!エース!」
マルコの呼ぶ声がしたが、気にしてられなかった。









立ち上る煙を頼りに真っ暗な森の中を走る。
道無き道をしばらく行けば人が通る様な小道を見つけた、昼間町長が言っていた親子の住む家へと繋がる道だろうか、煙はこの先で上がっていた。

小道を駆け抜けた先は、原っぱの様に開けた場所に出た

小高い丘の上でボウボウと炎が立ち上がっている。

町の男達だろうか、燃え盛る炎に湖から水を汲みバケツを何人もで受け渡しながら火を消そうともがいていた。

「おい!コルクさん達は見つけたか!?」
「いや!まだだ!中に居るんじゃねぇだろうな!!?」
そんなっまさか!?と男達の表情に絶望の色が見えた。

「ッ!俺が中を見てくる!!」
「あっ、おい!おめぇ確か白ひげんとこの…って!おい!!」

居てもたっても居られず、炎の中に飛び込もうとすれば、居たぞーー!!!と声が聞こえた。

「おーい!こっちだ!!!穴の中にコルクさんが居たぞ!ロープだ!ロープ持ってこい!!」
そう言って誰かが持ってきたロープで穴の中にいた奴を数人で引き上げれば、頭から血を流し顔中を殴られた様に腫らした男が1人出てきた。

「こ、コルクさん!ヒデェ怪我だ…何があった!娘さんは…っ、娘さんはどうした…!?」

「っぐ…ッッグゾォッ…何がぢぢおやだ…ッむずめ1人守れやじねぇ…っグゾッ、グゾォ…」
「お、おい、まさかまだ家の中に…っ」

「ちげぇっ…ルイはっ…娘は人攫いに攫われちまった…っ!!なまえさんもっ…連れてかれちまった…ッッ!!」

なまえだと!!?男は確かになまえと言った、俺は男に駆け寄りなまえって16歳くらいの女か!?と問いかければ驚いた顔をし、俺にアンタは誰だと言いたげな表情で知り合いか?と聞かれた。

「なまえは俺達の仲間だ!オイおっさん!
連れ去られたって言ったなっ?誰にだ!?わかるかっ!!?」

勢いよくおっさんに詰め寄れば町の男達がまずは手当てしねぇと、酷い怪我だと言い俺を止めた。
だが、おっさんは「いや、大丈夫だ…それよりすまねぇ…!俺は何も出来なかったッ!アンタの仲間もっ守ってやらなくて…ッなまえさんは俺達の恩人だったのによぉ…ッ情けなくて自分が憎い…ッッ!!」

すまねぇ!すまねぇ!と地面に額を擦り付けながら謝るおっさんに胸が痛くなる思いだった。

「おっさん!頭上げてくれ…!まずは手当てしねぇと!言い寄って悪かった!」

「いや、いや、いいんだ。俺の事はどうでもいいんだ、ルイとなまえさんッ…!早く助けてやらねぇと…っ!」

だいぶ錯乱している様子のおっさんに町の奴らが人攫いに心当たりはあるのかと聞く。
おっさんは「ある」とはっきり答え、
「俺達は何年もアイツらから逃げてきた、
そんな時、大時化に巻き込まれて流れ着いたのがこの島だった…。聞けばここは白ひげのナワバリじゃねぇか…白ひげの名を掲げているこの島に身を隠せばアイツらも諦めると思ってたんだ…!」

しかしその願い虚しく、何処からか嗅ぎつけた奴らが最近森の中をうろついていたらしい。

警戒を強めたおっさんは家の周りに罠を仕掛け怪しい奴らを追っ払おうとしたが、奇襲をかけられ家を燃やされた隙に娘とたまたま困っていた自分達を助けてくれ、家に泊めていたなまえを麻酔銃の様なもので撃たれ気を失い、そのまま連れ去られたと言う。

「コルクさん…っあんた!なんで俺達に相談してくれねぇんだ…!!」
「そうだ…!町の奴らで助けてやれたかもしれねぇ!もっと俺達を頼ってくれよ!!」

「あ、ぁあ…ッ…。フィリアを…ッフィリアを死なせちまったのに…っ!これ以上アンタ等に迷惑はかけられなかったんだ…っ!!」

「コルクさんアンタ…まだ気にしてたのか…っ!!フィリアさんの事は仕方がない事だっただろ…!!」

でも俺が!俺のせいで…!と自分を責めるおっさん、とても痛々しくて見てられなかった。

「ッオイ!エース!!ッハァ…っコレは…っどういう状況だよ…っ!」

サッチが息を切らし、走り寄ってきた。
振り返ればマルコや他にも何人かクルー達と数人の隊長達が集まり事の次第を俺が伝えれば

「迷子になったかと思いきや…人攫いに攫われたって!?ッカァー!本ッ当に困った小娘だねい!!」
マルコが乱暴に頭をかきむしりながら言った。
全くその通りだと思ったが、今はそれどころじゃない

「ねぇ!攫われたって、心当たりはあんの!?」ハルタが人混みを掻き分けながら出てきた、
そうだ!おっさんは人攫いの奴らを知っていると言った!俺も再度おっさんに誰がやったんだと聞けば、元々はおっさんの娘を狙っての犯行の様で
その人攫い達は雇われた奴だと言った。

そしてそいつ等を束ねているのが、
「ジャンクって男だ、なまえさんもそいつに撃たれて連れ去られた」

そう言って俯くおっさん…。続けて話した内容に町の奴らは息を飲んだ。

「娘は…ルイは、俺の子供じゃねぇんだ…昔バカやって、海軍に捕まっちまってよ…大した罪にはならなかったが…心を入れ替えようと、とある小さな王国の下っ端警備兵をしていた。

だがある日、そのジャンク率いる人攫いの集団が海賊と手を組んで国を襲いにきたんだ…
国中の女が連れ去られていった、男共は皆殺しにされ…城の前でその死体を晒された…酷い光景だった…。

そんな時、命からがら逃げていた城の侍女が俺に赤ん坊を託して来たんだ。
その赤ん坊がルイだ、アイツぁ、一国の王女なんだよ…!そしてルイだけじゃねぇ…ジャンクの野郎、きっとこの鍵が目当てで俺達の事をしつこく追ってるんだ…ッ」


そう言っておっさんは、首から紐で下げた一つの鍵を見せた。
それは、その滅びちまった国で代々保管されている宝箱の鍵らしい。
その鍵を、赤ん坊と共に国王が侍女に託し
そしておっさんの手に渡り、監視の目を潜り抜け海へ出たと言う。

「そもそも宝はとっくにジャンク共に奪われてんだ…こんな事になるならこんな鍵…くれてやれば良かったんだ…っ」

ボロボロと悔し涙を流すおっさんの話にその場にいた奴らは皆、拳を強く握りしめただろう。
そんな中、沈黙を破ったのはハルタだった、

「ねぇ、そのジャンクって奴まだこの島に潜んでる可能性あるんじゃないの?」
「おい、どういう事だ。ハルタ」

「だって、もし船でこの島に来たってんなら港には今、僕たちの船が停泊してるじゃん。
仮に、そんな怪しい船近づいただけで船番の奴らが気づくし…そもそもこの島の港はそこだけでしょ?」

「…確かにハルタの言うことが正しけりゃ、奴らはまだ島の中にいる事になる!」
「いや、港は他にもある…」

サッチの言葉におっさんは否定をし、他にも港はあると言った
町の奴ら曰く東の農村地帯は海に面する場所は断崖絶壁で北側は深い森の先は崖になっているという。南側の浜辺以外、島民ですら知り得ない船がつけられる場所があるのか。とおっさんに問えば
北の森の先に、船が一隻止まれるほどの岩場を何年か前に見つけたらしい。
それは森の奥にある洞窟を抜けた先にあると言う。

そんな所が…と驚く町の奴らに対し俺達はそこへ向かえば、もしかしたらまだ居るかもしれねぇと淡い期待を寄せる。

「じゃあ俺ァその岩場の方へ飛んで確かめてくるよい、そのほうが時間が無駄にならねぇ。

エース、お前はストライカーで海へ出ろ
仮に出航してたとしても火が上がってからそう時間は経っちゃいねぇ、もしかしたらまだ近くの海域に居るかもしれねぇからな。」

他の奴らは一旦船へ戻り、マルコの報告を待ってから岩場にまだジャンク共が居る様なら船で北側へ回り込み一網打尽にする作戦だ。
居なければ俺のビブルカードを追って来るそうだ。

ジャンクの野郎…!白ひげのナワバリ荒らした事、後悔させてやる…!と駆け出そうとすれば足元でにゃぁーんと鳴き声がした。

「おぉお…!ミケ丸!!無事だったか…!
可哀想にっ毛がこんなに焦げちまって…っ!」
ぎゅううっとなまえが拾った猫兎を抱きしめるおっさん。力なく鳴き声をあげるその姿はとても見窄らしい事になっていた。

「おい猫助、オメェの主人も必ず見つけ出してやるからな」そう言ってその頭を撫で付けてやれば、にゃん!!と力強く一声鳴いた。


「さて、と。野郎共、盗られたモン取り返しに行くよい。」ニヤリとマルコが悪そうに笑った。





さぁ、ケンカをはじめよう

待ってろよなまえ、今助けに行くからな…!