25二人の夜に
ばいばぁーーい!またねーー!
白ひげさんのお舟から島に向かって手を大きく降る。
手間かけさせやがって!とマルコさんにしこたま怒られた私に、コルクさんは苦笑いしながら改めてお礼を、とルイちゃんと家族を助けてくれて有難う。と感謝され
私の方こそ、美味しい食事を有難うございました、と礼を述べれば大した事じゃないよ。と言うので「私にとって食事は命に関わるので…」助かりました。と再度お礼をした。
少し疑問を浮かべながらも、先程サッチさんに私宛へ託した物があると伝えられ
サッチさんがコレだよ、と渡されたのは何かの紋章が細工された古めかしいカギだった。
コルクさん曰く、いつか役に立つかも知れないから、との事だったが。
「ルイがうまれたときから もっていたカギなんだって!おねーちゃんにプレゼントしよっておとーさんときめたの!もらってくれる…?」
ようじょのお願い、つよい。
「ルイちゃぁあん!ありがとう!大事にするね!」
友情の印だね!と言えば嬉しそうにする親子に、あ!と一つ思い出し二人に渡すものがあるんだったと、いっけね忘れるとこだったぜ!
「コルクさん、ルイちゃん。コレ、お家燃えちゃったから…」
そう言って少し服を捲り上げ創造の個性で私が記憶したフィリアさんの写真立てを創り出した。
「え…なまえさん、こりゃぁ…家に置いていた、」
「おかーさんのしゃしんだ!おねーちゃん!やっばりすごいね!まほう使いのヒーローだ!」
すごいすごいと喜ぶルイちゃん、にゃん!にゃん!とミケ丸も嬉しそうだ。
「なまえさん、本当に、なんて言ったら良いか…礼を言っても言い足りねェよ…!」
「いえいえ、お二人の大切な思い出ですから…お家も直せたら良かったんですけど…」
力及ばず申し訳ない。と言えば、これからは町の方で世話になるから気にしないでくれとコルクさんは言った。
「そうですか、フィリアさんも安心してる事と思います。どうぞ、コルクさんもルイちゃんも、島の皆さんもお元気で。お世話になりました!」
またね、と再会を誓い私達は大海原へと鯨に乗って泳ぎだす。
「はぁ〜、もう島が見えなくなっちゃった。ルイちゃん可愛かったなぁ〜」
「なぁー、俺は3人兄弟とか良いと思うぞ」
「…は?なんの話してんの?」
「??俺たちのガキの話だろ?」
え?まだ言う?こいつ、まだその話すんの?
「ねぇ、私、オマエに、嫁いだ、記憶、ないよ?そもそも私25歳、見た目は子供、中身はアラサー。わかる?」
「歳なんて関係ェないさ、それにあのボウズも言ってたろ?“年上の女房は金草鞋履いてでも探せ”ってよ」
だろ?と肩に手を置くエースさん。
いや、だろ?じゃねぇよ。何なのこいつ!
「なんだ?お前達また夫婦喧嘩かよい?それよりなまえ、お前ちょっと診察すっから付いて来いよい」
「夫婦じゃないですから!!!!もう!私どこも悪くな…い…って、え?今、名前…呼びました?」
「なんでぇ、呼んじゃ悪いのか?なまえ」
「あああああああああ…!やめて!さらっと!馴染まないで!!なんか俺たち仲間だろ的な空気作らないで!!!ってか!何で私当たり前のように船に乗った!?島に残るの忘れてたぁああ!!!」
今から泳いででも島にもどりますうううう!
半狂乱になり海へ飛び込もうとすればエースさんにガシイイッと捕獲され
「だめだ!頼むから行くな!なまえ!」となんか離婚を切り出せれた旦那みたいなそのセリフまじやめろ!!と更にもがくのであった。
離せ離せと暴れていると
「なまえちゃーーん飯だぞー!!」
どこだー?おいでー!
とサッチさんの声がし、「あ!ご飯!たべるたべるー!」
そう言ってそそくさと私は甲板を後にした。
「め、飯に勝てねぇ……!!!」
「エース……」
甲板には落ち込むエースさんを哀れむマルコさんが居たそうな。
めでたしめでたし。
「あ〜〜〜今日もご飯が美味しい!働いた後のご飯おいし〜〜!これで冷えたビールでも飲めりゃ最高なのにーー!」
グイッと水の入った樽ジョッキをあおればハルタさんに
「おっさんじゃん、あ。オバサンだったね」と言われた。
こいつ!ほんっと!煽りスキルたけえな!
そしてなぜ私と同じテーブルで飯くってんだこいつ、私の事嫌いだったんじゃねーの。
「たく、ハルタも素直じゃァないねェ。」
「うるさいよイゾウそんなんじゃないから!」
クックックとイゾウさんが笑いながら冷酒をグイッと飲んだ、
え、いいなぁー…私もぐい呑したい…
恨めしそうにイゾウさんを見ていれば「ん?いける口かい?」なんて聞くもんだから
「めっっっっっちゃ!お酒好きです!!!!」
お!じゃあ一杯付き合ってもらおうかねぇ、とイゾウさんにお酒を注がれたお猪口を手渡されたので、グビっと飲んだ。
「っカーー!!うめぇ!もう一杯!」
「ククク、良い飲みっぷりじゃねェか!どれこっちも飲んでみるか?とっておきなんだ」
そう言ってとくとくとお酒を注いでくれたイゾウさん、
あー身体に沁みるわぁ〜ともう一杯頂いてぺろりと舌舐めずりをした。
「嬢ちゃん、中々いける口じゃねぇか」
「イゾウさんこそ、中々の美酒をお持ちっデェッッ!?」
ぶにゅっと背後から誰かが両手で頬を潰すように私の顔を挟み、グッと上を向かされた。
…エースはん、あんたなんでそんな怖い顔してあたしをみてるんどす?
「なにふふんでふは(なにするんですか)」
「お〜ま〜え〜は〜〜〜!!」
イゾウも飲ませるんじゃねぇよ!とぎゅむぎゅむと頬を押しつぶされながらエースさんはイゾウさんに抗議している。
「なんでぇエース、あんま口うるせえと愛想つかされちまうぞ?」
なぁ〜〜?とイゾウさんは私に言い、そうだそうだ!離婚案件だ、離婚案件!
んぶっとエースさんの大きな両手から抜け出し
「こりゃ、離婚案件ですな。」とエースさんに言ってやった。
「だいたいよぉ、エース。今じゃこんなちんちくりんだがよ。なんでも良い年した女ってんだろ?少しくれェ良いじゃねぇか、なぁ?」
「〜〜!そうだったかもしれねェが!今は!ちんちくりんな!ガキだ!!」
「は?何おまえ、喧嘩売ってる?イゾウさんも!ちんちくりんって言うな!」
だいたいそんなちんちくりんのガキを娶ろうとしてるお前もどうかと思うぞ!!
そう言ってエースさんの腹を指でブスブスと指しながら抗議すればハルタさんが相変わらずの憎まれ口で「どうみても今は15歳くらいだもんねぇ〜?お、じょ、う、さんっ。ププッ」
「あ“?んだコラ、どう見ても17歳なんですけどー。17歳の頃の自分ですけどー。ケンカなら買うぞ?ん?表でろや」
「「「え…17歳、ではないだろ…」」」
驚いたように私を見る3人。
「……よぉし、3人まとめて相手してやりますよ。」
ポキポキっと指をならした私の前に、コトリと美味しそうな料理が乗ったお皿が置かれた。
「おまえら、本当騒がしいな!ほらなまえちゃん取り敢えずこれ食って落ち着けな?」
「うん、頂きます」
(((ちょれぇー…)))
その場にいた皆んながこう思ったに違いない。
「そういや、なまえちゃんよぉ」
カタリとサッチさんが隣に座り私に問いかけた
「あれ、ほら島でユーレイ降ろしてたじゃん。死んだ奴なら誰でも呼べんの?」
ヒョイっとポテトを一つ摘む。
「んーー、まぁそうなりますかねー
でも呼びかけに応えてくれれば、の話ですけどね。あの人達も常に暇してるわけじゃないんで」
「なにそれ、幽霊にも暇とか暇じゃないとかあんの?」
ハルタさんがオムライスを頬張りながら聞いてくる、おまえ、オムライスって…
ガキンチョかよ…。
「まぁ、ほら、地縛霊なんかはその場から動けませんし。
背後霊はその人から離れられないので呼び寄せられませんし、
怨霊なんて人呪うのに忙しいですからねー!守護霊さんとか、ごく一般な浮遊霊さん達はちょいと手伝って〜ってお願いすれば割と来てくれますね!」
後は、呼びかけても拒否されることもありますね。
めんどくさいから嫌だって。
「っへぇ〜、死後の世界も色々あるんだなぁー。」
ってか怨霊ってコエェ…!そう言ってサッチさんはブルっと身震いした。
ふ、と。急に静かになったエースさんを見やれば、なにやら難しい顔して俯いていた。
なに?幽霊とかコワーイって人?そう思って顔を覗きこめば少しびっくりしたように
「うおっ、どうした?」と聞いてきた。いや、お前がどうした?
「エースさんこそ、どうしました?いっつも上裸だからポンポン冷えちゃいました?」
ちょっと冗談めかして聞いたのに、エースさんは思い詰めた様に。こう、聞いてきた。
「なぁ、その…死んだ奴とお前は話せる力があるって事は、よ。
例えば…かつての、海賊王。とも、話せるのか……?」
「え…まぁ、その人が亡くなっているなら、まぁ…」
あまりにも真面目に聞いてくるもんだから少し驚きつつも
「そういえば、その“海賊王”?ってなんなんですか?」
「ん〜?そりゃおめぇ、この“海を全て制した”奴の称号さ!かつてこの海を全て制したのはその海賊王・ゴールドロジャー!ただ一人だったからな」
「で、その海賊王が処刑される時に海の果てへ“ひとつなぎの大秘宝”を置いてきたってんだから、それを手に入れようと多くの海賊達が海へ出たってわけサ」
「わんぴぃす…?…へぇ〜。じゃあこの船もそのワンピースってのを探して旅をしてるんですか?」
「そう思ってる奴も中にはいるんじゃない?ま、オヤジは興味無いみたいだけど。」
サッチさんとイゾウさんとハルタさんが海賊王とかワンピースとかについて教えてくれた。
ほほーん、と聞いておいて興味なさげにもふもふとご飯を口に運べば、おめえはロマンってもんを感じねぇのか…?と呆れ気味にサッチさんに聞かれたので
「いや、全く。」
冷めてんなぁー!と近くのテーブルにいたクルーの人達にワンピースの秘められた魅力について興奮気味に語られたが。
うん、興味ねぇー!
その後、食堂全体を巻き込んだワンピース談義に発展したので、着いていけんわ。と
腹も膨れたしご馳走さましてそそくさとその場を後にした。
「っおい、なまえおめぇ、一人でうろつくなって。」
出てすぐの所をエースさんに腕を引かれ、「どこ行くつもりだった?」と聞かれたので
寝床部屋ですけど、と言えば「はぁ〜〜〜〜。マルコの診療室はあっちだ…」
そう言って呆れながら私を連れ歩き出した。
「いや、ま、まぁ?知ってましたけど?ちょーっと遠回りして帰ろうと思ってただけですから?」
「ったく、言ってろ。」
静かな船内を二人歩く、いつも煩いくらいに賑やかなのに廊下には私達二人だけの足音が響く。
程なくして寝床部屋ことマルコさんの診療室に到着し、
「じゃあ、おやすみなさい。ここまでの見送りご苦労だった。」
じゃっと手を挙げてドアに手をかければその手をエースさんの手が包む。
「なぁ、なまえ。これからは俺の部屋で寝泊まりしろよ」
「いやですー。身の危険しか感じませーん」
ペシっと手を叩いて私は部屋に入った、ら、エースさんも着いてきた。
「は?いや、私もう寝ようかなーって感じなんですけど、何入ってきてんで、っすわぁっ!」
話終わらないうちにツカツカ近寄ってきたエースさんにヒョイっと横抱きにされ、ベットに降ろされたと思ったら、ここここコイツ!!!!
「オラてめえ!何覆いかぶさってっひゃぁっ!」
「なまえうるさい、ちょっと黙ってろ」
おおおおおおおおおまえええええ!!!
なんて事だ!私はエースさんに押し倒されたうえ、なにやら首元に顔を埋めて抱きついてきやがった!このやろ!去勢すっぞ!!!
「おおおおおまっ!おまええ!!ちょ、ちょっとはなれ…っ「なぁ…」…、え?」
エースさんが、あまりにも弱々しい声を出すもんだから…ちょっと意表をつかれた。
「なぁ、なまえ。世界が…己を否定して、産まれて来た事すらも疎まれ、憎まれたら。
お前はどうする…?」
「え……。」
愛を、下さい
エースさんは私を強く抱きしめた。