30王の証
つんつん、つんつんつん。
ん、んん?なにか、なんかが私の頭を突いているような感じがして身じろぎをした。
つんつん…つん…コツ、コツコツコツ。
ッゴ「ってイテェわァア!!!!!!!!」バチコーン!と何かを叩き飛ばせば
「っキィィー!」と甲高い鳴き声と共にソレはぼとり、と何かを落として近くの岩場の方へ逃げていった。
「え、あ、あれ?猿…?え?…ココヤシの、実…?」
なに、どういう状況?と周りを見渡せば。どうやら私はどこかの浜辺に打ち上げられたのか、身体は砂塗れだった。
何処かの島だろうか…?
確かティーチさんを追って船から飛び降りた後、私とティーチさんは海に落ちた。
ティーチさんは逃げる前提でのサッチさんから実を奪う計画だったのは確実で、その証拠に飛び降りた先には小さな船があったのを落ちる際に確認でき、
水中でティーチさんと一悶着したのち、暗い海の中、私はティーチさんを見失ってしまった。
空気を求め海面を目指し泳ぎ、ぷハァ!!!と海面に顔を出して大きく息を吸った直後。
何かに足を絡め取られそのまま、海中へと引きずりこまれるかの様に引っ張られ何事かと暗闇の中うっすらと見えた…ギョロリとした、大きな目。
「っは!そうだ!なんか、すっごいでっかい怪物にびっくりして思わず上鳴くんの個性で水中なのに放電しちゃって私もビリビリしちゃったんだった!!」
私ってばおバカさんね!!
一人でてへぺろ!としてれば、先程岩場に逃げていった猿がこちらを伺う様に少し顔を出し見ていた。
パチリ、と目が合いしばらく猿と見つめ合い
側に落ちてるヤシの実を見て、また猿を見た。
「…おい、エテ公…おまえ、私の頭で…ヤシの実…割ろうとしたろ…」
「…ウ、ウキィ」
私の頭がかち割れるわ!!とヤシの実を手に取り、ティーチさんの攻撃を受け止めた時の様に切島くんの硬化の個性で硬くした腕でガシガシとヤシの実に穴を開けてこちらの様子を伺っている猿に「ん、」とヤシのみを手向けてればウキキと喜んでいるのか私に近づき
ヒョイっとヤシの実を持ってどこかへ行ってしまった。
はぁー………青い空、白い砂浜。
遭難した私と、猿が去って行った方を見れば、そこは鬱蒼とした森。
「と、いうかジャングルやん…」
ココドコやねんー。
ギョエェエーーー!とブッサイクな鳴き声の鳥らしき動物が頭上を飛んで行った。
「あっっっっっっつぅー……」
暑い、暑すぎる…夏島ってやつなのかな、とりあえず燦々と降り注ぐ陽の光が恨めしい…。
「白ひげさんの船って…冬島の…気候に居たよね…」
結構流されちゃったのかな…とその場に俯き項垂れる。
「ティーチさん…逃しちゃったよ…はぁ…サッチさんも、大丈夫かな…お腹と背中、少し焼いちゃったし…。」
はぁぁぁっ…と目が覚めてから何度目かわからないため息をした。
とりあえず、何か口にしなきゃと、ジャングルの方を見て考える。
木の実とかフルーツとか自生しているだろうか…そもそもこの島、人住んでるの…。
うっかり、心細くて泣きそうになる。
重い腰を上げ、うんしょっと立ち上がればウキキーと先ほどのお猿さんがジャングルの方から此方へ駆け寄って来た。
「ん?どうしたお前、恩返しにでも来たか?ん?食い物くれ」
「キィ?」
っふ、言葉通じるわけないか…と自分に呆れていれば、お猿さんがジャングルの方に向かってウキキー!と大きな声で鳴き、何事ー!?と少し驚いていれば
ジャングルの方からも応えるかのようにウキィー!と鳴き声が聞こえた。
何!?とお猿さんを見ればニコーとお猿さんは私を見て笑いジャングルの方へ振り返ってその小さな手をいっぱいに振っている、え、なんか呼んだこの子?
ジャングルの方から複数の足音らしき音が聞こえる、ドドドドドと地響きがするのは気のせいだろうか…ひくり、と口角を引きつらせた私の前には
お猿さんが呼んだのであろうお猿さん軍団が何やら小脇に物を抱えて走り寄って来た。
「「「ウキキ!」」」
「ウキ!キキキ!」
「ウホウホホッ!」
「や、なんでゴリラ混ざってんの!?」
「ウホ!!??」
「イヤお前だわぁ!!!何、え?どこどこ?って見渡してんの!?」
「……!!!!!」
えーーー!コイツ自分がゴリラって忘れてるー!!?
何、「はっ!俺か!」みたいな顔してんの!!??こっちがびっくりなんだけど!!!
私人生で初めてゴリラに突っ込みいれたわ!
色々と衝撃的過ぎて驚きが渋滞してきた私の前にお猿さん達が沢山のココヤシの実を足元に置いて来た、え?なに、私にくれるの?と疑問を浮かべ
「これ、くれるの?」と聞けばお猿さん達はフルフルと頭を振り、ヤシの実を指差してから己の口を指差すジェスチャーをしてきた。
「…中身、飲みたいの…?」
「ウッキ!ウキキ!」
そうそう!その通り!と言わんばかりに手を叩き喜ぶお猿さん達。
は?私にコレ開けてくれって言ってんのかな、コイツら…
な!いっちょ頼むよお嬢さん!と聞こえてくる様なお猿さんの手をピシッと顔の前にやり申し訳なさそうにしている表情で全てを察した。
あ、はい。お前ら図々しい奴認定しました。
ガコッガコとヤシの実を割る私の前にはズラリとお猿さん達がお行儀よく1列に並んで自分の順番を待っている。
あれ?私なにしてんだろ…と最早ヤシの実割機と化した自分に迷子になって来た…
「…はいよー、次の奴ー、ちゃっちゃかいくよー」
そう言ってお猿さん達を捌いて居れば「あ、よろしくおなっしゃす」とあのゴリラがヤシの実を手渡して来た。
「……。」
ジトリ、とゴリラを見れば「ウホ?」と何か?みたいな感じで私を見てくる。
いや、お前さ…
「…お前さ…ゴリラじゃん…その逞しい腕でヤシの実割れるだろ…自分で…」
「………!!」
「いや、ハッ!!!じゃねぇわ!!!!」
おめぇ自分の種族わすれんなや!!!!!と人生で2回目のゴリラへ突っ込みを私はいれた…なにこの貴重体験…もうイヤ…
あー、そやったそやった、コレ自分で割れましたわぁ〜。てへへ〜とお猿さん達の輪にヤシの実を持って戻っていくゴリラさんに
おっまえ〜まったくうっかりさんだなぁ〜!みたいな感じでお猿さん達がゴリラさんの肩をパンパンと叩いている。
「や、まじで、私なにしてんだろ………あの、これ私も飲んでいいっすか?」
あ、どうぞどうぞ。とヤシの実を渡された。
ガコっと割って中身をゴクゴクと飲む、っぷはあー!うめぇ!もう一杯!
どこぞのコマーシャルかのようにもう一つ手に取り中身を飲み干していればウキキ!とお猿さんが大きな葉っぱの上に色とりどりのフルーツを乗っけて私の前に置いた。
「これ、くれるの?」
「ウッキ!」
さぁおたべ!と言わんばかりにズイズイと私にそのフルーツを前に出してくれて、じゃぁ…とバナナを一つ手に取り皮をむいてパクリとかぶりついた。
「〜〜〜〜んんんんんまぁあい!!!」
パクパクと他のフルーツも腹に収めていく、気がつけばお猿さん達(+ゴリラ)も混じってヤシの実やフルーツで飲めや食えやのプチ宴会みたいになっていた。
ジリジリと照り付けていた陽の光も、今は沈み優しい月明かりが私達を照らしている。
あ、そうだ。と思い出し私は口田くんの個性ならこの子達とコミュニケーション取れるかもしれない、と“生き物ボイス”でお猿さん達と話をする。
どうやらココは無人島で、人間は居ないそうだ。
今朝、浜辺に打ち上げられている私をお猿さんが見つけ、てっきり死んでいるのかと思ったらしい。
うんうんとお猿さん達とお話をしてふと思った事を聞いてみた
「そういえば、なんでお猿さん達の中で彼?だけゴリラなの?」
ウキキー、とお猿さん曰くこのゴリラさんは赤ちゃんの頃にご両親をたまたま島に上陸した海賊達に殺されしまったそうで、お猿さん達で保護し、それから共に暮らしているそうだ。
その為時々自分がゴリラというのをうっかり忘れてしまうという。
いや、忘れるなよ。と突っ込みを入れればゴリラさんは照れ臭そうにし、お猿さん達は愉快そうに笑う。
種族は違えど、自分達は家族なんだ!だから気にしちゃいないさ!
君には家族は居ないの?一人ぼっちなら僕たちとココに暮らせばいいさ!それなら寂しく無いだろう?
家族、か…アノ人達も、俺達は家族だ。って言ってたな…。
早く、船に帰らなきゃな……
「ん?いやいやいや、帰るのは自分の世界だっちゅーに!」
あっぶねー!今ナチュラルに帰る場所間違えた!馴染みすぎでしょ自分!
「…でも、この世界での…私の帰る場所っていうのは、あの船だけなのかな…。」
はぁ…とまたため息をつけば、お猿さん達が不思議そうに私を見る。
「あ、いや、なんでも無いの。私、また迷子になっちゃって…」
また怒られちゃうなぁ、えへへ。と笑えばお猿さんはそうじゃなくって!と言いたげに私の胸元を指差した。
「え?なんかついてる??って、ええ!なんか私のおっぱい光ってる!!!!!」
キキ!とお猿さんも驚いたように私の胸元を見つめる、なんかふわふわと淡い光を発している胸元のボタンを開けて原因を探っていれば、コルクさんから貰った例の鍵が発光元だと気がついた。
ええなにどうした!と鍵をつまみ目の前まで持ち上げれば鍵に装飾されている紋章の中心にある小さな青色の宝石がピカピカと光を放ち、尚且つピンと一本の光の線がどこかへ向かって伸びていた。
「ええなにこれ!…なんか、この光…ずっと北の方を指して光ってる!」
「…!ウキキッ」
「え!…って、ちょ、ちょちょ!なに!?」
何か思いついたかのようにお猿さんが私の手を取りこっち来て!と引っ張られ、それに着いて行く。
こっちこっち!とジャングルの中へ入りガサガサと草木を掻き分けながら引っ張られる方へと進めば他のお猿さん達とゴリラさんも私に続くように皆んなでジャングルの中を駆けて行った。
「うぇっぷ!っぺっぺ!ちょ!葉っぱ!葉っぱ食った!!」
私のそんな事も御構い無しに手を引き駆けるお猿さんは何か切羽詰まったかのような表情で私を何処かへ連れて走る。
恐らく、この鍵が示す光の方に何かあるのだろう。
先程からお猿さんが進む先を示すかのように光は真っ直ぐと私達の進む方向を示していた。
「ね!ねえ!どこ行くの!この光の先を知っているの!?」
ウホホッとゴリラさんが、“王の輪”の所だ!と言った。
「お、王の輪…?なにそれ!って、ちょ!崖!!!崖ぇええ!!」
キィイイーーーー!とお猿さんは当たりに響く様に甲高い声で鳴きながらもその足を止めない、このまま崖にダイブすんのーーー!!?と何とかお猿さんを止めようと足に力を込めようとするが、他のお猿さん達が私の事を後ろから押す様に前に前にと走り続ける。
「ちょちょちょ!落ちる!!」
ぴょんっと私を引っ張るお猿さんが崖から飛び降り、私の身体も宙に浮いた
続けとばかりに他のお猿さん達も崖から飛び降り私は声にならない声で悲鳴を上げ、咄嗟に無重力の個性でその身を浮かせようとした時、
バサリと何かが私達をすくい上げる様にその背中で拾い上げた。
ギョエェエエエ!!と鳴くソレは昼間に見たブッサイクな鳥だった、しかもまじかで見ればコイツめっちゃデケェ!!
ウキキ、サンキューとブサ鳥に礼を言うお猿さん。後ろを振り返れば他のお猿さん達やゴリラさんもこのデッカいブサ鳥の仲間だろうか、その背に乗り崖の向こう岸へと羽ばたいていた。
「まじ…寿命縮むし……」
束の間の空中散歩の後、バサリと降り立った先は何か、神殿?の様な所だった。
神社の様にも見えるその場所をぐるりと見渡していれば、お猿さんがくいくいっと私の手を引っ張り、指を指す方へ視線をやれば古びた石でできた様な祠がある。
「…祠?鍵の光も、祠に向かって光ってる…」
ピーンと、その青白い光の線は真っ直ぐと祠に向かって光を飛ばしている。
祠に歩み寄ってみれば、その祠には小さな扉があり、そこには鍵穴が1つあった。
「鍵穴…え、これってもしかして…この鍵で開く…とか?」
お猿さんを見れば、皆んなうんうん!ソレで開けろ!と言わんばかりに鍵と祠を交互に指差している。
私は恐る恐る、その鍵穴にコルクさんから貰った首から下げている鍵を差し込めば
宝石から放たれていた光がフワッと消え、“ガチャリ”と鍵を回してその扉を開けた。
「あ、開いた…え?中を見ろって?ええーと…ん?何だこれ…腕輪…?」
王の輪だ!王の輪の持ち主が現れた!と、お猿さん達は騒いでいて
どうやら祠に入っていたこの腕輪らしき物は、「王の輪」と呼ばれるらしい。
まじまじとその王の輪とか言うものを見れば鍵に刻まれている紋章と同じ紋章がその腕輪にも刻まれていた。
しかし、何でまた…こんな無人島に…、と疑問を浮かべていれば一匹の年老いたお猿さんが私に近寄り、
「その腕輪は、とある高貴な一族の方々が作られた“王の輪”と呼ばれる物…何十年、はたまた何百年もこの島に保管されこの島の動物達に寄って守られてきた物じゃ…。
まさか…貴方様がその鍵を持ち現れるとは…これも運命じゃろうか…
人間のお嬢さんや…その腕輪は、肌身離さずお持ちなさい。
きっと、我々動物達が王の証を持つ貴方様をお守り致しますぞ…ホッホッホ」
お猿のお爺さんは、そう…私に言った。
「って、え?ふつうに喋ってるー!!?」
「ホッホッホ!それこそが、王の輪の力…!この世界中の!生きとし生ける動物達全てが!貴方様に御使い致します事じゃろう!我らが王よ!!」
王よ!王よ!と気がつけばお猿さん達以外にもあの不細工な鳥さん達や何処から現れたのか、リスやタヌキの小動物から見たことも無いサイの様な動物やヒョウやライオンらしき動物達が私の周りを囲み、その頭を垂れ私にひれ伏していた。
えええ…ライオンキングゥ…………!
世界の王様
はくなまたたとか歌えばいいですか…?