62せーんーっそ!
ふわり、と舞い降りたソコには驚きに満ちた顔のエースさんと、他数名。
その首に向けられた刃が許せなくて思いっきり二人程殴り飛ばしてやれば、あ…センゴクさん。居たんっすね!、と横目で確認したけど、私はセンゴクさんを気にすることも無く…エースさんの首に両腕まわしてその唇をガブリと奪った。
うん、お面が邪魔だ!
「………なまえ………おめぇ…」
「…やっほ、何、随分とイイ恰好してんね?」
そう言って、スクっと立ち上がり、周りを見渡した。
あーあー、これもう大乱闘じゃん。
くるっと、センゴクさんに向き合う。
わなわなと震えるセンゴクさんに私は、
「イナリ宅配、白ひげ海賊団エドワード・ニューゲート様よりご依頼頂きまして火拳のエースを引き取りに参りました。」
「………貴様、やはり海賊と繋がっておったか…それも…白ひげ!!!!」
「センゴクさん、ごめーんね。コイツ、返してくんない?」
飛んでくる拳をひょいと避け、その腕にちょこんとしゃがむ様に座った。
「メモリーよ、やはり…貴様、ただの“能力者”では無いな?」
「ふふふ、センゴクさん?女の子には…秘密があった方が魅力的でしょ?」
背後から飛んで来た気配を目視もせずゲートを数個開き、そしてお返しします、とばかりに飛んで来た攻撃を持ち主様への元へ返した。
「…あら、青キジさんに…黄猿さん、そして、どーも、赤犬さん。“落とし物”お返ししますね?」
氷塊と、光線と、マグマをそれぞれ飛ばして来た主の元へゲートを通して返せば…仁王立ちする3人のオジサマから熱い視線を頂いた。
ばっちゃんが隣に降り立つ。
鳥さん達が私の頭上を旋回し、港に居た動物さん達が一斉にお兄様達を背に乗せ鉄壁を飛び越えてマリンフォード内へと雪崩れる様に入って来た。
海兵さん達は驚き、そして慄く。
オヤジさんの仲間の1人、1人に動物さん達は寄り添う形でその傍に仕えて海軍の皆さんと対峙した。
私はセンゴクさんを解いた繊維で拘束し、エースさんの手枷を破壊しようと手を伸ばせば。
容赦なく大将さん達の攻撃が始まった。
どこからかルフィくんの「なまえ!!!!」と叫ぶ声がする。
ふわり、と瞬間移動で身を消して大将さん達を翻弄するかのようにひょいひょいと交わして、攻撃は全てワープゲートに吸い込ませ本部が佇む建物へと当ててやった。
「ほら、攻撃する度に本部の建物、壊れちゃいますよ?」
「メモリーちゃん。出来れば君とは仲良くしたかったんだけどねぇ〜、君、火拳とどういう関係なわけ?」
青キジさんの氷が私を襲い、ついつい、氷の力を前にすると出しちゃう燃焼の個性…。
「………なっ!貴様!!なぜ炎が!!!」
「センゴクさん…、ヒーローはね。一芸だけじゃ、務まらない。って、私の先生が言ってた、よっ!」
たぷん、と大きな水の塊を3玉。
「私、ずーっと思ってたんですけど。三大将さん達って、ほら。信号みたい?」
ふふ、っと笑った私の前には大きな水玉に閉じ込めた海軍の三大将。
「た…大将が………」
「三大将が………!!」
「「「三大将がやられたぁあああああ!!!!!!!」」」
「へーい、いっちょ上がりぃ〜」
ぱんぱん、と手をはたいて私はニヤリと笑った。
「センゴクさん、この人達。もうちょっと鍛えなおした方が、いいね?」
わぁああああ!!!って、その場が沸き立つ。
どよめき、驚き、喜び、色んな感情が混じりあった不協和音。ちょーうるせぇ。
ズドン!!って私に何かがぶち当たって、それを全身で受け止めれば。
「なまえ!!!!!おまえ!!!なまえ!!!つぇええええ!!!!!すんげぇええ!!!!」
「ちょ、ちょちょちょ、ルフィくん、ちょ!くるし!!くるし!!!!!」
身体にその腕をぐるんぐるんに巻き付けて抱き着かれるこの感じ!!!懐かしいね!!!くるし!!
そしてね!!ルフィくん!!後ろからね!!めっちゃ美人なお姉様が鬼の形相で走ってくんの!!!こえええ!!
「おのれぇ!!!!そなた!!わらわのルフィにぃいい!!!!!」
「ひぃいいい!!!!!」
ドガァアアン!!と蹴り飛ばされそうになったのを寸で避ければルフィくんが「ハンコック!!!」とそのお姉様の身をぐるぐるして引き留めてた。
「ええい!ルフィ!放せ!!いや、放さなくてもよい…、っは!いや!なんじゃ!あの女狐め!!わらわのルフィと…!!ほほほほ抱擁など!!!!許せぬ!!!」
どうやら、お姉様はルフィくんにホの字らしい…。
「えぇえ………、お、お姉様………、私、エースさんの、だから…」
ルフィくんとは、そういった関係じゃ…ねぇっす…。
「………なっ!!、そなた…その言葉…信じてよいのだな…」
「あ、はい、私、エースさんとデキてるんで、ええ。あれ、何か自分で言ってちょう恥ずかしいな?」
ジーーーっと私を、その美しい眼差しで見つめるお姉様が、スゥ、っとお美しい御手を差し出してきて。
私は戸惑いながらもその手に恐る恐る手を差し伸べれば、ガシっと掴まれた。
「ひっ!!」
「…ルフィの兄の恋人よ…わらわとは、いずれ姉妹になるであろうな。」
がっしりと握られた手は、この戦地の中にて“恋する乙女同盟”が誕生した瞬間であった…。
「「「「「えええぇええええええ!!!!!!!!」」」」」」
まさかの事態に皆が驚く中、ピン、と私の両腕に“何か”が巻き付いた。
「…ッチ!!」
瞬間、両腕が飛んだ。
ええ、もうズバッっと、ワイヤーで切られたかのように腕飛んでったよね。
「「「「っっっっなまえ!!!!!!!」」」」
「おいおいおいおい…嬢ちゃん、ココは戦地だぜ…?油断しちゃぁ、ダメだろ?」
フッフッフッフ、と厭らしく笑うグラサンピンクもふもふ。
脳内で動物さん達の激昂が感じられ、皆に大丈夫だから、と意識を投げかけた。
「…っ、オジサン、っ…、あーあー、っ、私の両手…もげちゃったじゃん…、っ」
いってぇーー…、と肘から下の無い両腕をだらんと垂らし、切断面からはだらだらと夥しい量の血が流れ落ちる。
オヤジさんや、マルコさん達が遠目で焦っているのが見えた。
大丈夫、だいじょーぶ、でも、ちょぉおーーいてぇえ!!
「次は、バラバラにしてやるか?」
ピン、と身体に何かぎ巻きつき、ピンクもふもふさんが私の顔を覗き込むように視線を合わせた。
ニヤリ、と笑ったのは私。
「オジサン…ごめん、後ろ後ろ」
「ーーーッッッ!!???」
ピシャ、って、面にオジサンの血が少し飛んできた。
「なっ、なっ…!!!??なんだぁああ!!この畜生共はぁああっっ!!!」
グルル…と低く唸る2メートルは優に超えるであろう動物さん達に、ピンクもふもふオジサンは全身を噛み付かれて血を流している。
私は浅い息を繰り返しながら…っち、ちょっと油断したな…。背後でバシャァって水が弾ける音がした。
ゴホゴホと水に閉じ込められた三大将さん達を解放してしまった。
くそっ、と悪態をつきながら落とされた腕の修復作業に集中した。
エースさんの叫ぶ声がする。
ごめん…もうちょい待ってて、すぐ…そのクソムカつく鎖、取ってあげるから、!
「オヤジさん!!!ごめん!!!大将さん達解放しちゃった!!!」
「ああっっ!!なまえ!!腕が!!!腕がぁ!!!!!」
「…っ、ルフィくん、っ!大丈夫!生えるから!!」
「っっっな!!!貴様…っっバケモノかっ!!!」
皆んなが私の取れた腕に錯乱し始めた頃…ごめんねぇー、ほんと私ってばチート極めちゃってっ!
“超再生”記録してんだよねーー!!!
「っし!生えた!!!、もー!!勘弁してよねぇーー!!っと!!」
たぷん。
「ねぇねぇ?能力者の人って、お水…苦手なんっしょ??」
ぽよぽよぽよ、と大きな水玉をたくさん作り出して宙に浮かせた。
「次は…誰を閉じ込めちゃおっか?」
ザンッッッ、
一太刀の斬撃が私を襲った。
「っうぉあっと!!…あっーーー!!!ローブ!!!お気に入りだったのにぃぃ!!!」
胸辺りから下をバッサリと切られてしまったローブがハラリ、と落ちた。
さっき腕やられた時に袖も持ってかれちゃったのにぃ!
もはやこれはボレロである…無念…。合掌。
「ほぅ…小娘、避けるか。」
青っ白い顔の大きな剣?刀?を構えたおじ様が私に言った。
私はおじ様から目を話す事なく、意味をなくしたローブ(ボレロ)をバサリと脱ぎ捨てれば…着馴染んだヒーロースーツ。
そして…
「あらあら…メモリーちゃん…あーた、それは無いわ。無い無い。あーあー、俺ァちょーーっと狙ってたんだがなぁ…」
「青キジさん…ロリコン??」
私の、お腹のシルシを指差して無い無い、と頭を抱えた青キジさん。
センゴクさんに至ってはもう怒り心頭でお顔まっかっか。
A C E 、と刻まれたそれは。私とエースさんがどういう関係かなんて一目瞭然だった。
「まさか…謎多き海の運び屋が、火拳の女じゃったとはなぁ!!!」
グッと拳を構えた赤犬さんが横から飛びかかってくる、前方は刀のおじ様…、フッ、と笑みを1つこぼして私は赤犬さんに向き合った。
ガキィィン!!と背後から刀がぶつかる音がする、
相棒、頼りにしてんぜ!
「お嬢!!!コイツァ、ワイが止めたラァ!!」
ばっちゃんはその足で刀のおじ様の攻撃を受け止め、私は赤犬さんのマグマゲンコツを素手で受け止めた。
そう、素手で。
「ッッッ化け物がぁ!!!」
「”衝撃吸収”頂きまぁす、そーんーでー!」
お返しだァア!
ドゴォォォッ!!!
派手な音を立てながら、赤犬さんは吹っ飛んでいく。
衝撃吸収、からの反射。
「ルフィくん!!!ここは私がやる!!エースさん!お願い!!!」
ぐぐっと、ルフィくんに手を伸ばせば、
「なまえ!!!!!わかった!!!」
パチン!と私の手に触れたルフィくん。
チラリと視界に入った、お兄様達がルフィくんを援護するように猛攻しているのに気づいた私は彼をエースさんの元へ向かわせるべくルフィくんの身をフワリと浮かせて、「ごめん!!」って思いっきりエースさんの元へと蹴り飛ばした。
「「「麦わらが浮いたぁあああ!!???」」」
「いっけぇえええ!!!!!!」
「グララララ!!じゃじゃ馬娘が!!オメェも行ってこい!」
「オヤジさん!!!!」
ガシッと身を掴まれたと思えば、私はオヤジさんにぶん投げられてルフィくんのあと覆う様にその身を宙へと投げ出された!
ハッとオヤジさんを見れば赤犬さんと対峙していて、浮かせたルフィくんの足元には、誰の能力だろうか…まるで紙をペロッと切り離したみたいに足場が真っ直ぐとエースさんの元へと繋がった!!
「うわぁ!!何だこれはァ〜〜!!!!?」
「カニちゃん!!!」
ルフィくんがカニちゃん!と言った声に反応して蟹!?誰やそれ!!って視線の方を見れば…あ、うん、バイカラーの蟹さんでした。
「ルフィ君ゆけ!!!!」
ありがとう!と、その勢いを止めないまま、捲れ上がりエースさんの元へと繋がった架け橋に足をつき、その瞬間私はルフィくんの無重力を解いた。
視線を上に向ければ、頭を床につけうなだれるエースさん。
だめ、だめだよ!エースさんにそんな格好は似合わない!!
「っっ!!!起きろぉ!!!!!!頭を上げろ!!!!前を見ろ!!!!!エースさん!!私が来た!!!!!」
「来たぞ〜〜〜〜〜〜!!!エース〜〜〜〜!!!!!!!!」
ルフィくんとかぶる様に声を張り上げてその俯いた顔を上げさせる。
「なまえ!!!ルフィ!!!!!!!!」
二人でエースさんの元へと駆け上がる、しかし、立ち塞がるはルフィくんのお祖父さんと言う将校さん。
「ここを通りたくばわしを殺してでも通れ!!麦わらのルフィ!!」
「いやだ!!!できねぇよじいちゃん!!!!」
ならばエースが死ぬだけだ!、と言うその人に
「ルフィくん!私が行く!!!」
ガッ、とルフィくんを追い越そうと駆け寄れば、ルフィくんの目には決意の炎が宿っていた。
これは、野暮かな…。
「うわぁああああああああああ!!!」
ドゴォオオオン!!!
「…貴様も、人の親だ…ガープ」
センゴクさんの、声が聞こえた…。
タン、…と、ルフィくんの足が、エースさんの元へ届き。
私は、センゴクさんと向き合う。
「…メモリーよ、貴様とは…もっと違う形で会いたかったよ。」
「センゴクさん…私は、私も…正義をこの背に背負う者。でも…この“世界”の海軍さん達が背負う正義は!!平和の象徴にはならない!!!」
私から大切なものを奪う者は、誰とて許さない!
ググっと力を込めれば、ずっと高みの見物かよ!ってくらい動かなかったセンゴクさんが能力を露わにした。
「っっ!!仏様ぁああ!!???」
その神々しい風貌に、思わず驚いたが…、何!ただの巨人!!!
ビリビリと、腕に力を込める。
チラリとエースさん達の方を見れば、なんか頭に「3」を乗っけた人がいた!だれだ!!おまえ!それより!、キッ、と仏の鉄槌を振り下ろすセンゴクさんを見据える。
「〜〜〜っっ!!!なまえ!!!!」
「エースさんっ!私ね!!約束守ってくれなかったの!怒ってるんだからね!!!!」
増強、増強、と腕に力をこめる…ボォウ、とその腕に炎熱の炎を纏わせ…平和の象徴、オールマイトの力を腕に込めた。
「誰一人として逃がさん!!!」
「逃げも隠れもしない!!私はヒーロー!皆んな守って!そして助ける!!!」
うぁあああああ!!!ってありったけの声で叫べば、グオォオオオオ!!!と動物さん達も一斉に咆哮を上げた。
空気がビリつく、大気が揺れる。
腕に纏わせた炎が、ボォオウ!!とさらに燃え、私は拳を突き出した。
「火拳ンンンンッッッー!!!すまぁぁっっっっしゅ!!!!!!」
「っっっ!!??何!!貴様ぁ!!!」
ドォオオオオオオオオン!!!!!!!!
真っ赤な炎が、処刑台を包んだ。
誰かの、息を飲む音が…鮮明に聞こえた。
狐火の向こうに
メラメラと、飛び出して来たのは3つの影