にななみ

「オラァアアアアアアア!!待て待て待てコラァア!!!!」

「待つのは貴女ですよ!!下がりなさい!!!!!!!!!」
「てめぇ低級のくせによくも七海に傷をぉおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!角ハイの錆にしてくれるぁあああ!!!」
「ガラスは錆びないけどね〜〜」

うるせぇよ灰原ぁ!!!
って今はお前に構ってる暇はないのだ!!

わたしはあの呪霊を何としてでもぎったんぎったんのめっちょめちょのばっこんばっこんのぐっしゃぐしゃにしてやるのだ!!

「七海の仇ィ!!!!!!成敗!!!!フンッ!!」

などと叫びながらわたしはとっつ構えた低級呪霊を手に持っていた角瓶で数度にわたり殴打し
暴行をくわえた。
殺意は認める。謝罪の意は無ェ。以上、現場からお伝えしました。

「っと、よし。テメェ二度とシャバに出れないように祓ってやっからな!灰原が。」
「僕かーい」



何ともない日常だった。

日課の屋上から愛を叫んで、今日は任務あるよーって現場に行って。

市街地からちょっと外れた森の中で見つけた低級呪霊。

戦闘になって間もなくして、あんちきしょーが暴れた時に飛んできた小石が七海の、七海の!!!国宝級の!!!手に!!!!当たった!!の!!!


「七海ぃ〜〜〜痛かったよね、大丈夫、わたしが痕残らないように完璧に治療するからね…」

だめだ、泣きそうだ。
鼻の奥がツンってする。

「いえ、痕どころか小石ですから。結構です。」
「だめだよ!!!!赤くなってるもん!ほら!!ここ!!!1mmくらい!!腫れてるじゃん!!」
「貴女の基準から見たら蚊に刺されたらとんでもない重症扱いですね。」

は?七海の血吸うとかわたしこの世から蚊皆殺しだよ?バーサーカーだよ?絶許だよ?

わたしの反転術式はまだ未熟で、大きなけがはきっと治せない。
宝の持ち腐れとか、欠陥品とか。沢山言われた。

だからせめて、どんなに小さな怪我も治して見せるって。


「よし、うん…七海、ごめんね…次は絶対わたしが守るから。」
「呪力の無駄遣いってこーゆうことだろうね!」

おい灰原ちょっとツラかせや。今そーゆう空気じゃなかったろ。どう見ても、

『有難う酒々井、まいすぃーとはにぃー…』って感じだったろ。じゃますんなばかちん。



「…守るとか、守らないとか」

「え?七海なんか言った??」

ぶわわーって木々が風に吹かれて、何たる失態!このわたしが七海の一語一句聞き逃すとは!!


「何でもありません。行きますよ。」
「あ!ちょ、まって〜〜!包帯巻かなきゃ!!!」

そんな大げさな、なんて七海はすたすた先に行っちゃって
灰原はたかだか小石で〜〜ってけたけた笑ってて、おめー灰原!おめー!

「灰原ぁ!!てめぇー!ハショーフーって知ってっか?七海がハショーフーになったら責任取れんのかぁ?ああん??!」
「禰寝ちゃん、破傷風って、漢字で書ける?」
「え!?あ、ほら、なんか、かめはめは!みたいな感じの漢字だろ?ばかにすんな?」
「わーーー、おバカさんがいるよ七海ーー」

「何を今更。いいですか?灰原。酒々井は救いようのない馬鹿ですよ?」


そっか、死んでも治らない奴だね!

って灰原てめーおぼえとけ!後でお昼ご飯攫ってやるんだからね!




1mmだって許さない



「ぶわぁ!まっぶしーー!しゃばだーー!」
「そんな広くないけどやっば薄暗かったねー、って、禰寝ちゃん血!」
「え?生理きた?」
「そうじゃなぁーーい!!ばか!」


血ぃ血ぃ騒いで煩い灰原に、慌ててスカートのお尻の方押さえたら違うそうじゃないって。

「…貴女は、…ハァ、」
「禰寝ちゃん!ぱっくり行ってる!!ぱっくり行ってるよ!足!!」

止血しないと!とか布!ハンカチ!とかあたふたする灰原が言う足もと見てみたら、
「わぁ。」

めっちゃふくらはぎばっくりいってた。

「いやー、どうりでなんか、足元ぐしょぐしょするなーって思ったわ!」

あははーって笑ってたら灰原にキッって睨まれた。あ?なんだこら?やるか?うけてたつ!

「おんなのこ!!」
「え?はい。見て分かるだろ麗しの乙女だぞ?」
「あーー!もう!」

ぐいって腰元に付けてるポーチを灰原が手荒に掴んで開けて、中から色々掻っ攫うから。
てめーなにかってに!!って一発ぶん殴ろうとしたら、ぺちん、ってほっぺに当たった。

「え、ななみ…?」

「女性でしょう。」
「あ、はい、雌です。」
「…守ると言うなら。無傷で守って下さい。」
「え、あ、…ゼンショ?します?」

はぁ、って溜息5トン。
スゥ…、

よし。吸ったった。うめぇ。うめぇ。ごちそうさま七海。






それよか、え?


「七海がほっぺさわってくれた…?」
「ビンタっていうんだよばか!!」

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