5舐めんな

JK生活2日目、今日はチヨさんと学校へ行き職員室にて相澤先生のお手を煩わせる事になって申し訳ないと思いつつクラスまで連れて行って貰った。

「…おまえ、いつまでも誰かに着いてもらわないと、ってぇのは…不合理極まりないぞ…」
「…ごめんなさぁい」

センセについてクラスまでくれば、初日同様一番乗りかなぁって思ってドアを開ければ八百万さんと轟君が既に席についていた。

「あれ、二人とも早いんだね。おはよー」
「みょうじさん、おはようございます」
「…おう」

カバンを机にかけて私は列から飛び出たお一人様席へと腰掛けた。

ぼう、っと頬杖をついて天井を眺める。八百万さんの本を捲る音が静かな教室に響いていて…この二人、いいな。って思った。うん、静かだし。
飯田くんとか、めっちゃ一番乗りしそうなイメージあったけど…そうでも無かったみたいだ。

目を瞑る。
昨日の校長先生との会話を思い出していれば、ガタ。と椅子の音が2箇所からして、物音に目を開ければ、

「「あの/なぁ…」」
「「あ、」」

八百万さんと、轟くんが同時に私の方を向いて話しかけてきた。

「あ…轟さん、すみません。お先にどうぞ」
「いや…そっちからでいい、」

いえ…。いや…。、ってお互い譲り合いしながらしどろもどろにしている2人がなんだか面白くて、ふふふ、と笑いが漏れた。

「ふふっ、お二人とも、それじゃぁいつまでも埒あかないやつじゃん?」

なぁに?2人とも、って、私は八百万さんと轟くんを両肘ついた手に顎を乗っけて尋ねれば。
まぁ、何となくそうかな?って思ってた通り。2人は私の個性に着いて聞いてきた。

何ができるのか、限界はあるのか、異形型にも身体を変化させれるのか…等々。
探究心が高いのか勤勉なのか分からないけど、無口なのかなぁ?なんて思ってた2人は意外にもおしゃべりだ。

ひとつひとつ、差し障りない程度に答えて。私も2人の個性について色々と聞かせて貰った。
だって、八百万さんの個性とかめっちゃ汎用性高いし。轟くんなんて半冷半燃とかめちゃつよじゃん?知ってて損はないし、多分これからめっちゃ使わせて頂きまぁすって感じだしねぇー。
そんなこんな、3人で個性談義に勤しんでいる間にちらほらとクラスメイトが揃ってきて。

相澤センセがHRをはじめて、んで午前中の普通科目に皆んな何処と無く退屈さを滲ませてお昼になった。

一人で教室から出たところで迷子になるのはわかり切ってたから、上鳴くんが飯行こーぜーって誘ってくれてこれ幸い!と着いて行き切島くんと3人でご飯したんだけど。2人とも私が食べる量にすっごく驚いてて、テーブルに並べられた食事の数々に周りの人もギョッとしてた。
ごめんよ…カロリー摂取が欠かせないんだ、この個性。

「みょうじって、アレだな。色々と想定外すぎるな?」
「えー?そーかな?」
「なんてぇか、“意外”ってのがしっくり来るかもな!」

「えー、切島くん、なにそれー」
「んーー、なんてぇか。見た目によらず意外に暗い!」
「おっ、俺もそれ思った!暗い、ってか、無口?」

みょうじってこっちから話振れば喋るけど、自分からはあんまり誰にも話しかけないよなー、って上鳴くんが言って。それに切島くんも賛同してた。

「あとあれ!ちょーケンカっぱやい!」
「それな!」
「爆豪と胸ぐら掴み会いながらメンチ切ってんのはやばかった!」

たしかにー!って、二人で盛り上がってて私はそれをご飯書き込みながら聞いてれば終いには小さいくせに飯の量がヤバイ。って話まで来て落ち着いた。

「みょうじリスみてぇー、そーいうとこちょーカワイイんだけどなぁー…」
もふもふと口いっぱいにご飯詰め込んでれば上鳴くんが他の所が残念すぎる…とめっちゃ失礼な事言うもんだから。奴の唐揚げ定食の残り1つの唐揚げを掠め取ってやった。

そんな感じで、賑やかなお昼を終えれば午後の授業。

ヒーロー基礎学。ヒーロー科において最も単位数が多い授業だ。

超、普通に、オールマイトセンセが入って来たのには少しツボった。
だって…ぷぷ、画風…やばっっ!

「早速だが今日はこれ!戦闘訓練!」

戦闘訓練かー、模擬戦とかやんのかなぁー。何て思いに老けていれば入学前に被覆控除制度で申請を出していたコスチュームが壁の収納から出てきて各々配られた。
めっちゃ滾るやつー!

ぎゅうって、コスチュームの入ったバックを抱きしめてニヤニヤとしてれば。斜め前の轟くんが何やら私をじーっと見てた様で、視線感じてふと見ればバッチリ目が合った。

何だ?って首を傾げれば、彼はフイッと前に向き直したので。私も対して気にする事なく、着替えが済んだらグランドβに集合だ!と、センセが言ったので皆んなで更衣室へ向かった。





「わっ、みょうじさんのそれ!狐のお面かわいーね!!」
「あら本当、鈴の飾りがとても素敵ね」
「てか、アンタそれ…スリットだいぶぱっくりいってるわね…」

麗日さんと、蛙水さんと耳郎さんが私のコスチュームを見て話しかけて来たのを皮切りに皆んなでお互いのスーツが可愛いとかセクシーとか…女子だなぁって感じに更衣室内は盛り上がった。

てか、八百万さん…え、やばない??そして…葉隠さんに至っては全裸…。

女子のコスチュームはしっかりと要望書かないとパツパツになる事とか、私のなんてパンツの両サイドにスリット入れろなんて一言も書いてないのに“チャイナと言えばスリット!”って、なんかスーツと一緒に入ってたサポート会社さんからの説明書みたいなんに一筆添えてあるし…色々と、衝撃でした、まる。



さすが雄英、って感じの模擬市街地での戦闘訓練。
今回の授業では屋内での対人戦闘訓練をするらしい。
ヒーローサイドと敵サイドに分かれての、設定は敵がアジトにて核兵器を隠してて。
ヒーローはそれを処理しようとしている。ってシナリオ。

チーム分けはくじ引きで決める。
そんで2対2でやるってオールマイトセンセは言ってるけど…

「センセ、このクラス21人だけど。どすんですかー?」
「ンン!みょうじ少女!それについてはだね…プロは如何なる状況でもその場その場で急速な判断を求められるからね!ちょっと意地悪だけど、チームのどこかが3人になってもらうよ!それもまた訓練!敵は待ってはくれないからね!如何なる状況下でも的確な判断を出来る様に、君達には頑張ってもらうからね!」


そう言ってセンセはクジ引きの箱を用意してみんな順番に箱の中に入ったアルファベットの書かれたボールを引いてった。

「あ、Dだ」
「あ”ぁ?」



バクゴーさんやないけ…まじか。








結果としては最悪だった。
もー、まじで、最悪の最悪。

爆豪と飯田くんと私で敵チーム
緑谷くんと麗日さんでヒーローチームの対人戦闘訓練。

渡された建物内見取り図は見た瞬間記録されるから問題ないとして、建物内の移動は…まぁテレポ繰り返すしかないよなぁ…と、半径数メートル圏内なら壁隔ててようが移動出来るので、そこはなんとかなるだろう。って、思ってた!ら!!!

爆豪!アイツ!!!!スタートの合図と共に単身飛び出して行きやがったの!まじクソオブクソ!!
残された飯田くんと「まじかアイツ!!」ってなってしばらく唖然としたよね!!

しょーがないから飯田くんと相談した結果、おそらくここには麗日さん単体で来るだろうと踏んで、飯田くんはフロアの核以外のものを全部綺麗に片付けてて。
私はあのクソオブクソをどうにか連携とらせねば!と、飯田くんに核を任せ私は近場のフロアから爆豪が居るであろう所まで経由経由で飛んでいった。

アイツの個性派手だから音ですぐ場所わかるな、と思ってた矢先…。

ドォオオオオオオ!!!!

って、もんのすんごい地響きと共に目の前が眩しい光と爆炎。
はい、爆発に巻き込まれました。


もうね、もう。ちょー痛かったよね。

意味わかんなくない?ヒーロースーツ、今日おろし立てだよ?
見る影もなくなったよね?私ボロ布纏ってんの。
ただでさえ布面積少なかったのが、更に少なくなったよね?しかも身体中火傷だらけでめっちゃ皮爛れてんの、クソじゃね?

あの爆発野郎…コレが本番だったら今頃核兵器爆発して日本死んでるぞ…?って、もう無理だったよね。

あンのヤロー!!!、って。爆豪見つけた時、アイツ緑谷くんに「てめぇは俺より下だぁ!」なんて言って緑谷くんぶん投げててさ。

すかさず爆豪ぶん殴り飛ばしたよね。
「そんならテメェは更にその下だクソがァ!!!!」って。

あの大爆発、モロに食らったのが私じゃなかったら死んでたぞ!!!

殴り飛ばされた先で「何しやがるクソ団子!!」ってめっちゃ爆ギレされたけど、アイツ一瞬私見て怯みやがったからね。
えーえー、貴様のせいで私全身大火傷っすわ!!よぉ見とけコラ!!

ボタボタって身体中から血が垂れる中、どんだけ緑谷くんキライなん?テメェ?ってアイツめっちゃ緑谷くんに噛み付くじゃん?なんなのお前たち、本当腹たつんだけど。
訓練だからって舐め腐りすぎじゃない?

インカムで飯田くんに通信しようにも爆発で飛んでったよね!!クソが!

双方いい加減にせぇよ!!って爆豪引っ張ってでも連れて作戦立て直さなきゃ!って私の考えは、今にも殴り合おうとしてる二人に、そして緑谷くんの「麗日さんいくぞ!!」って声に今いる所の真上が核ンとこだ!!って理解するよりも早く、シュンっ、って上のフロアに飛べば床から凄まじい衝撃と共に瓦礫が宙に舞って、柱抱えた麗日さんが彗星ホームラン!とかってマジでお前ら状況把握忘れすぎでしょ!!!って思ったよね!

核兵器だぞ!!??

「馬鹿どもがぁーー!!!!日本滅ぼす気かぁ!!!!」

バッと掲げた両手でスペースヒーロー13号の個性ブラックホールを展開して飛んできた瓦礫を核兵器を守るように吸い尽くした…が、あかんかった。
血ィ、流しすぎたし、身体中の大火傷を私の中の“超回復”の個性がフルで発動してた事もあってぐらりと視界が揺れた。

結局、麗日さんには核にタッチされちゃった、はい終わりちゃんちゃん。って。


「おおい!みょうじくん!!酷い怪我じゃないか!!ああっ麗日くんも!!」
「うぁーー……最悪、まじ、最悪、絶対勝てるやつだったのにぃーっ、爆豪あの野郎…っ!!」

キッと顔をあげれば、心配する飯田くんを他所に私は下のフロアへと飛んで。



「ばぁぁくごぉおおう!!!!!テメェ!!!舐めとんのか!!!ヒーロー舐めとんのかァ!!??あぁ!!??訓練だからって舐めとんのか!?あ”!?」

ガッと胸ぐら掴んで爆豪に馬乗りマウントポジションで思いっきり顔面殴りつけてやった。
バキッバキッって容赦なくぶん殴ってれば、何こいつ、なんでこんなに放心してんの?は?

「なぁ!!お前さ!!ハァっ、っ、ッ、状況わかってんの!?アレ!本物の核兵器だったら今確実にお前らここに居る全員死んだな?!っ、おい聞いてんのか!!ッハァ、っくぅっ、〜〜〜っくそが!……爆豪、ハァっ、私はね。人生かけてここにいんの。本気でヒーロー目指してんの。まじ、本当……ッ、足、ひっぱんないで貰えるかな??この戦い、アンタが勝手、っ…しなきゃ余裕で勝てたッ、その事、忘れんじゃ……ない、よ…」


あ、無理かも…。って最後に、私は爆豪にばたりと倒れ込んでだんだんと視界が霞むし、頭もシャットアウト寸前だ。


あー……やっぱこの超回復、私の意思とは反して勝手に身体治していくから…本当、疲れる、わ……。




ぼんやりと、オールマイトセンセの慌てたような声が近くで聞こえてた。

つーか、
震える手で私の背を触るくらいなら。最初からあんなバカな爆発させんなよ、って。
薄れる意識の中コイツに舌打ちをした。





つーかセンセ、あの大爆発ン時に止めてよねぇ…