悪い人と悪いお薬と猿ぐつわ

あれれ?

どうしてこうなった?の、です??


へろへろに力の抜けた身体に覆いかぶさる影。

わたしは今、そーちょーに…、ええ?!!

ふかふかのベッドがギシって軋みました……ああ、今日がミロの命日でしょうか…。





















毎度毎度、こういったお仕事の時に着せられるお洋服や…顔に塗りたくられるお化粧が苦手です。
だってお肌…あまり出したくないですし、口に塗られたてかてかも、べたべたしてどうも慣れません。


俗にいう“ハニートラップ”

きっかけは当時、わたしのことをあまり良く思っていない先輩のお姉さんからの嫌がらせで当てが割れたお仕事でした。
と、いうのはコアラちゃんから聞いたのですが、わたし…嫌われていたのですか…、とあの頃は結構落ち込みました…。


まぁ、そんなこんなで
男の方と…そういうコトを致すなんて…わたしはどうしていいかもわからないまま
あれよあれよと“女”を武器に着飾られ、気が付けば男の人に押し倒されていて…そしてわたしの何がそうさせるのか…、ぺらぺらと欲しかった内容のお話を息を吐くように仰るターゲットの方に、もう欲しい情報は頂戴しましたし!と、お洋服を脱がされそうになったところを思わず殴り飛ばしてしまったのをきっかけに、
とんとん拍子に進んだこともあり、その後も度々こういった内容のお仕事を充てられるようになったのが事のあらましです。


女性構成員といえど…、やはり、こういったえっちなお仕事は自らやりたいと手を上げる方なんて、滅多にいません。

今までも先輩のお姉様方が何人も、その…乱暴にされてしまい心を病んでしまった方や、望まぬ妊娠をしてしまったお姉様の姿を見て来ました。

わたしが、なんて。とても務まるとは思ってなかったですし…、でも、それがわたしの出来る事ならば、と。その思いで今までどうにかこうにか、運がいいのか何なのか、貞操を保ったまま
気が付けば暗殺とこのえっちなお仕事はわたし選任のような感じになっておりまして……

コアラちゃんは、いつも申し訳なさそうにわたしにお仕事を持ってきていただくのですが。
その度に、「本当にいいの?」と、

しかし、誰かがやらなければならない事だから、と。わたしは、わたしをあの真っ暗闇の中から助けてくれたこの人達、この革命軍の皆さんに少しでも恩返しができれば、と。

何事も、得手不得手がありますので。
そういうのは、出来る人がやればいい、と思っております。

それに、今の所、もうこのえっちなお仕事をするようになってから数年たちますが。
先輩方曰く、わたしはどうも見た目がおまぬけさんなので、そういった所に男の人達は油断してしまうみたいで。

わたしの事を、頭の悪いバカな女、と勘違いしたまま
いざ事を致そうとする前に何でもかんでも喋ってくれるのでとても助かります。

だって、事の最中に言われてしまっても、多分わたしはそこまで器用では無いので…。







今回のターゲットは、海軍の将校さんです。
この島のどこかにあるアジトまでのルートさえわかればこちらの後発隊の皆さんが突入にかかるので、わたしはそのルートを探り出すため、この悪い将校さんに助けを求めるふりをして、将校さん自らアジトまで案内して頂こうと言う魂胆であります!


この島で、陰ながら行われる奴隷を仕入れるための海軍さんと癒着した悪い人達の所業…、それにつけこんで、わたしは今回
身内からこの島を根城にする奴隷売買人へと売り飛ばされてしまった哀れな女の子の役です!

その人たちから命からがら逃げ仰せて、“たまたま”遭遇した将校さんに助けを求め、隠しきれていないその性根の悪そうなお顔に気付かないふりをして、私は将校さんに安心したようについて行くのです。



この人は、こうして女性や子供達を安心させてから、また奴隷として売人へと引き渡し、バックマージンで懐を潤わせている事はもう調査済み何ですからね!!!なんたる非道!下衆です!


「あの、将校さん…本当に、助かりました…、わたしっ、あのままじゃ…っ、」
「本当に運のいいお嬢さんだ、逃げ出した先に偶々、私が居て良かった!さぁ、怖かったろう、もう大丈夫だよ…、お嬢さんの様に、運よく助かった人達を保護している場所があるんだ、ひとまずはそこでゆっくり休むと言い、」

ぽん、と、軽くわたしの肩に手を添えて歩く将校さんについてゆけば、どこかの施設へと連れていかれ…、

「あの…、ここ、は?」

がちゃ、と開いた扉の向こうは、薄暗い部屋で。
パチリと付けられたランプは大して明るくも無く、両手を胸の前でぎゅうっと握りしめて恐る恐る将校さんに尋ねれば、将校さんは自分がお医者様の資格を持っているから、と
どこか怪我をしていないか、そう言ってこのお部屋で診てくれると言うのだけれど…


えええ…、どう考えても、これ、えっちな事かんがえていらっしゃいますよねぇ…!!!!
この人とてもスケベな方だ!どうしよ!まだアジトへのルートもわからないのにぃ!

さぁさぁと、私の腰元をするりと撫でる手つきに思わず鳥肌。

ちょっと、芳しくない状況にさてどうしようか、と…恐らくこの状況は作戦に参加している仲間の元へは伝わっているはずなので、この施設の外はもう包囲されている事でしょうし…、と、言うのも超小型の音声のみを拾う電々虫ちゃんを胸元に仕込んでいますので…ええ、どうせいつもお洋服脱がされる前にわたしがえい!ってパンチしちゃって相手の方、軽く死にかけちゃうので…。


とりあえず、ここは従うしかないですね…、と。このスケベ将校さんがわたしの事を頭の悪い女だと思っているようですし、

「ほら…怪我が無いか確かめてあげるから、おようふく、まくってみようか?」

「あ、えと…、はい…、」

わたしはおばかなおんなのこ。

こうやって、油断させておけば、この人は警戒しないって事は長年培った経験からよくわかる。

言われたまま、男の人に従えば。男の人達は喜ぶのだ。



するすると裾の短いワンピースを両手でたくし上げれば、将校さんはゴクリと喉を鳴らして私に近づいて来て。
こんな、男の人に下着を自ら見せるみたいに下半身を曝け出すわたしのおしりや太腿をいやらしく触ってくる手も…嫌だけれど、もう慣れたものだ…。


いや…、なれませんんんーっっ、きもちわるいですぅーーーーっっ
がまん!がまんするのよ!ミロ!!

「っひぅ!」
「ああ、すまないね、どれ上も、脱いでみようか?」
「あ、あの、わたし、その…、どこも怪我はしてませんから…、その、大丈夫、です。あの、それより…、この施設って…随分と広いみたいですが、他の方達は…?」

ピク、と眉を動かしたのが分かり。あ、ちょっとまずかったかな、って冷や汗が背中を伝ったけれど。
どうやらこの将校さん、随分おバカさんだったみたいで。

「…どうやら、怪我もなさそうだし。他の人が居る所へ向かおうか。さぁ、お嬢さん“皆の居る所”まで連れて行ってあげようね。」

またもや、ぽん、と肩に手を置かれて。

ちく、っと小さな痛みが走った。


「(あ。まずいですね、これ)」

優しい笑顔の裏で、非道な顔が見え隠れする将校さんの指にはめられた悪趣味な指輪。

仕込みギミックがあるのか、気づかないふりをしたわたしは髪の毛を耳にかけ、
耳元で揺れるピアスを少し弄り、開発部の皆さんが手掛けてくれた小型の映像転送装置のスイッチをいれたのです。


恐らくこれから連れていかれる所は例のアジトでしょう。


そして何かの薬か、毒か…、指輪を模したソレには細くて小さな針が付いていたのでしょうね。

「(はぁ、蜂さんに…刺されてしまいましたね、)」

十中八九、身体の自由を奪うであろう物に間違いはなさそうです…。












ふわふわと頭がぼーっとしてくる中、わたしは半ば将校さんに引きずられる様にして施設内を歩き
将校さんはもうこの状況になったわたしが逃げる事も出来ないと踏んだのか、懐から出した電々虫ちゃんで誰かに連絡をはじめました。
ほんとうに、この人はおバカさんですね。

「俺だ。頭の悪そうな女を一匹手に入れた、これから連れて行く。…中々の上玉だ、クク…どれ、どうせ汚されてく身なんだ、俺達で少し味見をしても問題ないだろう」

ーそりゃ楽しみだー

と、通話の向こうでは下品に笑う男の人達の声がして、ぶつりと切れた。



「ほら、これからイイ事をするからな…ああ、もう歩けないのかい?仕方のない子だ、どれ私が抱えてあげようね」
「ふぁ…しょーこーさん…なんだか、とても…あれぇ…?」


まだ、辛うじて歩けはしますが、ええ、ここは一芝居うちましょう!と、わたしは将校さんに身を委ねる形で横抱きにされて…、なるほど、これはいくら探しても見つからないわけですね。

アジトへの入り口はこの一見何の変哲もない施設内部の倉庫の様な一室。

立ち並んだ木箱の一つをズラせばあら不思議、地下へと続く階段があるではありませんか。

ばっちり、映像は送られているでしょうから
恐らくお外で待機している仲間の皆さんはもう此方へと向かっているでしょう。

あとは、当初の予定通り

この将校さんとアジト内にいらっしゃる悪い人達のお掃除をすればいいのですが…うぅーん、どうも頭がふわふわとするので、どうしましょうか。















ぼふ、と寝かされたのは少し埃っぽいベッドの上。

わたしを覗き込む数人の男の人は皆揃ってだらしのお顔で、身体を嘗め回す様に刺さる視線はあまり気分が良いものでは無いですね。

「おいおい、こりゃぁまた、好きな奴は好きそうな感じの女だなぁ」
「へへ、嬢ちゃん。恨むならこのろくでもねェ海軍のクズを恨むんだなァ?」

「おい口には気をつけろよ、誰のおかげでこの島で商売できてると思ってるんだ」


少々力の入らない身体をベッドに投げ出す様に仰向けで横たわるわたしの身体をぺたぺたと不快に触ってくる男の人達に、すぅ、と心が凪いでいきまして…そろそろ、仲間の皆さんはこちらへ来る頃でしょうか…、と

もう、いいですよね、?


「あの…とても、不快なので…手をどけて頂けますか…、?」

「「「あぁ??」」」

「痛いのはかわいそうなので、なるべく楽にしてあげたいのですが…どうやら少し、悪いお薬で悪戯されてしまったみたいで…、その、痛くしたらごめんなさいっ!!」


えいっ!、って

わたしに覆いかぶさっていた将校さんの横っ面を“あまり力の入らない”拳で叩いてあげれば、骨の砕ける音と共にお部屋の壁へ吹っ飛んでぶつかってしまい、壁には穴。

「て、てめぇ!!!何してやがぁあううああっっ!!!」

「ごめんなさい!」

慌てて飛びかかって来たもう一人の男の人を“ちょっと自由の利かない足で”蹴っ飛ばせば、ドアを突き破って廊下までさよならしていきましたので、

「あの、すみませんが…、ちょっと痛いかもしれないので歯を食いしばった方がいいと思います、」

そう言って、腰を抜かしてしまった最後の1人の方にベッドの上を四つん這いで這って床に座り込んだその人を見れば、まるで信じられないとばかりに驚きに表情を支配されていました。

耳に拾った慌ただしい足音に、ああ、仲間が乗り込んで来たな、とホッと胸を撫でおろす思いで
こちらへ地下づく足音に気を緩ませてしまって、

ついでにいよいよあまり言う事を聞かなくなってきてしまった身体に、今回のお仕事…上手くいかなかったな、って。







「ッ、ミロ!!!!!」

「…へ?」



バッ、と無くなってしまったドアの向こうから現れたのが、あまりにも予想外の方で呆けに取られていれば床に腰を抜かしていた男の人があっという間に視界から消えてしまって…って、ええ!ぽいって!ポイって!まるでゴミを捨てるかのように!!投げられた悪いおじさんが廊下通り越した向こうの壁に見事に刺さりましたよ!!


「お前、っ、お前いつもこんな事、っ!」
「わ、わあぁっ、え、えええ?そーちょー!!?」


ズンズン、ってすごく怖い顔したそーちょーがへろへろに力が抜けたわたしを掴み上げるみたいにしてベッドに仰向けにされたと思ったら、え、え、ええ、な、なんでぇ???っ








と、冒頭に至るわけでして…、いつもでしたら、こんな、こんなっ、ああっそーちょーってば今日もいい香りで…っ!
じゃなくて!!

「ひっ…っ!そ、そそそっそそーちょぉ…っ!」
「…………おまえ、何…言われるがままに、されてんだよ、っ」
「あ、え、ええ、えと、えと…、そ、そのほうが…その、男の人は、悦ぶでしょう…?。って、そうじゃなくて!!そそそそーちょー、ま、まさかっ、音声きいてましたねっ!」

うわぁあっっ!!恥ずかしくってミロはもう死んでしまいそうです!!
そしてなぜ今日は意識を…っ!ああっ、こんな!近くに、そーちょーのお顔があばばばばばっ!!!

「ひぅ、っ、あっ、あ、えと、その…きょうしゅくれすが、のいてくれりゅろ…あえ…うまくしゃべえら…」
「…………」

あれ、あれ、なんか、変、です。

あのチクリのせいでしょうか、一体全体、なんのお薬を仕込まれてしまったのか
人よりちょびっと力持ちなわたしでもさすがにもう、自力で起き上がる事も出来ない上に、呂律も上手く回らなくて。
頭はふわふわするし、視界も…なんだか涙腺がバカになってしまったのか水溜まりばかりでそーちょーがぐにゃぐにゃって、

「は、っ、はぁっ、あえ、?、っ、ぁ、なんれぇっ、っ、」

息が苦しい。

胸が、苦しい。

あつい、あつい、すごく、身体が熱い…っ、

どうした!?、と、そーちょーが身体を抱き起してくれた時、今までに感じたことの無い強い刺激が、触れた手のそこからまるで雷にでも打たれた様に全身を走っていって、

「ひぃぁっ、っ、そ、そーちょ、だめっ、さわ、さわらないれぇっっ…っっ!!」

「っ、おいっミロ?ど、どうしたっ、」
「ぁ、っ、あ、あつ、あつくてっ、くるしっ、ひぁっ、やらっ、そーちょー、やめ、」


やだ、やだ、こんなのやだぁ、

お願いだから、わたしから離れてどこかへ行ってくださいそーちょー、って、回らない頭と呂律で、必死に伝えたんですけれど、そーちょーには全然伝わっていないのか、潤む視界の中、そーちょーは凄くその素敵なお顔を顰めていらっしゃって、
ああ、ごめんなさい、こんな、わたし如きがそーちょーを困らせてしまってっ、ああ、もう消えてしまいたいっ!!


もぞもぞ、もやもやするお腹に、なんだか切なくなってあまり自由の利かない両足を力無く擦り付けていれば

「悪い、ちょっと、我慢してくれ。」

と、吐息が耳元で、

「っひゃぁぅっ、っぁっ、あっ、や、やらっ、さわ、さわらないっぁっんっ、」
「〜〜〜〜っ、お前ちょっと黙れ!」
「ぁ、っふぅっ、んんんっっ!!!」

ぎゅうっと抱き上げられた拍子に、全身を駆け巡るこのもどかしい感覚に、どうにか早く解放されたいのにビクビクって痙攣してしまうみたいに身体が震えてしまって、口からはだらしない声ばかりが漏れてしまい、
ああ、そうですよね、お聞き苦しいうえに、こんなお見苦しい姿を…!

ふもっ、ってお口にそーちょーが首元に巻いていらっしゃったあの素敵なスカーフを乱暴に突っ込まれてしまって、

黙れ!と、おっしゃったとおり、口いっぱいに詰め込まれたスカーフで鼻からくぐもった声しか漏れなくなったわたしをそーちょーは横抱きに抱えてお部屋を駆けだしていきました。


ああ、なんで、なんでぇ、っ、

いつもみたいに失神してしまえば、こんなもやもやと苦しい感覚から解放されるのにっ、


まるで、意識は失わせないとばかりに
そーちょーが触れた所からビリビリと変なのが全身を走るし、
わたしを抱えて駆ける振動だけで、なんか、もうっ、っ




「っと、ちょ!!!ちょっと!!サボ君!!!?え、ミロ!?どうしたのっ!?」
「コアラっ!!はぁっ、こいつ、なんかっ!盛られてる!!医者、医者って、ッチ!船まで戻るしかねぇかっ」


道中、コアラちゃんと会えたのですが、もうわたしはこの変な感覚を耐えるのに必死で口に突っ込まれたスカーフを噛みしめて、ぎゅぅっと目を強く瞑る事しかできなくって、ああ、こんな、お手を煩わせてしまってっ、


船へ、と、再び駆け出したそーちょーの腕の中でわたしはどうか早く、早くいつもみたいに、意識を失ってくれ、と。

そればかり、願っていました。


「んっ、んんっ、…っ、ふぅっ、ふっ、…っ」
「…っっ、」











もどかしさに頭がおかしくなりそうだ