授業終わりの休み時間の教室に、盛大なくしゃみが炸裂する。あーと唸りながらポケットに入れていたティッシュで鼻をかんでいると、丁度教室に戻ってきた虎杖くんが心配そうに声をかけてきた。
「霙さん大丈夫?」
「風邪ですか」
「うー、かもしんない」
使い終わったティッシュをゴミ箱に放り込む。特に意識してなかったけど、やっぱり地獄から現世に来た環境の変化は思った以上にデカかったってことか。あとこの間床で寝たせ……うっ、思い出したら頭が。苦い顔をしながら軽く頭を抑える私の考えを見透かすように、肩の上のキューちゃん――授業がある時はいつものクラゲ姿でいることが多い、今日もそうだ――が若干白い目で見てくる。やめてって。ちゃんと反省してるってば。
隣の席の釘崎ちゃんも頬杖をつきながら言った。
「風邪は引き始めが肝心って言うしね。しっかり治した方がいいわよ」
「だよねー 明後日大きめの任務入ってるし、それまでに治さないと……」
そこでふと思いついたように虎杖くんが訊ねる。
「鬼って人間用の薬効くの?」
「効かないよ」
私はしれっと答えた。主な身体の構造は鬼も人間も同じだけど、薬に関していえばそうもいかない。まあ単純に言えば、身体が頑丈なぶん人間用の少量の薬では効かないというわけだ。だからといって馬鹿みたいに飲めばいいというわけでもないところが面倒な点である。
私の答えを聞いた虎杖くんが少しだけ深刻そうな顔をした。
「え、じゃあヤバいじゃん」
「そーなんだよね……」
生憎ホモサピエンス擬態薬を持ってくることしか頭になかったせいで、鬼用の風邪薬はこっちに持ってきてないのだ。うーんどうしようかな……。
「……あ」
「? どうかしたんですか?」
「いや……」
伏黒くんが訊ねたのを私はつい誤魔化してしまった。
そうか、私の術式が利用できれば、ひとつだけ……手がないこともない。私が術式をきちんとコントロール出来るかにかかってくるが、上手くいけば確実に薬を手に入れられるだろう。だけど、正直あんまり使いたくないな……。
「どうしたのよさっきから」
不思議そうに釘崎ちゃんが訊ねる。無意識のうちに悩んでいたのが顔に出ていたようだ。私は浮かない顔をしているのを自覚しながらも白状する。
「薬の調達手段……あるにはあるけど、正直めんどくさいなって」
「めんどくさいって……でもそれで悪化してたら本末転倒でしょ」
「だよねぇ……」
釘崎ちゃんの正論に私はため息をつく。この際仕方ないか……背に腹は代えられぬってやつだ。
「それで? その手段ってどんな?」
何か手伝えることあるなら手伝うよ?と虎杖くんは言う。うーんいい子。私は小さくため息をつきながら、珍しく本来の使い方をしていた赤い耳飾りに触れる。
「あんまり気乗りしないけど……あの人を、呼びます」
***
「それで僕が呼ばれたってことかぁ」
「まあ概ねそんな感じです」
目の前にいる男――白澤さんはむふふと目を細めながら満足げに笑った。
因みに現在地は教室ではなく、この間鬼灯様を召喚した部屋だ。
これはつい最近知ったことなのだが、高専の敷地内に未登録の呪力を持ったものが現れると校舎中に警報が鳴り響くらしい。キューちゃんとゴロちゃんは私の呪力が多少は流れているため使役とみなされ、センサーにギリギリ見逃されているのだとか……いや結構センサー緩くない? 大丈夫??
前に鬼灯様を呼び出した時は事前に五条さんが学校側に連絡を入れてくれいたらしくなんともなかったが、今回はそうはいかない。そこで事前に事務室へ行き、そこにいた事務員さんに許可を得たうえで彼を呼び出したのである。
「いやー急に『15分後に呼び出すので鬼用の風邪薬を持ってそのまま立っててください』って電話が来たときは何事かと思ったけど……まさか霙ちゃんがこんなことできるようになってたとはね!」
「すみません、どう言ったらいいかわからなくて」
「いいよいいよ〜 霙ちゃんの呼び出しなら大歓迎さ!」
はい薬、と白澤さんは持っていた紙袋を渡した。見慣れた極楽満月のロゴを見て「ありがとうございます」と素直に受け取る。その一連のやりとりを見ていた子どもたちが興味津々といった感じで訊いてくる。
「この人が白澤さん?」
「うん。天国で薬剤師をやってる中国神獣の白澤さんだよ」
私が紹介するといつもの軽薄笑みを浮かべながらな你好〜とひらひら手を振る白澤さん。その軽い調子を見た伏黒くんが確かめるように私に尋ねてきた。
「白澤……って中国神獣の長とか呼ばれてる、あの白澤ですか」
「一応」
「一応ってなんだよ。僕は正真正銘、吉兆の印だって!」
もー!とわざとらしく頬を膨らませているがこの男、億越え老人である。いい加減自分の歳ってもんを自覚してほしいんだよなこのおじいちゃんめ……。
すると白澤さんを見た釘崎ちゃんがへえ、と楽しそうに微笑んだ。
「事前に聞いてた時はどんな人かと思ったけど……なかなかのイケメンじゃない」
「霙ちゃん僕のことなんて説明したのさ」
「『腕だけは信用できる
「辛辣だな〜 ま、そんなところも好きだけどね〜」
はははと笑っているが傷付いた様子は見られない。私から白澤さんに対してはいつもこんな感じなのですっかり慣れてしまっているのである。そんな中、いつものように流れでしれっと私に好意を伝えるのを見た釘崎ちゃんがちょっと悪戯っぽく笑う。
「霙さん……まさか白澤さんって」
「いや、私と白澤さんは」
「そうなんだよ! 僕ら超ラブラブでさ〜」
弁解しようとした私を他所に、肩を組みながら悪ノリする白澤さん。それを見て一気に色めき立つ子どもたちの視線に耐えられず、私はたまらずぐいと押し返す。
「嘘教えないでくださいよ嘘を!! 一応言っとくけど私と白澤さんは何もないからね。ただの知り合いです」
「なんだ、修羅場かと思ったのに」
「オイ」
なんておそろしいことを言うんだ釘崎ちゃん! というかだんだん遠慮が無くなってきてない?!? 愕然とする私に、白澤さんは不満げに唇を尖らせる。
「知り合いだなんて酷いなあ。こう見えても僕はずっと君にアプローチしてるつもりなんだけど?」
「でもあんた、遊べる女ならなんでもいい軽薄馬鹿でしょ? 普通にヤですよ、そんな尻軽野郎なんて……」
「ええー 一晩遊んでくれるだけでいいのになぁ」
「だからそれが嫌だって言ってんでしょうが!」
睨みながら大声で訴えるが、本人はどこ吹く風だ。いい加減諦めてくれればいいのに、懲りないんだから……。
「というかくっつくの止めてください!」
「いーじゃん、僕と君の仲でしょ」
「どんな仲だよ!!」
つか正直もう用は済んだので帰ってくださいよ! ええ〜? 折角だし現世デートしようよ〜 お断りします!! 私は勢い良くツッコみながら白澤さんを引き剥がすが白澤さんも簡単に引き下がるつもりはないようだ。いつの間にか背後に回り込んで首辺りに手を回してさり気なくバックハグをかましている。
「ちょ、マジで止めてください!! こんなことしてたらあの人が――」
「おい、離れろ軽薄男。俺のものに許可なく触れよって……殺されたいか」
「あーやっぱり……」
虎杖くんの頬に現れた口とひとつ目に私はすっかり頭を抱えてしまった。うん、ものすごく面倒な流れになる気配しかしない……。宿儺さんと初対面である白澤さんはあからさまにゲッとしたような顔をしながら少し身を引いた。
「うわっ! 何あいつ。妖怪?」
「こっちの世界の両面宿儺さんです。今は訳あって呪霊になって、虎杖くんに受肉してるんですよ」
「両面宿儺……なるほど! お前があの闇鬼神の言ってた"彼"か!!」
宿儺さんを指さしながら不機嫌そうに白澤さんは叫ぶ。聞き捨てならない単語が聞こえた私は思わず訊き返した。
「鬼灯様が……って、何のことです?」
「この間地獄に顔出した時にさ、霙ちゃんが最近いないからどうしたのかなーと思ってたんだよ。そしたらあの闇鬼神がしれーっと『霙さんは色々あって春が来たので、今は現世で"彼"と仲良く暮らしてます』って言いやがって!!! それ聞いて僕びっくりしちゃってさ!!!!」
「鬼灯様マジで何言いふらしてくれてんの!?!!?」
電話でも聞いたけど、なんで上司が率先して部下の噂(若干内容盛り気味)をバラまいてんだよ!! それを聞いた宿儺さんは「ほう、あの鬼神よくわかっているではないか」となんか機嫌が良さそうだった。あんたねぇ……。これには子どもたちも流石に若干白い目になっている。
「僕が先にアプローチしてたのにさぁ、ぽっと出のどこの誰かもわかんない奴に取られるとか最悪じゃん??? それから僕ずーーーっとその事ばっか考えてたんだよね!!! 仕事もまともに手につかないくらい!!!」
「いや仕事はしてくださいよ」
桃太郎さんが可哀想すぎる。というか、だから電話したときすごい問い詰められたのか……。薬の調剤頼むために電話したら開口一番『今霙ちゃんどこで何してるの!?!?!』ってどこかで聞いた曲の歌詞みたいに問い詰められたんだよな。
「それで現世に来たら絶対そいつを見つけてやろうって思ってんだけど……まさかこんなやつとは思わなかったなぁ」
白澤さんはずかずかと宿儺さんに歩み寄ったかと思うと、人を馬鹿にするような目でじろりと見る。その視線を受けた宿儺さんが心底不機嫌そうに言った。
「許可なく俺を見るな、不愉快だ細目男」
「失敬だなぁ、たかだか呪いごときが中国妖怪の長である僕に歯向かう気?」
「いやあの白澤さん、この人は」
現世じゃ結構有名な方で、と私が言うよりも前に宿儺さんが吐き捨てるように言った。
「ハ! 偶蹄類風情が。そうやってふんぞり返っていられるのも今の内だぞ」
「カー!! ムカつく!!! こんなひねくれ陰湿野郎のどこがいいのさ!!! こんなのよりも僕の方が数億倍いいでしょ!!!」
「えっと」
「そっくりそのまま返そう。貴様のような軽薄尻軽男のどこがいいんだ。貴様に惚れる女の気が知れんな」
「ハアァァ???? お前、1万歩譲って僕を馬鹿にするのはいいけど、女の子を馬鹿にするのは許さないからな!!!??」
「えっ、怒るとこそこなの?????」
いやマジで。
どんどん白けた目になっていく私たちを他所に、ふたりはますますヒートアップしていく。
「ちょーーーっと霙ちゃんと一緒にいたくらいで彼氏ヅラしちゃってさぁ!?」
「彼氏面? 当たり前だろう、俺とこいつはいずれ夫婦になる約束をしているんだからな」
「は?? 何それ僕知らないんだけど????」
「オイこらそこ、勝手に記憶を改ざんしない!!!!」
というか私も知らんわそんな約束!!!!
すると白澤さんがぐいっと私をこちらに引き寄せる。
「でも残念でしたぁ〜〜!!! 僕はもう500年も前から霙ちゃんにアプローチしてるから予約済みなんですぅ〜〜〜〜!!!! それに見てほら!!!!」
得意げに肩を組みながら指さすのは私の耳についたピアスだ。げっ、つけっぱなしだった。
「僕が贈ったオソロの耳飾りを気に入ってつけてくれるってことはさ、実質両想いでしょ!?! ハイ僕の勝ち!!!!」
「いやこれはたまたまつけてただけで……」
あと白澤さんをここに召喚するための触媒用ね。……というかさらっと流しそうになってたけど勝ったってなんだよ、いつの間に勝負になってんだこれ。
すると白澤さんが何かに気付いたようにふとピアスに触れる。
「……あれ? 霙ちゃん、これに何かした?」
「あー なんか白澤さんの呪力が籠ってたので五条さんに抜いてもらいました」
「抜いてもらったぁ!?!」
私の言葉に白澤さんはすっかりショックを受けたようだ。ガーンと背景に書き文字が現れそうなほど悲壮感の漂う顔をしている。
「僕が霙ちゃんの為を想って誠心誠意魔除けの術を刻んだのに……」
「いやーなんか、私と白澤さんって(呪力的な意味で)相性が悪いみたいで。術式が上手く作用しないからって……」
「そんな……」
「なんかすみません」
「酷いよ霙ちゃん。お詫びに付き合って」
「こらこら」
確かに勝手に呪力抜いたのは謝るけど、今そんな話全然してなかったでしょー??
すると一連の流れを見ていた宿儺さんは馬鹿にしたように鼻で笑う。
「言い寄っている割にこのザマとは……無様なものよの」
「ぽっと出のお前に言われたくなんかねーよ!!!!」
「ぽっと出とはなんだ。俺は1000年も前からこいつのことを好いているんだぞ。ならば、惚れた時期という点では俺の勝ちと言えよう」
「だから勝ちってなんですか勝ちって」
「ハア???? 早く会ってたからってなんだよ、僕は霙ちゃんが地獄で働いている姿だって知ってるんだぞ!!! お前は知らないだろうけどな!!!!」
「それこそ貴様はこいつが呪術師として戦う姿を見たことが無いだろうが」
それに、と宿儺さんは言葉を切る。
「500年前に会っているということは、貴様は知らんのだろう? こいつが幼い頃の姿を」
「は?? ま、まさかお前……!!!」
ハッとした表情を浮かべながら言い淀んだ白澤さんを、宿儺さんはここぞとばかりに嘲笑う。
「ああ、実に愛らしかったぞ。貴様が他の女に鼻の下を伸ばしている間にもう二度と見られなくなってしまったがな」
「カァ〜〜〜〜〜〜!!!!! ムカつく!!!!! あの闇鬼神と同じくらいムカつく!!!!!」
叫びながら地団駄を踏み始める白澤さんと、それを見ながら勝ち誇ったように高笑いする宿儺さん。そしてそれを白けた目で見守る私たち。
……どこからどう見てもカオス以外の何物でもない状況だった。
「ナニコレ……」
「醜い争いだね……」
「きゅ……」
口論に夢中になっている隙をついてそっと彼らから距離をとる。ずっと傍にいたキューちゃんゴロちゃんも、これには言葉を失っているようだ。いつもならキューちゃん辺りが真っ先に突っかかっていきそうなもんだけど、流石にアレに混ざろうとは思わないらしい。懸命な判断だと思う。ふたりともこの2匹を見習ってくれないかな……。
対するふたりはといえば、こちらを置いてけぼりに口論を続けている。すると不意に宿儺さんが切り出した。
「既に圧倒的な差だが、駄目押しだ。俺とお前の決定的な違いを教えてやろう」
「は? なんだよ」
不機嫌そうに眉を寄せる白澤さんに、宿儺さんは真剣な様子で言った。
「俺たちはひとつ屋根の下で暮らしている(寮的な意味で)」
「ひ、ひとつ屋根の下(寮的な意味で)……だと……!?!?!?」
「いやそれ厳密に言えば違うからね??? 男子と女子で棟分かれてるから」
ショックを受けたような顔をする白澤さんに、私は静かにツッコんだ。誤解を生むんじゃないよ誤解を。流石にこれ以上は見ていられない私は、醜い言い争いを止めるべく不本意ながらも口を挟むことにした。
「ちょっとふたりとも、そろそろこの辺にしといてくださいよ。恥ずかしいったらありゃしない……」
「なんだよ、僕よりもこいつのほうがいいってわけ!?」
「いや決してそういう意味でなく」
「そうだ、言ってやれ小童。とっくに俺のものになっているからお前はさっさと失せろと」
「えっと」
「うーわ出たよ。独占欲キッツ〜〜 重すぎる男は嫌われるよぉ?」
「黙れ、貴様のように軽薄すぎるよりはマシだ」
「軽薄って言うなよ、フットワークが軽いって言え!!!」
「大して変わらんだろうに」
「あ˝??」
そしてまた口論が始まってしまった。私は思わず額を抑える。なんでそんなふたりとも沸点低いの……。
「ものの見事に修羅場ね」
「間に挟まれた無関係な虎杖が哀れだな」
「うん……」
各々の感想を述べる釘崎ちゃんと伏黒くんに同意する。確かにアレの間に挟まれてなんとも言えない顔をしている虎杖くんが一番の被害者だろう。本当に、いつもいつもごめんね虎杖くん……。
「で? 肝心の霙さんはどっち派なのよ」
強いて言うなら?と釘崎ちゃんが身を寄せながら声を潜めて尋ねてきた。本当にイマドキッ子は恋バナが好きだなぁ……。私は腕を組みながらチベスナ顔をする。
「私は別に……」
――『いくな』
否定しようとしたところで不意に、この間の出来事が……宿儺さんの言葉が脳裏に過る。
……いや、あれは違うから。確かにドキッとはしたけど、そういうんじゃないからね? いやマジで。ホントだってば。ここに来た原因を……高専に来た目的をお忘れか???
ごちゃごちゃと脳内で考えていると、言葉が途切れたのを不思議に思ったらしい釘崎ちゃんが「別に?」と急かしてくる。私は考えていたことを悟られないよう、気を取り直して言った。
「強いても何も、どっちもなしかな」
「ええー? つまんないわね」
つまんないってなんだ、つまんないって。私はただ自分の気持ちに正直になっただけですぅー
「なんか面白いことになってんねー」
「! 五条先生」
不意に背後からかけられた声に伏黒くんは驚いたように言う。かくいう私もちょっとびっくりした。いや急に背後に立つなよ……。今日は1日任務だと聞いてたけど、早めに終わったので帰ってきたらしい。ざっと部屋を見回し、未だに口汚く罵り合うふたりを見て五条さんは尋ねた。
「これどういう状況?」
「天国から来た中国神獣の白澤さんと宿儺が霙さんを巡ってガチ口論」
「うわカオス」
釘崎ちゃんの状況説明にウケるね、とカラカラ笑う五条さん。マジで他人事だと思いやがって……。
「それで? 肝心の霙ちゃんはどっち派なの?」
「釘崎ちゃんにも言ったんですけど。ぶっちゃけどっちも無いですねー」
というか、あんなに我を忘れて口喧嘩するようなご長寿さん(1000歳オーバー&億越え老人)達なんて普通に嫌でしょ。もうちょっと周りが見える落ち着いた人がいいです(遠い目)
すると五条さんが何かを思い付いたようにじゃあ、と提案をしてくる。
「間をとって僕なんてどう?」
「いやそれはそれでちょっと……つかどこが間なんですか」
彼らの間をどう取ったら五条さんになるの???
そんなやりとりをしていると、ようやく周りの状況がわかったらしいふたりがこちらを見て猛抗議してきた。
「なんだよお前!! お前もちゃっかり霙ちゃん狙ってんのか??!!? 抜け駆けしてんじゃねーよ!!」
「不愉快だぞ呪術師!! お前も今ここで殺してやろうか!!」
「わー修羅場。モテモテじゃないの霙ちゃん〜」
「面白半分で焚きつけないでくださいよ……」
んじゃ僕学長に呼ばれてるから〜と言い残し、五条さんはさっさと出て行ってしまった。あいつ……言うだけ言って逃げたな……。苛立ちが収まらないらしい宿儺さんが不機嫌さを隠すことなく吐き捨てる。
「まったく持って埒が明かんな……」
「ハ! ならそっちが諦めたらぁ???」
「フン。小童を貴様に渡すくらいならいっそ俺が殺した方がマシだ」
「何その思考回路こっわ」
身の危険を感じた私の背筋が震えあがる。突然の激重発言はこちらのメンタルによくないぞ!!! やめなさい!!!
すると宿儺さんは名案だとばかりにある提案を持ち掛ける。
「こうなったら実力で勝負をつけようではないか。小僧、身体を貸せ」
「え、マジでやんの!?」
思わぬ展開に慌てたように虎杖くんが声を荒げる。
「は! 望むところだね! 勝った方が霙ちゃんと付き合う!!! !」
「上等だ。格の違いというやつを見せつけてやろう」
ケヒヒ、と愉快そうに笑う宿儺さん。あ、これは流石にアカンやつや。そう思った私は咄嗟にふたりを止めに入る。
「駄目です宿儺さん!! このスケコマシ神獣ですけどセンスゼロだから呪術なんてほぼ使えないんですよ!?!?」
「黙れ。言っても効かんのなら実力で黙らせてやればいいだろう」
「白澤さんもです!!! 宿儺さんとやり合ったらの貴方でも死にますよ!!!!」
「はん! 僕だってこう見えても吉兆の神獣だよ?? こんなひよっこに負けるわけないじゃん!!!」
「知ってますか!?!?? 世間ではそれをフラグって言うんです!!!!! ちょっと!!!!! 白澤さんステイ!!!!! 戻って!!!!!!!」
誰かこの馬鹿ふたり止めて!!!!!!!
私の悲痛な叫びが校舎中に響き渡った。
キャー私のために争うのはやめてー!な鬼獄卒
→この後なんとか白澤を引き留め天国に強制送還することに成功するが、その結果熱が上がる。貰った薬を飲んで一日寝てたら普通にばっちり治ったので「マジで腕だけは信用できるんだよな……スケコマシだけど……」と遠い目になった。
嫁的な意味で欲しい呪いの王
→白澤をあの世に帰してからもしばらく機嫌が悪い。多分霙にめちゃめちゃウザ絡みする。体調悪いなら看病してやろうって虎杖に主導権を要求するけど、虎杖の努力もあって結局取り返せないまま別れるので次の日まで地味に機嫌が悪い。
先に目を付けてたのは僕なんだけど!?な神獣
→お前絶対許さないからな!? この後無事に天国へ強制送還され、「なんで僕を帰すわけ!?」とばかりに霙に鬼電しまくって見事に着拒否される。そして霙からの迷惑報告を受けた鬼灯にカチコミされるまでがセット(セット?)。
面白半分で漁夫の利を試みた最強
→ふらっと現れて、言うだけ言ってマジでどっかに行った奴。出番一瞬だったくせに状況ひっかきまわすとか害悪じゃないか。漁夫の利を試みたのは完全にノリ。霙に対して今のところ恋愛感情は一切ない。面白……可愛い生徒のひとりって感じ。
呪霊コンビ(遠い目)
→ご主人様大好きだけど、流石にあれはねーわ……と呆れた目になってる。懸命な判断。
一年ズ(遠い目)
→正直途中から置いてけぼり感が否めなかった。仕方ないね、まさかこんなことになるとは思わなかったんだもんね……。なんだかんだ言って今回の一番の被害者は虎杖だと思う。後で霙がお詫びに美味しいご飯に連れて行くらしい。
次回、「呪いの王直伝!マンツーマン反転術式レッスン」
お楽しみに!