01

翌朝、ローくんとの二度目の連絡を取った。
向こうはなにやら慌ただしそうでゆっくり話はできなかったけど、おはようって言ったらおはようが返ってくるので満足だ。
今まで当たり前に交わしてた挨拶が、こんなにも大切に思えるなんて意外だったな。

貨物船は島に停泊中なので、おれは食品や暇つぶしの本なんかを買いに島へ降りる。ひとりは気楽で好きだ。でも、ベポくんが隣に居てくれたら楽しい。シャチくんやペンギンくんも。それから、ローくんも。はやく、またみんなでご飯が食べたいし、買い出しにも行きたいな。
そんな日が早く来ますように。



ローくんがパンクハザードへ発つと言った日から数日が過ぎると、次第に連絡が取りづらくなった。向こうも向こうで忙しいようだから、心配しすぎたりはしない。ただ彼が無事であることを祈り、おれは船旅を続ける。

「もしもし、おれだよ」
『着いた。おはよう』
「おはよ……分かった。気をつけて」
『連絡にもムラが出そうだ』
「こっちもそろそろ着く頃だからお互いさまだね。一応、夜だけにしよっか」
『ああ』
「じゃあそれで。またね」
『……ああ。また』

日毎に簡潔になるやり取りはやっぱり寂しい。だけど互いに何処で誰が聞いているかわからない以上仕方がない。声が聞けるだけ幸せ者だ。
そうして貨物船の旅を終えて降り立った港には、見知った姿があった。

「…………驚いたなあ。迎えだって言うから、ベビーとかバッファローが来るのかと思ったよ」

まさかとは思えど、よくよく見るまでもなくドンキホーテ・ドフラミンゴのその姿。目立ちすぎる桃色のコートを海風に遊ばせながら、涼やかな足音を立てておれの方に歩いて来る。

「よく戻ったな、ニア」
「……ドフィ」

ちゃんと顔を合わせたのは一年と数ヶ月ぶり。
マリンフォードではひと目見ただけだった。両手を広げておれを待つドフィはにんまり笑っている。それなら取るべき行動はひとつだけ。

「おかえり」
「……ただいま」

その腕の中に飛び込んで、無性に泣きたくなる。

「びっくりした! なんで」
「可愛がってる猫がやっと帰って来たんだ。迎えに行くのは当然だろ?」
「そういうの、簡単に言っちゃうんだからな」

おれの身体を離したドフィは、その大きな身体を屈めておれの頬にキスをする。くすぐったい。おれも挨拶にと唇を寄せておいた。
全てはローくんのため。ローくんのために、ローくんへの気持ちを押し込めなくちゃならない。分かってたけどこれはなかなかにキツいものがある。

「近くにうちの船をつけてある。飯でも作らせよう」
「ん。ありがとう」
「……ニア」
「なに?」
「おれはお前に会いたくてたまらなかった」
「はは、おれを喜ばせるのが上手だね、ドフィ」

そんなやり取りをしながら、ふたりで船まで歩いた。久しぶりに会ったドフィが纏うオーラってやつはやっぱり凄まじい。
隣を歩くのが億劫なほどだ。

「背、伸びたか?」
「わかる? そう。百七十五センチくらいある」
「ちいせェな」
「ドフィと比べたらそりゃね」



それから数時間、おれはドレスローザに辿り着いてしまった。分かってはいたものの、いざ戻って来てしまうとなんとも言えない無力感に襲われる。結局おれには自由なんてなくて。自分で選んだはずの居場所からも、一声かけられただけで連れ戻されてしまう。
花の香りと美味しそうな料理の香りも、いまはただおれを追い詰めてくだけだ。

「どうした」
「……久しぶりだなあと思って」
「懐かしいか?」
「なんだか知らない場所みたいに見える」

王宮までの道を歩いていくと、道行くひとには次々と声を掛けられた。ドレスローザの王さまが出歩いていることもあるし、顔見知りの友人たちはしきりにおかえりと言ってくれる。

「大人気だなァ、ニア」
「顔だけは広かったからね」
「妬けちまう」
「ドフィ、お城の外だよ」

寄せられる顔をぐいっと押しやる。気恥ずかしそうな顔を作るのも忘れない。

「帰ってから、か? 焦らすじゃねェか」
「まったく……まだまだ若いんだからなあ」
「二十二を相手にしてんだ。気も若返る」
「あはは、おじさんみたいなこと言わないで」

心にひとつずつ蓋をしていく。ドフィと居るのは、ローくんのためだ。ローくんが果たすべき目的のため。そしておれが過去を清算するため。
刺激してはいけない。勘繰られても怪しまれてもいけない。いつ解放してくれるの?なんて尋ねてもいけない。ただ、ここを離れる前の生活に戻るだけだ。ドフィのいちばんのお気に入りたる役目を果たす。やり過ごせたら帰る場所がある。だからいまは。いまだけは。

「みんなに挨拶もしたいから。暗くなるまで待って」

この身だけは、ドフィに委ねるしかない。


   ◆


その日の夕食は盛大なパーティーになってしまった。ご機嫌なドフィがおれのそばを離れないもんだから、ジョーラも上機嫌でコックにあれこれ指示を出してたし、バッファローもどさくさに紛れて食べたいもののリクエストを通してたし。

浴びるようにシャンパンを飲み続ける面々を見て、おれを口実に酒を飲みたいだけなんだろうなあと思う。おれもドフィの隣に腰を下ろして、ゆっくりゆっくりお酒に口をつけていた。

「ニア、口にチョコがついてるだすやん!」
「んあ? どっち?」
「あら本当! ナプキンナプキン……!」
「ベビー、痛い。痛い」

ちょうど席を立って料理をとりにきたふたりに絡まれて目が回る。

「……嵐みたい。なんであんな元気なの」
「はは、いいじゃねェか。弟分のお前が帰ってきたから世話を焼きたいのさ」
「おれね、もう二十二さい。わかる?」
「ああ、分かってる」
「赤ちゃんですかっての」

ねえ? と隣のドフィに視線を向けると、くらっと頭が揺れた。

「待っ……、これ結構強いね?」
「ああ? ニア、そりゃウィスキーだ」
「……さっきまでカクテルだった……誰かすり替えたでしょ、もお……なに、」

俯いて、顔を覆う。まずい。
気を張りすぎてたのかもしれない。こんなとこで躓くなんてありえない。
するとおれの耳へ、ドフィの口元が静かに寄せられた。

「大丈夫か? ニア」

途端、肩が跳ねる。

「……ッ、ん? あ、れ」
「部屋まで運んでやろう」
「いま、何……、あ、待って、ドフィ……!」

身体がうまく動かない。目が霞んでるのかと思ったらこれは涙が滲んで膜ができてる。おかしい。おれが戸惑っていると、おれの身体は軽々とドフィによって持ち上げられる。そのまま部屋から連れ出されてしまった。

「……っ、ひきょ……」
「ん? 何がだ」
「惚けないでよ……もお、酷いことする」
「フッフッ……丸一年と少し放っておかれたんだ。これくらい可愛いモンだろ?なァ、ニア」
「ッ、してやられた……お薬やだって、おれ言っ……はァ」

熱い。くらくらする。

「……ドフィのばか、……ばか」

情けなくもおれは涙が止まらない。心がついてこない。身体ばっかり熱くなって、胸の奥のところが冷たくひえてる。

「フッ……楽しみにしてた土産話はこのあとゆっくり聞かせてもらおう」

ご機嫌な足音が廊下に響いた。初日からこんなんじゃ、先が思いやられる。でも、こんなのまだまだ想定内。ローくんとおれのために必要なこと。おれはちゃんと全部こなしてみせる。
ふうふう肩で息をしてるうち、ドフィは階段を登りきる。おれを抱えたまま自室のドアを開けたドフィが慰めるみたくおれの頬を撫でた。ベッドに降ろされるのかと思いきや、おれはふかふかの大きなソファへ乗っけられる。

「……は、ッこれ、いつもの……じゃない?」

お仕置きのときとかに使うやつ?そう尋ねると、ドフィはいいや、と首を横に振った。

「ちょうど今切らしてる」
「よかっ……よ、くない」
「なァ、可愛いニア。今まで話せなかったことを話してくれよ」

いつも使ってくる方のお薬じゃなくて、ほんとにただの媚薬らしくてひとまず安心するわけだけど、辛いものは辛い。なのにドフィはまるで小さな子の相手をするみたく、ソファに座ったおれの前へ膝をつくと、おれの服の中へと手を入れてくる。

「向こうは楽しかったか?」
「……楽しか、ったよ」

おおきくて、ひろい手だ。何もかもがおれの倍の大きさはありそうなドフィをこうして目の前で見ると、どうしても怯む。

「ローが七武海になったのはどうしてだ?」
「……ッ、はぁっ……、シャボンディのっ……事件のこともあったし、マリンフォードでも、麦わらくんを逃してる、から」

息苦しさに嫌気がした。区切りながらおれはしっかりと発声する。

「あんまり……必要以上に海軍から目ぇつけられたく、なかった、んだよっ」
「ヘェ……」
「だったら、監視下に置かれるほうがマシだっ……」
「耐えてる顔もいい」
「なん、の……はなし、ッ」

ドフィの指が身体を這ってきた。ぞわりと粟立つ肌が、緊張を伝えてくる。嘘をついているからだ。ローくんはそんな理由であの称号を獲りにいったわけじゃない。

「っ、ふ……熱」
「可哀想になァ、ニア」
「だれのせいでこんなっ……ッあ」

背中に回ったドフィの指が、おれの腰を撫でる。背骨に沿っておれの首まで登ってきた。

「別に、盛らなくても……ドフィが望めば、」
「…………そうだな。お前はそうだった」
「何が……気になるの」

するとドフィはおれの首を軽く絞めてくる。詰まる喉ではうまく呼吸ができない。頼りなげな眼差しを向けて、身をよじった。ドフィは遊んでる。おれの反応を見て愉しんでる。

「しばらく向こうに居たからなァ」
「……ッぐ、……んっ、は、ッ」
「随分とローに気に入ってもらったようじゃねェか」
「は、ぁっ……おれが、ッ付き纏ってた、だけ」
「お前は誰のモンだ?ニア」
「…………っ、ふ……ドフィ、の」

滲む涙は再び零れた。

「フッフッフッ……」
「離して……っくるしい」
「ニア」
「なに、」

辛いと訴えると、ドフィは手を離してくれる。薬のせいもあって儘ならない呼吸をなんとか整えようと努めていれば、ドフィの腕が伸びてきた。両腕がぐるっとおれの身体を抱きしめる。

「……会いたかった」
「ッ……らしく、ないなあ」

軽口を叩く口元が引き攣りそうになった。

「フフ、当たり前だろう。おれの大事な大事な弟分だ」
「そりゃ……どおも」
「これからはおれの為に働いてもらう。商談にも同席しろ。新しく任せたい仕事もある」

二度と自分のところから離れるのは許さないと言っているのが嫌でもわかる。
衣類を剥ぎ取るドフィの手を止めることはできない。受け入れて当然だ。いまのおれはドフィのおもちゃ。それを演じきるのがおれの役目。

「はい、ドフィ……ッあ、っ!」
「……相変わらず感度のいい身体だ」
「おくすりの……せい、でしょ」

長い指で耳を擽られて肩が跳ねる。腰を撫で上げられれば嫌でも声が出た。薄っぺらい胸を広い掌で緩く揉まれると、息がつまる。

「ドフィ、はやく……ッも、キツい……」

目の前の大きな身体にしがみつけば、気を良くしたらしいドフィは満足そうにおれの身体を担ぎ上げ、改めてベッドへ運んだ。冷たいシーツに沈みながら、結局こうなっちゃうんだもんなあと眉を下げる。身体をあげても、心までは渡さない。そんなのは前から同じだった。ドフィのことは好きだけど、おれのなかでのいちばんはずっとずっとローくんだったから。

なのに今はどうしてこんなに苦しいんだろう。分からない。ローくんのことが好きなおれが、ドフィに抱かれるのなんて前と変わらないのに。

「……、ドフィ……はやく」

胸のもやもやから逃げたいのにそれもできない。おれは早く解放されたくて、甘えるように縋って急かした。くすくす笑いを辞めないドフィは、変わらずご機嫌な様子でおれにキスを贈ってくる。優しく労わるような口づけなのに、心がズキズキ痛んだ。

いちばん酷いのは、おれだ。

落ちるように、眠るように、沈むように、溺れるように。あやふやな意識が溶けていく感覚。海の底にいるみたいだった。目が醒める前に、これが夢だと気づくのは厄介だ。どうやって起きればいいのか判らない。手足が重たくて、なにも出来ない。
真っ暗な空間に放り出されたおれは、しばらくそのまま闇を揺蕩い、居もしないローくんの名前を心の中で唱える。そうしたら、あのひとが近くにいる気がして。ほんの少し慰められた。

「ニア」

声がする。それはおれが今欲しい声じゃない。知らん振りをしたい。けどそれはしちゃいけない。おれは寂しい夢から意識を引き上げられて、薄っすら目を開いた。

「…………、?」

ひろいベッドの上だ。ふかふかする。

「……あ……?」

声の主を探して視線を振れば、おれの隣に寝転んでこちらを見ているドフィと目が合った。

「…………なに、が」
「目が覚めたか」

まだ意識がはっきりしない。けど、隣のドフィがご機嫌なことはなんとなく分かった。

「……おれ、いつ寝たの」
「ベッドに運んですぐだ」
「……うそ。うそだろ」

でも身体のどこも痛くない。汗はかいてるけどこれは多分薬のせいだ。だけど呼吸も辛くない。クラクラしたりもしない。

「ドフィは……」
「ん?」
「いつも、おれに何を飲ませてるの」
「フッフッフッ……ただのジョークだ」
「洒落になってない……」

言葉を交わすうちにだんだんと覚醒してくる。ドフィはおれの頭を優しく撫でて、悪かったの一言で済まそうとしていた。

「もう、なんにも飲みたくない」
「悪かったよ」
「あんなの無くたって、おれは……」

いい子に出来るなんて、どの口が言うんだ。

「おれは?」
「……っ、いい子に、してられ」

言い終えるよりはやくドフィの人差し指がおれの下唇を押さえた。誘われるがままに口を開くと、顎を取られる。

「ああ、いい子だ」
「ん、ぅ……」

ドフィの長い舌がおれの舌に絡みつく。擦り合わされる舌が甘く痺れて、おれの脳みそをダメにしていく。覆いかぶさってくるドフィの胸へ手をやって、その服を掴んだ。

「はッ、ぁ……っふ」

どれだけ他に愛しく思うひとが居たとしても、ドフィとのキスは気持ちがいいものなのだと、すっかり頭と身体が覚えている。これはひとが生きていく上でその身に染み込む反射のようなものだ。レモンを見て、唾液が多く分泌されるのと同じ。
そういう風に生きてきたのはおれだし、教え込んだのはドフィだから。仕方のないことだと開き直るつもりはないけど、逆らいきれないのもまた事実で。
だけど。夢の中と同じように心の中でローくんを呼べば、まだ冷静でいられる気がした。ごめんなさい、ローくん。こんなおれのこと、許さなくていいよ。

「ふ、ぁ…………っ」
「ニア」
「……なに、ドフィ」

随分長く感じられた口付けが終われば、ドフィに額を合わせられる。サングラスの奥の目が、おれを捉えて逃さない。

「おれはもうお前に酷いことはしねェよ」
「……?突然どうしたの」
「だからお前はどこにも行くなよ、ニア」

ずるい。そんな声音で、そんな弱気なことを言うの。あの日と同じ口ぶりでおれを掴んで離さない。コラソンを失ったあの日、おれに言って聞かせた言葉だ。よく……よく覚えてる。

「……馬鹿だなあ、ドフィ」
「うん、と言っちゃくれねェのか」
「そんなこと、わざわざ言わなくても判るでしょ」

よしよし、とドフィの頭を柔く撫でてみたけど、誤魔化されてはくれないみたいだ。あくまで、おれ自身に言わせないと気が済まないらしい。

「……うん。おれは此処にいるよ」

押し潰してひた隠しにする心がまた一つ死んでいく。消費される感情のひとつひとつが、ローくんにもドフィにも届かないで地に落ちる。

「それでいい。ニア」
「はい、ドフィ」
「今日は此処で寝ろ」
「分かった」
「おれは少し出てくる」
「…………え?」
「ん?」

身体を起こそうとしたドフィの腕を引っ張った。

「……一緒に寝てくんないの」

どうせ地獄に堕ちるなら、とことんやってやる。

おれの最終目的はローくんの目的が果たされること。ローくんがこの先を生きていってくれることだ。その結果、おれがどの約束も守れないで彼の元へ戻れなかったとしても。

ローくんが自由になること。それがコラソンの名前を借りてるおれの望むべきことで、ローくんの幸せだ。だから、おれは今からひとつローくんとの約束を破る。

そうやってそばに居るに値しない男になりさえすれば、ローくんはおれのことを考えなくてよくなるから。彼の目的の邪魔にはなりたくなかった。おれの存在が枷になるのなら、彼がおれに見てくれた価値をひとつずつ捨てていくべきで。

「……ニア」
「外、暗くなったよ。ドフィ」

ローくんの為になること全部、おれはしっかり確実にこなしていくべきだ。


   ◆


「……ッ、ん……っく、ちょっと、加減、して」
「わがまま放題だなァ」
「ったりまえ……ひ、ッあ!」

どろどろに充分ふやけていると言え、ドフィと比べれば小柄も小柄なおれにとってドフィと身体を繋げるのは骨が折れる。
久しぶり過ぎるその質量は全くもって暴力的で、おれの中をこれでもかと蹂躙した。

「フッ……痛ェだけじゃねェんだろ」
「は、あ……っ、……ドフィ仕込みだから、っァ……ん、ンンッ」

抱かれるのはローくんで最後にするからなんていう約束は、結局ドレスローザへ戻って一日と経たず破られる。ここへ戻るということはこうなるくらい織り込み済みではあったものの、いざこうして身を委ねていると虚しいものがあった。

「余裕そうだな、ニア」
「ぜん、ぜんッ……ひあ、あ゙、あっ」

何故だか自分が快楽に弱いことは承知してるわけだけど、よもやここまでとは笑えてくる。海の上より娼館のほうがお似合いかもしれない。
浅ましい身体は、上手に気持ちいいことだけ拾い上げた。辛いとか苦しいとかには完全に蓋ができている。ドフィに勘付かれて仕舞えばややこしいことになるから結果オーライではあるけど。おれには真っ当に生きる手段はないのかもしれない。

「ふっ、んあ、あッ……あ、ッドフィ、どふぃ……!」

脚を大きく開いて、そのつま先はドフィの腰へ回っている。ドフィが動くたびにずり落ちそうになるのをなんとか耐えていた。繰り返し名前を呼びながら喘ぎ続ける喉が反り返る。

「やっ、あ゙、ッは、ああっ」

快楽を拾いやすい体質にも笑えるが、今は感謝すべきところなんだろうか。感じるフリもしなくていいから、不審に思われることもない。ローくんにまた会うまで、ドフィだけじゃなく相手は誰とだって変わらず楽しい夜を過ごしてきた。
だからおれは何度も自分に言い聞かせる。ローくんとまた会うまでの生活に戻っただけだと。そうすれば幾らか楽だし、ベッドで余計なことを考えずに済む。

「ひっ、あッ、あ、あっ、や、やぁっ」

全身を揺さぶられて、甘い痺れが頭の先まで駆けていった。怯む腰を乱暴に掴まれて引き戻される。さらに深くへ穿たれるドフィのが熱くて熱くてたまらない。

「あ゙、ッ、やら、やっ、ンッッッは、あ」
「何が嫌だって?」
「っイきそ……あ、やら、ドフィ、きちゃ……きちゃう、や、んッ、あっ、あ゙!」

自然と腰が浮き上がった。限界を感じておれはドフィの腰に脚をまわしていられなくなる。すると目敏いドフィはおれの両膝を左右に割って、これでもかと開いてきた。

「あっ、ふ……やああっ、ぁンッ」
「あーあーあー……恥ずかしいなァ、ニア」
「ひっ、あ゙、んあっ……ァ、っ、やめ、やめ……っひあ゙ああッ」

おもしろいほど腰が跳ねると同時に、なかのドフィのを締め付ける。そしたら素直な身体が悦んでしまってあっさり果てた。
口元に寄せた自分の指を噛み、呼吸を整えようとするも、それはドフィが許してくれない。

「っ〜〜! ドフィ、待って、まっ、ン」
「待てねェな……ッもう少し……付き合え」
「は、はっ、あッ……っく、あっン! ぁッ、はぁ……っ、あ゙んッ」

がつんがつんと音が鳴りそうなくらいに突かれて中を擦られる。
その度におれの弱いところを抉られてしまって、これまで必死で耐えてきたのに、どんどんなにがなんだか分からなくなってきて。

やだ。やだやだ。ちゃんと保っていたいのに、頭がぐわぐわする。
目が回る。もっと気持ちいいのがいいって腰が揺れた。だめ。だめ、我慢しなくちゃ。おれ、すぐ何にも考えられなくなっちゃうから。だめなのに。

「あ……ッ♡」

だめ、なのに。

「ぁはッ……んっ、んぅっ、あ、あ、ッ」

力の抜けた口から、飲み下せなかった唾液が溢れてく。下唇に乗っかる舌が、喘ぐたび犬みたくこぼれた。浅い呼吸じゃ酸素を取り込みきれない。苦しい。苦しいのが、気持ちいい。

「ろふぃ、もお、ッあん……も、やっ、やあああっ」
「ッ、フフ……いいか?」
「んんっ、あっ、きもち……ッ、あついぃ……は、ンぁっ、わかんな……やらああ」

受け止めきれない快感に、おれは駄々をこねることしかできなかった。自分のものじゃないみたいにシーツを滑る足も、ドフィの動きに合わせて揺れてしまう腰も、なにもかもが辛い。なのにドフィから視線を外せなかった。

「なんッ、なんれ、……こんな、いいの、わかっ……あっ、ああっ、ふぁ、あッ」
「そりゃァ、お前がいい子だからだ、ろッ」
「〜ッ♡っ♡んッ♡あっ♡♡ぁは♡♡」

どくんどくんと流れ込むドフィの熱いのがたまらなく気持ちよくって、おれも応えるように一緒にイってしまった。待ちわびていた射精される感覚に全身が悦びに震えてるのがわかる。

死にたくなる。こんな夜がこれから続くのか。

こんなにもおれはローくんだけだって想い続けているのに。どうしておれの身体は心底嬉しそうに、ずっとずっとドフィのを咥えてよがっているんだろう。泣きたいのに泣けもせず、おれはドフィに何度か頭を撫でられている内にまた眠ってしまった。

ローくん。おれもう、謝る資格すらないね。