03
それから数年と経たないうちに、ドフィはドレスローザという国の王座についた。ことの経緯をおれは詳しく聞かされなかったが、悪王を討ちとったところ、国民から是非とも我らが王になってくれと懇願されたらしい。
「王様ってそんな簡単になれるモン?」
「フッフッフッ……」
「悪い顔。駄目だよ、おれに嘘つかないで」
「この国はもともとおれの物なんだ」
「……へえ?」
「返してもらった。それだけさ」
こうやって含み笑いをするときは、何か隠してるけど言ってることは嘘じゃないときだ。
「国なんかに居ついたら、ローくんのこと探せないんだけど」
冗談めかして文句を言えば、意外にもドフィは真剣な顔をして「確かになァ」と唸る。
「オペオペを食べたローくんが、ドフィには必要なんだろ」
「ああ、そうだ」
「右腕にするって、諦めてないんだね」
「諦めてほしいのか?」
「そしたらお役目はおれに回ってくるじゃん。おれは今よりもっとドフィと居られるってワケ」
このときのおれは帰ってこないローくんより、そばにいるドフィのほうが心配だった。悪いこともたくさんしてるみたいだし、帰りが遅かったり眠るのが遅かったりもしてる。
ローくんのことも好きだけど、ドフィのことだって好きだ。たいせつだ。
だからドフィはもうローくんのこと忘れちゃえばいいのにって思ってた。そしたら……そしたら、ドフィはローくんのことを探したりしないで済む。
「……言いてェことがあるようだ」
「バレちゃった」
「言い当ててやろうか」
「ううん、おれに言わせてよドフィ」
しーっ、と人差し指をドフィの唇に押し当てる。
「ローくんはおれがちゃんと探し出してあげる」
「へえ、そりゃ助かる」
「だからおれ、ここを離れてもいいかな」
しばらくの沈黙の後、ドフィはやっぱり笑った。
「言うと思ったよ」
「ローくんはおれの上司だからね。部下が落とし前つけるのは当たり前だろ」
「筋は通ってる。が、まだ待てニア」
「なんで」
むすっと口を尖らせると、ドフィはあやすように頭を撫でてくる。
「ドレスローザの王として、おれはこの国を動かしてかなくちゃならない」
「ふーん」
「しばらくは忙しいだろうな」
露ほどもそうは思ってもないような口ぶりだ。ドフィはそういうひとだから構わないけど。
「……だから?」
「落ち着くまではおれのそばに居るといい」
居るといい、なんて言いながらそれもう命令だよなあ。とは言わないでおく。代わりに「寂しがりのボスは仕方ないなあ」と笑って返した。
◆
ドフィの言う通り、ドレスローザで働き続けてたけど。新しい仕事も舞い込んでくるし、管轄の賭場のことも世話しなくちゃならない。
管轄外の仕事へも手を回さなくちゃいけなくなったり、その合間でドフィの相手をしたりで、なかなかローくんを探すこともできない。
そうやって長い間先延ばしになってしまった。
いざローくんを見つけて説得に失敗してしまったらローくんはおれたちの敵になる。結果を知るのが怖かったのかもしれない。だけどおれがドンキホーテで生きていくなら、ローくんのことは見つけて連れて帰らなくちゃならない。
もし、断られてしまったら。ローくんはきっとドフィに酷いことをされる。ドフィだけじゃない。他のみんなから制裁がくだるんだろう。
そうなったとき、おれはどう判断するのかな。逃すか、自分もローくんを痛めつけるのか。それとも一緒にドフィへ謝って許してもらおうとするのか。
そのときになってみなくちゃ分からないけど、ローくんもドフィも傷つかない結果がいい。
しかし、そんなこんなでローくんを捜索することもままならないまま時が過ぎた。受け持ちの賭場は大きくなり、任される仕事も増えた。まさに3代目コラソン代理たる働きぶりだと褒められたのは記憶に新しい。
「もう限界だ」
いったいいつになればおれはドレスローザを離れて広い海でローくんを探すことができるんだ。ああ、はやく会いたい。聞けばローくんは海賊団を立ち上げたらしかった。
なにそれ狡い。おれも入りたい。というのはドフィの前では言わないでおこう。
ローくんが作った海賊団には興味があるなあ。きっと優秀なんだろうな。ドンキホーテの傘下に収まったとしても、相応の地位を確立しそうだ。ローくんは賢い男だったから、クルーもきっとそうだろう。
なのに、ドフィはいつまで経ってもドレスローザからおれを出してくれない。
「ドフィ、居る?」
こんこん、とドフィの部屋をノックする。するとすぐに低い声で「ああ、入れ」と返ってきた。王様は本日もお疲れのようで、ベッドの淵に腰掛けているがその手には書類の束。
もう夜も遅いんだからそろそろ休めばいいのに。
「まだ寝ないの?」
「添い寝してくれるのか?」
「ドフィがしてほしいならするよ」
「へえ。なんでもか?」
そんな質問が返ってきた。これはチャンスだ。
おれは勝気なスマイルを作って、ベッド淵まで寄っていく。
「いいよ、なんでも。その代わり」
「うん?」
「ドレスローザの外でローくんを探したい」
なんでも言っていいから。
そうつけ加えると、ドフィは喉の奥でくつくつ笑った。いったいなにに笑っているのかはわからない。瞬きを繰り返していると、ドフィは「いくつになった」と問うてくる。
「今年で十八」
「あれからもう十年か」
「そうだよ。おれ、結構執念深いからね」
「なら」
「うん?」
とん、と肩を押された。
一瞬おれはなにが起きてるのかわからなかった。ぐるんと反転した世界に、ドフィが降りてくる。押し倒されてると気づいたときには遅過ぎた。
「あの……えっと、ドフィ」
「なんだ」
「これはどういう」
「かわいいかわいいお前がおれの手を離れるってんだ。ひとくちくらい食っちまっても構やしねェだろ」
「か、構う! 構うよ!」
慌てて身を起こそうとするけど、それはドフィのおおきな手が許してくれなかった。
ふかふかのベッドに身体を押し付けられて、無理やり脱がされる。おれはドフィが相手ということもあって目を白黒させてる間、ろくに抵抗もできなかった。
◆
ファミリーの一員としてニアを迎え、様々な教育をするうち、ともに過ごすうちに気が付いた。こいつは随分と整った顔をしてる。
顔がいいってことはいい。悪いよりゃ上等なほうがいいし、綺麗な顔はそれだけで武器になる。ふわふわしたアッシュの髪と控えめに潤った薄い唇。涼しい目元とそれを縁取る長い睫毛。どれをとっても質がいい。女も男もこいつを欲しがる、というのは贔屓目だろうか。
そんな手塩にかけて育てたニアも、はじめのうちは「ドフィ」「ドフィ」と後ろをついて回ってきたというのに。すっかり今では「ローくん」「ローくん」と喧しい。
ドンキホーテのためにローを連れ戻す、という理念なのだろうが、ここに居ない男の話ばかりされてもつまらないというものだ。
おれの目の届く範囲、ドレスローザを離れてまで探したいというのならば尚更だった。
そりゃあ気持ちは嬉しい。ニアの忠誠心の表れだろうとも。しかし面白くない。
「抱くなら女の子のほうがいいよ」
「そうか?」
「……はあ。ドフィのそんな話聞いたことないよ」
「だろうな」
脚に引っかかったままになっていたペラペラのサルエルパンツを取り去って、ニアの下着に指をかける。真っ赤な顔はまだまだ可愛い。
数年後、色香を孕んだらどんな顔を見せてくれるのか楽しみで仕方ない。
「お前か女かなんて比べるまでもねェ」
「めちゃくちゃ言うもん……」
「どうした、大人しい」
「観念したんだよ。恥ずかしいけど、恥ずかしいけど……断る理由もないし」
これはまた随分な殺し文句が飛び出たものだ。
「おれ、ドフィのこと好きだよ」
「嬉しいね」
「おれはドフィの右腕のスペアだから。好きにしていいんだよ」
ニアの指が頬に伸びてきて、ゆっくり滑る。どこでそんな誘い方を覚えてきたのかと問いただしてやりたい。おおかたそこらの花街だろうが。
「…………しないの」
「待ちきれねェのか?」
「……違うよ。恥ずかしいから、はやく始めてほしいだけ」
赤く染まった顔をベッドの外側へ背け、ニアはか細い声で「はやく」と呟いた。
疑ってはいない。こいつまでもがドンキホーテに背く事はあり得ない。
「おれが嫌がるって思わなかったの?」
「ニア」
「……なーに、ドフィ」
ニアの言うとおり、オペオペの能力は必要なものだ。そのためにはローを連れ戻さなくちゃいけねェ。だが一筋縄じゃあいかねェだろうな。
まずニアに任せるのは運試しのようなものだ。こいつはまだまだ若い。いつまでもドレスローザに閉じ込めてちゃ、拡がる視野も拡がらないだろう。
万が一のとき、ニアにはハートの席について貰わなくては。それまでの時間できっちり成長しておいてくれれば文句はない。
「…………ニア」
「うん?」
「……ニア」
「……うんうん」
噛みつくように首筋へ顔を埋めてみれば、ニアはおれの頭を撫でてきた。
◆
「ひっ……ン、んっ、あっ」
「そろそろ後ろも慣れてきたか?」
「慣れ、っない、けど」
「けど?」
「きもち、いっ……♡」
聞いてない。
聞いてないよドフィがこんなにえっちなこと上手だなんて聞いてないよ知らないよ。
あんまり流されちゃいけないって頭じゃわかってるのにドフィの手が許してくれない。どんどんおれを追い詰める。
うつ伏せになっておしりだけあげてる状態なんだけど、これがまた恥ずかしくてたまらない。
前はドフィが擦ってくれてるし、あとで使うんだろうな……って後ろにはドフィの指が入っている。ぐちぐちと掻き回す音を聞きたくなくて、必死に聞こえないふりをした。
「んっ、ふあ、あっんっ……あぁっ」
「ニアは甘えただからなァ」
「ふぁ……、あ、あ、やぁ」
「中も、ドフィもっとって甘えてくる」
「や、やだ……言わな、いでっ」
でもほんのことだった。
ドフィの指が触れるすべてがきもちいい。流石に後ろを使うのは初めてだけど。たぶん、酔っている。ドフィという男にこうして求められ、身体を開いているという事実に。そんな状況がおれの背中を押すし、実際に中も掻き回されているうちに気持ちいいのがわかってきた。
「はぁっ……は、ァ、んっ、……っあ、ドフィ、どふぃっ……も、だめ、イ、いっ……!」
おおきな手がおれの前と後ろをめちゃくちゃにする。
頭を蕩かして、きもちいいの他にはなにもわからなくさせてくる。
枕に頭を押し付けて無様に喘ぐ姿はドフィにどう見えただろう。嫌われてないといいんだけど、そういうこともだんだん考えられなくなった。
きもちいい。きもちよくしてくれてるのはドフィ。きもちいいのすき。ドフィがすき。
ぐるぐるぐるぐるそんなことばかりが頭の中を回り続ける。
「はっ、あ、イっく……イく、ドフィっ……ドフィ……ッ」
「ああ、出していい」
「んっ、あぁッ……っすき、ひんッ、ァ……ッ!」
まるで自分のものじゃないみたく、腰が跳ねた。
ドフィの広い掌が、おれの吐き出したものを受け止めてくれる。
荒い呼吸を繰り返していると、ぐいっと腕を引かれた。抗うことも出来ずになすがままになっていれば、いつの間にかおれの腰はドフィの腿の上へと乗っかっている。
「はっ……あ、う……んん、っ……ぅー……♡」
「そんなにヨかったか」
「と、溶けて死んじゃう、かとおもった……」
するとドフィはおかしそうに笑った。
◆
「く、るしぃ……ッ、おなか、いっぱいなんだけど……っ」
「まだ全部入っちゃいねェよ」
「ドフィのが全部入っちゃったら死んじゃうからぁっ! し、ッあ……っ、うぅ」
その巨躯にぶら下がるドフィのブツは、常人と比べものにならないくらいに大きいし太いし長い。それがいま半分と少し、おれの中に埋まっている。
埋まったまま、ゆっくりゆっくり抜いたり挿したり。
痛くないって言えば嘘だけど、おれはなんだか満たされていた。今だけはドフィがおれに夢中になってくれるのが嬉しかったし、おれもドフィに夢中だった。
気持ちいいのだって、ほんとのことだ。
「ふっ……う、あっ、あぁ……ッ!」
「ニア……お前本当に初めてなんだろうな」
「は、初めて、だけどっ……ッン」
「けど?」
「シてくれてるのが、ドフィ……っだから、ぜんぶ、きもちぃ……よ」
おれはドフィって人間が好きだった。強くてかっこいいし、理的で聡明だ。そんな男に育ててもらった挙句にこうして抱かれるなんて誰が想像できたんだ。
少なくともおれはおおいに驚いてる。こうなった現状にもだし、そこそこ楽しめてる自分にもだ。そこらへんの男に抱かれるだなんて冗談じゃないが、おれにとってドフィは特別だ。
ボスの命令には絶対従うという覚悟とは別に、この人のお願いはなんだって聞いていたい。
そんな風に思ってる。
「んあッふぁ、あ、あ゙ッ……っ……んッ」
「ニア……、もう少し」
「あ゙ッ……っン、深……い、キツ……」
でもでもでもでも物理的に無理なものは無理なんだよドフィ。ドフィのってすっごく大きいから、おしりの小さいおれには身に余るっていうか、うううどうしよう。
「息、むり……ッ、はぁっ……、」
「しっかり吸って吐け」
「んうう、あッ! まって、まっ……そこ、だ、だめ、だめ」
「ん? ここだろ、ニア」
「〜ッ、は、あ゙っ……!」
すっかりぐずぐずに溶けた後ろは大きすぎるドフィのそれを少しずつ少しずつ飲み込んでいく。さすがに全部とまではいかないが、これ以上進まれたら絶対おなか裂けちゃう。
だめ。だめ。 きもちいいんだけど、それはだめ。しんじゃうから、だめ。きもちい、けど。
「ッドフィ、も、イキたいぃ……まえ、触っ……まえぇ……っ」
ドフィの首に縋り付いてお願いすると、ドフィはまたおおきな手でおれのを擦ってくれる。ごつごつした指が触れて、どうしようもなくきもちいい。
「ドフィも、きもちい……?」
「ああ、たまらねェよ」
「よか……たぁ」
「……っ、すこし動く」
そう言われてからのゆうべの記憶が、おれには一切ない。