09
ふわふわする。きもちいい。しあわせ。うれしい。あんしんする。もう、こわくない。
ローくんからもらたされるそのどれもがおれの頭を蕩かしてきた。
浅ましいやつだと思われないだろうか。軟禁先から帰ってきてまだ数日しか経っていないのに、あっさり脚を開くおれをどう思うんだろう。
だけどおれを許してくれるなら、責めるつもりがないのなら、今ここで抱いてほしい。ローくんは我慢の限界だと言ったけど、おれだってそうだ。はやく、彼の熱に触れたかった。
「ニア……」
「ん……ぅ、っ」
ローくんはおれに何回も何回もキスしてくれる。それはまるでおれをあやすようで、ローくんがおれを安心させようとしてくれてるのがよく分かった。
舌の先が合わさって、そのまま擦れる。
お互いの唾液が混ざり、仰向けに寝かされるおれの喉へ落ちた。ごくりと喉が鳴る。なにもかもがおれの欲を煽る興奮材料になので、目の前がちかちかした。
「ふぁ……ん、ンっ……」
ほしい。はやくほしい。
それしか考えられなくなりそうだ。
自然と腰が揺れれば、ローくんの手に捕まる。ぐっと強く掴まれて固定された。
くる。くるのかな。
なのにローくんはおれの口を離してくれない。何度も角度を変えながら食まれるように口付けられれば、酸素も薄まり更に頭がぼーっとしてくるわけで。
「……ぁ、んっ…………ふッ」
「ニア」
「ッ……ひゃい、ろ……く、んっ」
「……いーか?」
下唇を咥えられたままローくんは尋ねてくる。尋ねるというよりは「いいよな」って言われてるみたいなんだけど。そんな痺れるような感覚におれは強く揺さぶられた。
がっちり捕まれたままの腰が跳ねたのは、ローくんのせいだった。ローくんがおれのお尻に、欲しくて欲しくてたまらなかったそれをぐいぐい押し付けるのが悪い。
「……っ、……んッぁ……う、ん」
蚊の鳴くような声で返答し、頷く。ローくんの口はまだ離れていかないけど、今はそれが嬉しくてたまらない。
そういえば、ドレスローザへ向かう前のベッドでもたくさんちゅーしてくれたっけな。
「ッ、ぁ……!」
追憶に耽っていると、ついにローくんの腰が押し進められてきて、おれは息もできない。固く目を閉じて歯をくいしばるのに精一杯で。
「ふ、……ぁっ、んんん、んっ!」
「……ッ、ニア」
合わさる口の端から漏れる声の中に自分の名前があった。
大好きなローくんが、おれにちゅーしてくれながら名前を読んで、抱いてくれてる。
それがいったい幸せでなくてなんなのか、おれは分からない。
「はっ……あ゙……ん、んぅ」
なるべく声を抑えられてはいるものの、タガが外れてすぐ駄目になりそうだ。気持ちいいのに引っ張られて、くらくらする。今、他のことに気を遣ってたらすぐイっちゃうもんこんなの。
「…………ここ、」
「ッひ、あ」
「おれのが入ってる」
顔を離してくれたローくんは、身を起こしておれのお腹を撫でた。すこし押したりもする。
「……っ、……ふ、ぁ」
「…………イくのか?」
「んー……んッ」
尋ねられ、なんとか首を左右に振った。
「遠慮するな……見せろ、ッ」
「〜〜っ♡♡♡」
命令とともにローくんのが中の浅いところからお腹を押し上げてくるので、おれは言われた通り気を緩めてしまう。
「ひ、あ…………ッく……ん、ンっ」
手で口元を覆って背を反らす。変わらず惜しげもなく与えられる甘くてたまらない感覚が、おれの理性を崩していった。
「っあ、……や、あ、あッ」
伸びてくるローくんの手を咄嗟に掴んで、その甲に軽く爪を立てる。すこしも気にしないローくんは掴んだままのおれの腰を引き寄せて、気持ちいいところを押し潰してきた。もう、どうしようもない。あ、だめだ。おちちゃう。やだやだ、もうきちゃう。ナカがきゅうきゅうしてるのわかる。熱いローくんのを締め付けて、イかせて貰おうとしてる。
「あ、ッ……あ♡……っい、……っイく、や、あ……っン!」
「……くっ、ニア……!」
「へ、あ……あっ、あ゙、……あっ♡……ふ、あ♡」
すると、おれの頭はローくんに抱きかかえられて彼の胸にすっぽり収まる。訳もわからず彼にしがみついてたんだけど、そんなおれの頭の上でローくんが苦しそうな声をあげた。
どうかしたの、と頭が判断するより早くにおれのナカは媚びるみたく何度もひくつく。どくどく吐き出されるローくんのそれをもっと飲み込みたかったからだ。
「……っ、は……ァ……あ、つ……」
「くっ……そ」
「ふふ、ローくん……かわい……、すき」
可愛い。可愛いなんてもんじゃない。
こんなにローくんが早く出しちゃうなんて初めてだ。
「まだ付き合え」
「……ん」
「辛くねェのか」
「…………?辛いよ」
「……なら」
「もっと奥も……シてくんなきゃ、あ♡」
おれのナカで少し萎んだローくんのが固くなる。素直で可愛い。
「余裕か」
「……んッ、もっと……っ」
「……急かすな」
ローくんはゆるゆる腰を動かす。
おれのナカで扱いてくれてるんだと思えば胸がいっぱいになった。
「〜〜っ、すき、ローくん」
「……ああ」
「おっきくすんの……手伝、う」
起こして、とお願いして抱き抱えてもらう。おれはシーツの上へ膝をつくと、ローくんにちゅーしながら彼の身体を後ろに倒してあげた。
「……こっち、シたい」
ローくんのことを上から見下ろすなんてことそんなにない。おれは彼の鍛え上げられた腹筋に手を置きながらちいさく笑う。
ゆっくり腰を前後させて、おれはローくんをじっと見つめた。緩急をつけて後ろを締めてあげればむくむく育つので、戻ってきた質量にお腹を押し上げられる。
「……っは、……も、おっきぃ」
「満足するまで……ッそうしてろ」
「んっ……ん、あ……っァ、はい♡」
随分長く待ち望んでたローくんからの命令に、ずっとめろめろだった。自然と腰が反って、おれは動き方を変える。お尻だけを上下させてローくんのを弄んだ。
たん、たん、と肉の当たる控えめな音にもどきどきする。
「はっ……あ、ンッ……ん、っ」
「……ッ、ふ」
「きもち……?」
「ああ……」
おれの腰に添えられたローくんの手が、おれの骨盤辺りをやさしく撫でた。
「…………っ♡」
褒めてもらえた。うれしい。おれも気持ちいい。若干前のめりになって腰を揺らすと、ローくんが息を飲んだ。ああ、ずっと見てたいな。こんなローくん。
「あんまり遊ぶと……どうなるか分かってるな」
「あ……わっ、……ん!」
腰を掴んだ手を引き下げられれば、深くローくんと繋がるので喉が反り返った。
「……は、ぁ……ッこのまま、絞ったげよっか」
「悪いが……乗られるよりは乗る方が性に合ってる」
「たしかに……っ、あ゙……く、ッ」
すっかり大きさも硬さも元通りになったローくんのが、下からぐりぐりと擦り付けられる。
ちかちかする。もっとほしい。
「おれに乗せてやってんだ。しっかり腰振れ」
「……っ♡……は、い♡」
好き。好き好き好き好きローくんが好き。
おれのご主人さまは飴と鞭の使い分けがとっても上手だ。悦ばせ方も、いじめ方も何もかも分かられてる。言われた通りにおれは腰を揺らす。でも、ずっとイきそうなのに自分で動いてるから最後のひと押しが足りなかった。多分それすらもローくんには筒抜けで、彼が自ら腰を突き上げてくることはない。
「……っ…………ん、……ッ」
寸止め状態だった。イきたい。足りない。ほんとはローくんにがつがつ突いて欲しいのに。
「……苦しそうだな」
「ん……ッん、ぁ……イっ……イけな、」
上下させても、前後させても、ぐるっと回しても。欲しい感じの気持ちいいのがこない。
「なん……れ、きもち……のにぃ」
気持ちいいのはずっと続いてる。なのにイけない。それは多分ローくんにいっぱいシてほしいからなんだと、蕩けた頭で考えた。
「ろ……っろぉ……、」
思ったよりも甘えた声が出て、おれは二の句が継げない。
「ん?なんだ」
なのにローくんは気にする素振りもなく、ベッドに仰向けになって寝転んだままおれをじっと見上げている。
「……っ、ひとりじゃイけな……」
「それで?」
「ろーくんに……されたぃ……」
「だから?」
軽く突かれて急かされたら、もうダメだった。
「うしろから、シて……くださ、ぃ」
「……あァ、分かった」
ローくんのがおれのナカから抜けていく。
抜かないでもよかったのにな、なんて思いながらもおれはローくんのお腹の上から降りた。彼に背を向けて座ると、枕に向かって身体を押さえ込まれる。
「わ、……ッ!」
肩を押さえられてシーツに縫い付けられ、おれは思わず首を捻ってローくんを振り返った。
「……ニア」
「…………えっちな顔してる」
持ち上げられた腰に、熱くて硬いローくんのが乗せられる。焦らすみたく擦り付けられては尾骨で果てるんじゃないかとすら思った。
おれは右手を尻たぶに這わせ、潜めた声でローくんに告げる。
「また……待てってする……?」
「いいや。しねェよ」
「っ……あ、あ゙、んッ」
ローくんのと一緒に、きもちいいのがおれの腰から頭までせり上がってきた。従属の悦びに足からちからが抜けちゃいそう。ゆっくりとその全てをローくんが埋めきる頃には、おれの頭なんてもうとっくにまともじゃなくて。
「ろ、……ッは、は……ぁ」
「……くっ……入っ、たぞ」
「んっ……んん……ッ」
そのまま、まるで物を扱うみたくしておれの腰はローくんの方へ引き寄せられる。
「……っ♡…………ふーっ♡」
「おら……鳴いてみろよッ」
「んッ、わんわ、ん……っあ゙ン!」
遠慮なく与えられる後ろからの熱に、瞬間、視界が弾ける。声をあげたくなくておれは慌てて枕に顔を埋めた。
「ろぉ……っ、ろーく、あっ」
ギシギシとベッドのスプリングが鳴って、その度におれはローくんを呼ぶ。
「……、ニア」
「ひゃ……あ、あっ……ん、」
後ろからされるのは好きだ。全部ローくんの物にしてもらってる気になる。事実、そうなんだけど。なんだろう。確かめてもらうみたいな、おれも教え込まれるみたいな。
「躾……っ、足りないって、あ……前にッ」
「……、ああ、そうだな」
「シて……、もっといい子にな……っ」
ローくんのあったかいお腹が、おれの背中にぴったりくっついた。息遣いもその声も、おれの耳のすぐそばだ。
「必要ない」
「……んぁっ、え……?」
「っお前は充分、いい子だろ……っ」
「ひ、ッ……〜っあ゙、ら、やら、い、イっ……いくいくいく、っやらあぁッ」
だめだ、どんどん自制も我慢もできなくなってる。
おれの「嬉しい」が脳みそで「気持ちいい」に変換されてるみたいだ。ローくんの手がおれのお腹を支えてくれてるから倒れ込まずに済んだけど、おれは気が気じゃない。
「はっ……は、あ……ふ……ぁ」
呼吸を整えながらぼんやりしてると、ローくんがこめかみや頬にキスをしてくれる。嬉しい。
「は…………っぁ、ん」
「まだいけるか」
「……ん」
腰を捻ってローくんの首に腕を回すと、抱き寄せてもらえた。
そのまま身体を反転させるとローくんの顔が真正面にある。じっと見るまでもなくカッコいいので目に悪い。
「……なんだ」
「んーん」
「隠しごとか?」
「ぁ、んッ……違うよ」
膝を持たれて左右に開かれる。
未だ萎えないローくんのは、おれの中を行ったり来たりを繰り返した。
「好きだなって……ッ思って、」
「……そうかよ」
「あ、あの……ろ、くん……っ」
まるでおれのナカを味わい尽くして愉しむようにじっくり動いていたローくんは、呼ばれるとおれの方を見てくれる。
おれは一旦彼の視線から逃れた。枕に頭を乗せたまま目元を手で覆う。その間にもローくんは腰を止めないで、長く息を吐いていた。
「なんだ」
「おれも、……ッ」
言い淀むのはどうしてだか分からない。すらっと口に出してしまいたい。おれはさっき逃げたから。言わなきゃ、だめだ。
「……はぁ、ッ……あいして、るよ」
「ッ……、」
「ずっと……っ、ろーくん、だけぇッああ゙ぁっ……!」
言った途端後悔した。
言ったことではなく、伝えたタイミングにだ。思った以上にローくんを刺激してしまったらしく、ローくんはその顔をさっと赤らめて強く深くおれのナカを蹂躙する。
「……ニア、ッニア」
「ッん、待っ……は、ァ……っ♡」
もう声も我慢したくない。なるべく大人しくしてるのもキツい。だけどそれは誰より大事なローくんの沽券に関わることだから、駄目。だめ、なのに。
「ろ、……――ッん、ぅ」
視線で誘えば口付けてもらえたので、おれの堪え切れない声はローくんに飲み込んでもらう。そもそも我慢していれば苦しいんだし、今更口を塞いでもらっても同じことだ。それに、ローくんのちゅーはやっぱり気持ちいいし。
「ニア……ッ、出す……っ」
「ん、……っ♡んぅ、ふぁ♡」
ナカにあるローくんのが跳ねた気がした。すぐさま叩きつけるような動きになるので、おれはローくんが動きやすいように腰を浮かしておく。
「ろー、くッ……すき、っすき……っ」
嬉しいも大好きも全部全部、涙になってぼろぼろ溢れた。そんなおれにローくんは嫌な顔ひとつしないで軽く口付けてから、抱きしめてくれる。
「ぁ……っ、……ニアッ」
「ん、んぁ……、〜〜ッ♡ふ、あ♡♡」
吐精の瞬間、ローくんはおれの肩口に強く噛み付いた。
そんな痛みでさえもおれは嬉しくて嬉しくて仕方ない。どぷんとナカにローくんのを出してもらう感覚と、本気で噛まれる痛みにおれが耐えられるわけもなく。
「――ッ♡♡♡……は、っ♡……ッ♡♡♡」
強張った身体が弛緩するまで結構な時間がかかった気がした。くらくらする。
「…………っ、は……あー……生き、てた」
「……はァ……っ、誰が殺すか」
「ローくん……ローくん」
「……?寝ないのか」
「……寝る、けど、まだ……寝な」
頭が重い。いつもならとっくに夢の中だ。だけどまだこうしていたい。
「ろ、……ろぉ」
「なんだ」
おれの隣に寝転んだローくんが、おれの身体を引き寄せてくれる。腕枕だってこの人にされるのいつぶりなんだろう。嬉しい。大好き。寝たくない。
「……すき」
「…………おれもだ」
「ありがとね」
「……もう寝とけ」
寝かしつけようとしてくるローくんはすこし恥ずかしそうに言った。珍しいな。
「……おやすみ、ローくん」
「ああ……おやすみ」
◆
なんか熱い。
そんな感覚がぼんやり浮かんで、おれは瞬きをした。瞬き……?ああ、目が覚めたのか。
「…………ん、んん」
「起きたか」
「おはよ……?」
「おはよう」
「……お風呂、お風呂か」
寝ぼけ眼を擦った。ローくんはわざわざお風呂を沸かしてくれたようだ。客室のバスルームはとっても広くて快適なので、このままポーラータングに持って帰りたいくらい。
「頭も洗ってくれたの」
「ああ」
「うう……極楽……」
王宮に居た頃は監視付きだったし、キュロスさんの家でもシャワーだったから久しぶりのゆったりできる湯船だった。
おれはローくんを座椅子にするような形で湯船に浸かっている。
「伸びたな、髪」
「ん?確かに」
ローくんはおれの濡れた髪をくるくる弄びながら呟いた。
「落ち着いたら切ろっかな。動くとちょっと邪魔だった」
「腰振ってるときにふわふわ揺れてるのもいいけどな」
「……そういうこと言う」
立てられてるローくんの膝をぺちんと叩く。
「バスタオル洗っとかなきゃ」
「洗った」
「え」
「お前のここも」
「ひッ」
ローくんはおれのお尻に手を出してくるので身を捩ってなんとか避けた。セクハラだ。
「……あり、がと」
「ああ」
「…………なにこれもう温もって出るだけ?」
「そうだ」
「ローくんって結構世話焼きだよね」
「お前だけだ」
と言う割にはクルーくんたちの健康管理もバッチリだし、具合の悪そうな子がいたらすぐ診るし。まあでもおれだけって言われるのは嬉しいから黙っておこう。
「早かったな。目が覚めるの」
「そう?ふふ、本気出せばこのくらい」
「たまたまだろ」
「……はい」
そしたらローくんはなにを思ったのか、おれの両耳に触れてきた。耳朶をふにふにされる。
「なに?くすぐったい」
「ピアス……投げちまったから」
「あれか。お守りの役目は果たしたんだからいいんだよ」
「……そうか」
「うん。気にしてた?」
「…………まァ」
「もしかして、ローくん眠たい?」
「……そこそこ」
「あがろっか。寝よ寝よ」
お風呂ありがとねとキスを贈って湯船から出ると、脚をつけた瞬間その場にへたり込む。
「…………あらら」
「っハハ」
「わ、笑うな」
鈍く痛むというか、ちょっと力が入らない。おれこんな状態なのにお風呂いれてくれたの?なにそれ嬉しい……でも立てない。
這って脱衣所まで行ってやる決心をしたところで、おれの身体はローくんによって担ぎ上げられてしまった。やっぱりこうなる。
用意されてたバスローブはお互いなんかガラじゃないから辞めようって話がついたので、リュックからTシャツを取り出して着替えておいた。
「……ローくん」
「ん」
下に敷いておいたバスタオルのおかげでシーツまでは汚さなかったものの、さっきまで居たベッドはぐちゃぐちゃだったので、おれたちはもう一つの綺麗なベッドに潜り込む。
換気の為に開けられた窓から、心地よい潮風が吹き込んでいた。
「……ありがとね」
「…………別に」
「おやすみ、ローくん」
「ああ。おやすみ……ニア」
大好きな人と同じベッドに入って、大好きな人の腕の中で眠ること。
それが今のおれの幸せのかたち。
なんの葛藤もしがらみもなく、安心して眠れることはこんなにも幸福なことだったんだなあと、おれはローくんの腕のなかでひしひしと感じた。