同じなようで同じでない刀剣たち


01 若い(中身が)狐と迷子の狸(小狐丸成り代わり×同田貫)

 それは戦場での出会いだった。

「おやおや。こんなところで同胞に出会えるとは」

 刀なのに刀らしくもなく、審神者がいないのに顕現している、おかしな奴だった。

「して、卿は如何様にしてここへ?」

 喋り方だとか、雰囲気だとか、戦い方だとか。
 伝え聞いた小狐丸とは、何もかもが違っていた。

「いや、俺は……俺は、敵に襲われて」
「ふむ」
「……思い出せない」
「いや、それだけで結構、結構」

 独特の雰囲気と喋り方をするこの刀に、一瞬小狐丸ではない別の刀じゃあないのかと思いはしたが、彼の帯刀する太刀を見ればその考えは間違いであると否定された。

「ならば、我と共に行くか。迷い子よ」
「あ?」
「我はこうしてずっと彷徨っていたところだ。丁度いい、旅の連れにはなってくれぬか? 同田貫よ」


 他者を見つけて瞳を輝かせたこの小狐丸は、俺にそう問いかけて不安げに瞳を伏せた。その姿が、大昔見かけた迷子のガキのように見えて、放っておけなくって。俺はこの普通とは違った小狐丸に着いて行くことにした。



02 忍び夜(石切丸成り代わり×明石)

今日も夜更かしをしてしまったようだ。小説の続きが気になってついつい読みふけってしまっていた。
刀になって何日かたったが、それももう慣れてきた。苦痛に感じるどころか私は今の状況をひどく楽しんでいる。石切丸という刀は大昔に作られた刀のためか知識が豊富で、読める小説の種類が大幅に増えたことに感動した。
次は何を読もうかな、と次の小説に手を出そうとしたところで足音が聞こえた。やばい、見回りが来た。以前夜更かしをしていたことを咎められてしまいこっぴどく叱られたことを思い出し慌てて火を消し布団に潜り込んだ。

近づく足音は、私の部屋の前で立ち止まった。火の匂いでバレてしまったのだろうか、その人物は障子に手をかけ開き、室内に入ってきたではないか。

暗がりの中、近づいてくる足音から判断するに太刀の誰かだろう。そしてあまり衣擦れの音が聞こえないから洋装の刀だとわかる。その刀剣が私の眠る布団の横にきたかと思えば、座り始めた。なにを、している?


「あきまへん、なあ」


 小さく、ぽつりと零された囁きからその人物が誰かわかった。明石だ。こんな時間にこんな所へ? なぜ? と疑問ばかりが出てきてしまう。


「お慕い、して、はります……石切丸はん」


 狸寝入りしている私に覆いかぶさり、瞼の裏が影になり真っ暗になった。なにをしているんだろう、と呑気な私の唇に、柔らかいものが触れた。



03 バーサーカーの休日(岩融成り代わり×陸奥)

 ここ最近、ひと振りの打刀に付きまとわれている。
 やれ構えだの飯食えだのとけたたましくて仕様がない。
 彼は陸奥守吉行。自分が前線で敵を屠っていた最中に横を彷徨っていた刀剣である。なんでも他部隊とはぐれてしまい迷子だったところで俺を見つけ、以来懐いてしまった。
 心細いところで仲間を見つけて、その反動でなついているように思えるだけだ。いずれ、いなくなる。

「岩融、岩融」
「……」
「岩融、ちっくと休みとぉせ」

 戦場は、俺の居場所だ。戦場で顕現され常に前線で戦うことを求められた俺の楽園。ゲームやマンガでしか許されない本気の戦いをできる唯一の場所。

「ううむ……とう!!」
「!!?」

 元気な掛け声と共に俺を押し倒してきたアh、陸奥守。太ももに跨り「うっはっは、どうじゃぁ!」なんて喜んでいる。頭ぶつけていたい。

「お、丁度いいや。薙刀持って行くぞ」
「おい、まて主」

 傍観していた主が軽々と俺の本体を持って手入れ部屋に向かって言ってしまった。あーあ、これじゃあ出陣できないじゃないか。
 上体だけ起こせば思ったより顔が近くなって、ギシリと体がこわばる陸奥守を無視して抱き上げる。俺の部屋につくまであわあわと耳元で煩かったが部屋につきそこらに放り出す頃には顔を真っ赤にして硬直していた。押入れから掛布団を一枚取り出してそれに包まり眠りにつけば、その部屋には「え?」という、なんとも間抜けな声が響いた。



04 小さな最年長と大きな最年少(今剣成り代わり×和泉守)

 他人といるのが嫌いで、一人が好き。
 だいたい、他人といたって何も良いことなんかないじゃないか。訳のわかんないことで怒るしこっちの都合なんて考えやしないし、トラブルや面倒事を持ってくるのは全部他人だからだ。だから、他人が嫌いだ。
 だけど生活をする上では他人との交流が必要になってくる。衣食住を得るには誰かに会って会話をしなければいけないから、諦めてなるべく交流しなくて済む道を選び生きトラブルをなるべく減らしてきた。なのに。

「なんだ、こんな所にいやがったのか」
「……いずみのかみ」

 この他人、もとい和泉守は他人との交流を避ける自分になぜか構いに来るのだ。
 なぜか人間だった自分は刀になり面倒の塊でしかない集団生活を強制されているどころか戦争にまで連れて行かれる。これはただの偶然なのか、それとも無邪気な今剣という短刀に成り代わらせるという罰なのだろうか。神は残酷なものだと改めて認識し更に嫌いになった。

「丁度大福をもらったんだ。一緒に食わねえか」
「いらないです」

 甘いものなんか嫌いだ。甘いものは面倒事しか呼び寄せないから。

「まあそんなこと言わずに、っと」
「うわ」

 脇に手を差し入れられたかと思えば持ち上げられ、彼の膝の上に乗せられた。
 逃げようと暴れるものの腹に手を回されて立つことさえできない。誰かが作ったものを食べるのが嫌で食事を断っていたいか、畜生。
 ああああもうめんどくさい。好きに動けない状態も成り代わった小さな体も戦争に出なければいけない環境も成り代わったことがバレたら何されるかわかんない生殺しも妙に熱い腹の手も耳元で煩い心音も彼の赤い耳も。全てがめんどうでしかない。

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