家デートは、飽きちゃった

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    記念アンケート・2位(静臨)




    「シズちゃん、いい事思い付いた!」

    俺の隣に座っている、臨也が立ち上がりそう、声を上げた。

    今日は臨也の家で家デート。
    俺の家のソファーとは全然座り心地が違う。

    情報屋ってそんなに儲かるのか?


    「聞いてる? シズちゃん!」

    考えてたから臨也の話を聞いてなかった。

    「お、おう」

    咄嗟に嘘を付いたが、臨也にはお見通しのようで。

    「絶対聞いてなかったでしょ?」

    「……」

    「明日さ、デートしようよ」

    「は? 今もしてるじゃねぇかよ」

    臨也はいきなり変な事を言い出した。

    「もう、家デートは飽きちゃった」

    「でもよ、一緒に外を歩けないだろ」


    一緒に外を歩けないのは、俺達が俗に言う「恋人」同士でも、世間に知られているのは「犬、猿の中」だ。

    だから、二人で並びながら歩くという事は有り得ない。


    会うのはどちらかの家だ。
    大体は家デートになってしまう。

    「だから、良い案が浮かんだんだよ!」

    「良い案って何だよ」


    「それは、明日のお楽しみ!」

    そう言って、臨也は俺を家から追い出した。

    準備とかなんか言ってたが、追い出す事はねぇだろ…。


    次の日


    臨也に指定された待ち合わせ場所は、池袋駅の東口。

    よりにもよって、池袋。

    俺達が仲が悪い事を、知らない奴は殆ど居ない。

    アイツは何を考えてるんだ…。


    「シズちゃん、ごめんまった?」

    俺が待ち合わせ場所についてから数分後。

    臨也が来た。

    「別に待ってはn……。何だその格好は!」

    呼びかけられたので、振り返ってみると。

    「どう? 似合ってる?」

    女の格好をしていた。


    「俺は元が良いから、何着ても似合うと思うんだよねぇ」

    臨也はそんな事を言ってるが、俺は開いた口が塞がらない状態だ。

    髪は胸の所まで伸びていて、何時ものコート。

    だが、下はスカートと言うどう見ても女の格好だ。

    「に、似合ってる」

    「ありがと」

    「でもよ、スカート短すぎねぇか?」


    長くて細い足がスカートから覗いている。

    「波江から借りた奴だからね」

    「そういや、そうだな」

    臨也が着ているのは、臨也の秘書をしている女が来ている奴だ。

    ネックの長袖にスーツのスカートみたいなやつだ。

    普通に似合ってる。
    これはお世辞なんかじゃない。

    そもそも、俺はお世辞なんか言える人間じゃねぇしな。


    「ねぇ、何処行こうか?」

    「池袋にデートできる所なんてあんのか?」

    「……確かに」

    そこまでは考えてなかったようだ。

    臨也でもそういう事、あるんだな。

    「今日はうろうろ歩いて、シズちゃん家行こうか」

    「はぁ? そしたら何時もと変わらねぇじゃねぇか」

    「二人並んで歩いた事ないでしょ? 俺達」

    「そうだな」

    「俺は並んで歩けたら、今日はそれで満足だよ」


    俺達は、何時も通る道を二人で並んで歩いた。

    明日には、喧嘩をしているんだろうと思いながら…。


    少しでも長く、ゆっくりと、家に向った。

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