「トシィイ! やっと帰って来たか! 和葉ちゃん、ちょっと俺の部屋まで着いてきてくれるか? トシも一緒に!」

帰ってきていきなり、玄関でうろうろしていた近藤さんに抱き付かれた。
ちょっ、ゴリさん重いです!

『ど、どうしたんですか? そんなに慌てて』

「近藤さん、どうかしたのか?」

「どうもこうもないよぉ。とっつぁんが行きなり来て和葉ちゃん連れてこいって! 非番で出掛けてるって言ったら暴れちゃってさぁ」

疲れはてているのはそのせいか……。

てか、大暴れされる程の事を私はしたかな?

「取り敢えず行ってみりゃわかんだろ。荷物は山崎に任せて行くぞ」

『はーい』

ザキごめんね、とか思ったり思わなかったりしながら近藤さんと土方さんに着いて行った。


「とっつぁん!! 和葉ちゃん帰って来たよ!」

近藤さんが自分の部屋の襖を開けると、とっつぁんつまり松平片栗虎が銃をこちらに向けてるのが伺えた。

「ちょっ、そんな物騒なもの早くしまってよ!」

「てめぇが連れてくんの遅いからだろぉ? オジサン待ちくたびれちゃったよー? で、肝心の和葉ちゃんは?」

おら行け、と、生け贄と言わんばかりに土方さんからの視線を受け、背を押された。

押さなくてもいいじゃんか!
もしかしたら戸籍のない私を殺しに来たかもしれないのに!!

『……は、始めまして。須永 和葉です』

取り敢えず第1印象が大事だよね!

「おー、君が和葉ちゃんねぇ……」

じろじろと上から下、下から上へと舐め回すかのように見られてる。
マジで私、何かしたのかな。

とっつぁんは何やらかすかわからないから恐い。

「……よし! オジサンの事をパパと呼んでおくれ!!」

『…………へっ?』

さっきまでの試すかのような視線はなくなり、キャバクラへ行っている時の顔や栗子ちゃんに向ける視線に変わった。

「それから和葉ちゃん用の隊服、オジチャンが用意しちゃったよぉ。サイズピッタリだと思うからさっさと着てきちゃいなさいっ!!」

あれぇ? とっつぁんってこんなキャラだったっけ?

『あ、はい……。着替えてきます』

何故か憐れみの視線を近藤さんと土方さんからの感じられる。

取り敢えず隊服は着てみたかったので、ラッキーだと思うことにしよう。

近藤さんの部屋を出て1番近い厠に入る。
一応来賓用に女子トイレがあるが、今は誰も入ってこないだろうし、個室に入らず着替えてしまった……けど。

『何この隊服ぅううう?!!』

想像していたみんなと同じ隊服じゃなかった。

『き、着替えましたけど……。何でこんな隊服なんですか』

物凄く不服な顔でとっつぁんに話し掛けた。

こんなとは元々着てきたセーラー服に似せたのか、みんなとは違いスカートだったのだ。

「いやぁ、こんな男ばっかの真選組に花を添えてやろうかとなぁ! でも! パパの和葉ちゃんのパンツは誰にも見させねぇから! スパッツ用意しておいたでしょ」

いつ誰がとっつぁんの娘になると了承しましたか、私は。


一応ヒラヒラと揺れるスカートの下にはスパッツ、そしてニーハイ。
上は土方さんや総悟と同じ隊長格の羽織だけどね?
なんでよりにもよって、動きづらいスカートなんだ!

「和葉ちゃん似合ってるじゃぁないか! なぁっ、トシ!」

「いや、これじゃあ他の隊士の気が散って……」

土方さんが咎めようとしてくれてたのに、バカ親父が口を挟んだ。

「土方ぁ、こりゃ敵を欺くには味方からって言うだろぉ? オジサンだって考え無しに絶対領域見てる訳じゃねぇんだよ」

いや、これ見たいだけだよね?
絶対領域が見たいだけですよね!?

『松平さん、ズボンは用意してもらえませんか……』

「パパって呼んでって、いたよねぇ?」

あれ、なんか、拳銃こっち向いてね?
私、脅されてね?

『パ、パパ……。ズボンはダメ?』

こうなったらやけくそじゃぁあああ!

こういう時こそ女を使うんじゃあ!!

「……しかなあいなぁ、短パンならパパ許しちゃうっ」

……あれ、あんまり効果なかった。
ガックシっと肩を落とし、もうそれで良いですと言うととっつぁんは出来たら送ると言ってそのまま帰っていった。


「まあ、あれだドンマイ」

肩に手を置かれ慰める土方さん。

『土方さんには慰められたくねぇええ!!』

「折角慰めてやってるのに、何だてめぇえ!!」

もうどうにもならないので、隊服はもう何も気にしないでおくことにした。
浮きだつ隊士が出たら自分で絞めに回ったため、和葉の隊服の話しをする奴は出なくなった。


後日、届いた隊服の短パンは超絶に短く、届いてから3日間は誰彼構わず出会した隊士を痛め付けたと言われたり言われてなかったり……。

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