めんどくせェ男

木ノ葉の午後。

一楽ラーメンの前。

暖簾が揺れていた。

店の中では――

うずまきナルト がラーメンをすすっている。

「うめぇってばよ!」

向かいには

うちはオビト。

高専の黒い服。

写輪眼は出していない。

普通の黒目。

一見すれば、ただの青年だ。

オビトは箸を持ったまま呟く。

「……なんか久しぶりだな」

木ノ葉の飯。

平和な空気。

その時だった。

暖簾が勢いよくめくれる。

「ナルトー!」

入ってきたのは

山中いの。

その後ろには

奈良シカマル
秋道チョウジ。

いのが言う。

「さっき聞いたんだけど!」

「戦争の黒幕が生きてるって本当!?」

ナルトが口いっぱいに麺を入れたまま言う。

「ぶふっ!」

「ちょ、ちょっと待ってってばよ!」

いのの視線が横へ動く。

そして――止まる。

オビトを見る。

数秒。

沈黙。

いのが言った。

「……え」

もう一度見る。

「え?」

ナルトが指差す。

「紹介するってばよ!」

「こっちが――」

ナルトは胸を張った。

「第四次忍界大戦の首謀者!」

オビトが即ツッコむ。

「その紹介やめろ」

ナルトは気にせず続ける。

「うちはオビトだってばよ!」

いのは固まっていた。

ゆっくり言う。

「……黒幕?」

「この人が?」

ナルト

「そう!」

いの

「……」

オビト

「……」

いのが指差す。

「イケメンじゃない」

店の空気が止まった。

オビト

「そこ?」

ナルト

「そこ!?」

チョウジが横から覗き込む。

「本当だ」

「普通にイケメンだね」

オビトは箸を置いた。

「お前らな」

シカマルがため息をつく。

「めんどくせぇ流れになってきた」

いのはまだ見ている。

ぐるっと一周。

「ちょっと待って」

「ナルト」

ナルト

「なんだってばよ」

いの

「この人」

「本当にあの黒幕?」

ナルトが頷く。

「そうだってばよ!」

いの

「嘘でしょ」

オビト

「俺もそう思う」

ナルト

「思うな!」

チョウジが普通に隣に座った。

「オビトさん」

「何食べてるの?」

オビト

「ラーメン」

チョウジ

「美味しい?」

オビト

「ああ」

チョウジは頷く。

「じゃあ僕も同じの頼もう」

普通だった。

ナルトが笑う。

「チョウジはこういうやつなんだってばよ」

オビトは少し笑った。

「いいな」

「こういうの」

いのがまだ見ている。

「いやでも」

「戦争の黒幕よ?」

オビトが肩をすくめた。

「俺だけど」

「俺じゃねぇよ」

いの

「?」

オビト

「前世の俺だ」

「今の俺じゃねぇ」

いの

「……」

ナルトが頷く。

「そうそう!」

「今のオビトは普通のやつ!」

オビト

「普通ではねぇ」

シカマルが口を開いた。

「ナルト」

ナルト

「なんだってば」

シカマルはオビトを見る。

じっと。

観察するように。

そして言った。

「……確かに」

「めんどくせぇ男だ」

オビト

「お前もな」

その時。

店の奥で静かにラーメンを食べている男がいた。

うちはサスケ。

誰も気づいていない。

サスケは静かに二人を見ていた。

ナルト。

オビト。

そして思う。

(……なるほどな)

カグヤ戦。

命を賭けて戦った男。

だが今は――

ただラーメンを食べている。

サスケは小さく呟いた。

「……変わったな」

その時。

ナルトが叫ぶ。

「大将!」

「替え玉!」

オビトが反射で言った。

「バリカタで」

沈黙。

全員がオビトを見る。

オビト

「……」

オビト

「あ」

ナルト

「今なんて言ったってばよ」

いの

「替え玉?」

チョウジ

「バリカタ?」

シカマル

「ラーメン通かよ」

オビトは頭をかいた。

「……あー」

「つい」

ナルトが笑った。

「やっぱ面白いやつだってばよ!」

店の中に笑い声が広がった。

その外。

屋根の上。

小さな呪霊が一体。

ナルト達を見ていた。

オビトの目だけがそれを見る。

(……またか)

オビトは箸を持つ。

そして。

指先をほんの少し動かした。

呪霊は消えた。

誰も気づかない。

ただ一人。

サスケだけが。

(……今)

(何をした)

静かにオビトを見ていた。



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