白い瞳の誇り

木ノ葉の空は静かだった。

第四次忍界大戦は終わった。

だが――

失われたものは戻らない。

その一つが

日向ネジ
だった。



日向屋敷の門の前。

立っているのは

うずまきナルト
そして

うちはオビト。

少し後ろに

はたけカカシ。

ナルトが小さく息を吐いた。

「久しぶりだってばよ……」

オビトは屋敷を見上げる。

立派な屋敷だ。

だが――

オビトの視界には別のものが見えていた。

低級呪霊。

蠅虫。

影のようなもの。

屋敷の周囲にいくつも漂っている。

(……多いな)

戦争。

死。

悲しみ。

それが呪いを生む。

オビトは何も言わない。

指先を軽く振る。

見えない斬撃。

呪霊は音もなく消えた。

ナルトもカカシも気づかない。



門が開く。

現れたのは

日向ヒナタ。

「ナルトくん……」

ナルトが笑う。

「ヒナタ!」

ヒナタの視線がオビトへ向いた。

少し戸惑う。

ナルトから話は聞いていた。

戦争で死んだはずの男。

それが今、木ノ葉にいる――と。

ヒナタは丁寧に頭を下げた。

「うちはオビトさん……」

オビトも軽く頷く。

「日向ヒナタ」

ヒナタは一瞬だけ白眼を開いた。

チャクラの流れを確認する。

だが――

すぐに眉がわずかに寄る。

(……何だろう)

チャクラはある。

だが、それだけじゃない。

何か別のものが混ざっているような感覚。

ヒナタはすぐ白眼を閉じた。

「父上が、お待ちしています」



庭の奥。

静かに立つ男。

日向ヒアシ。

日向家当主。

ヒアシはオビトを見る。

「うちはオビト」

「話は聞いている」

責める声ではない。

だが重い。

オビトは真っ直ぐ答える。

「……ああ」

ヒアシが言った。

「ネジは死んだ」

ナルトの拳が握られる。

ヒアシは続ける。

「だが」

「ネジは後悔していなかった」

ヒナタが静かに頷く。

あの時。

日向ネジ は笑っていた。

運命ではない。

自分で選んだ。

守るための死。

ヒアシは言う。

「ネジは」

「自由だった」

オビトは黙って聞いていた。

胸の奥が少し痛む。

(……リン)

守れなかった人。

変えられなかった運命。

ネジの死は、それと重なる。

オビトが言う。

「……あいつは」

「立派だった」

ナルトが少し驚く。

オビトが続ける。

「俺なら」

「多分できなかった」

ヒナタが小さく言う。

「そんなこと……」

オビトは首を振った。

「ある」

少し笑う。

「人はそんなに強くない」

ヒアシは静かに頷いた。

「だからこそ」

「誇りがある」

風が庭を通り抜ける。

ヒナタが言った。

「ネジ兄さんのお墓……行きますか?」

ナルトは強く頷く。

「行く!」

オビトも言う。

「……俺も行く」

ヒアシはそれを止めなかった。



日向家の墓地。

白い石に刻まれた名。

日向ネジ

ナルトがしゃがむ。

「ネジ……」

ヒナタは静かに手を合わせる。

カカシも黙祷する。

オビトは少し離れて立っていた。

空を見上げる。

(……リン)

守れなかった背中。

守れなかった未来。

その時。

オビトの視界の端。

黒い影が動いた。

墓地の奥。

人の形をした呪霊。

二級。

悲しみと後悔の塊。

(……やっぱりな)

墓地は呪いが溜まりやすい。

オビトは小さく息を吐いた。

そして

指を一振り。

見えない斬撃。

呪霊は静かに崩れる。

誰も気づかない。

ただ一瞬。

ヒナタの視線が動いた。

(……今)

(何か……)

だが何も見えない。

オビトは墓石を見る。

「……ネジ」

小さく呟く。

「いい死に方だった」

風が吹く。

木の葉が舞う。

戦争は終わった。

だが――

世界の呪いは

まだ消えていない。

そのすべてを見ているのは

今のところ

オビト一人だけだった。


〆栞
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