砂の風影
「侵入者か」
低い声だった。
静かなのに、圧がある。
赤い髪の男が、俺をまっすぐ見据えていた。
我愛羅。
間違いない。
かつて**守鶴**を宿し、
一尾の人柱力として孤独を背負っていた少年。
そして今は――
砂隠れの里、五代目風影。
その護衛たちが、すでに臨戦態勢に入っていた。
砂忍が二人、俺を囲むように立つ。
背後の巨大な瓢箪が軋む。
さらさらと。
砂が静かに宙へ浮いた。
(うわぁ)
完全に。
警戒されている。
まあ当然だ。
木ノ葉の門前に突然現れた不審者。
しかも忍装束ですらない。
黒い詰襟の制服。
高専の制服。
どう見ても場違いだった。
俺はゆっくり両手を上げた。
「待て待て。落ち着け」
敵意はない、というポーズ。
だが砂は止まらない。
我愛羅の目が細くなる。
「ここは木ノ葉の里の門前だ」
静かな声。
だがその奥に、はっきりとした警戒がある。
「何者だ」
(……だよな)
俺は内心でため息をついた。
さて。
どう説明する?
「実は異世界から来ました」
――怪しい。
「さっきまで呪術師やってました」
――もっと怪しい。
「俺、うちはオビトです」
――最悪だ。
死んだはずの男が門前に立ってるとか、
完全にホラー案件である。
俺は空を見上げた。
青い空。
木ノ葉の匂い。
懐かしい風。
(……マジで来たのか)
いや違う。
これは帰還じゃない。
俺は覚えている。
はっきりと。
**大筒木カグヤ**が放った術。
共殺しの灰骨。
体が崩れていく感覚。
そして。
**うずまきナルト**に言った最後の言葉。
『お前は火影になれ』
その後。
呪術師として生きた十八年。
全部、本当に生きた人生だ。
つまりこれは――
三度目の人生。
しかも今は。
第四次忍界大戦が終わったばかりの頃。
里の復興もまだ始まっていない時代。
(なんでこのタイミングなんだよ)
俺は頭を掻いた。
「……迷子だ」
とりあえず言ってみた。
空気が凍った。
砂忍たちの視線がさらに鋭くなる。
我愛羅の砂がわずかに膨らんだ。
(失敗)
そりゃそうだ。
門前に突然現れる迷子がいるか。
「もう一度聞く」
我愛羅が一歩前に出る。
砂が俺の足元に集まり始めた。
「何者だ」
(あーもう)
ここで戦うのはまずい。
風影相手に戦闘なんて、完全に外交問題だ。
しかも今の俺は、忍びとしての登録すらない。
つまり里から見れば、完全に外敵。
俺は息を吐いた。
「……名乗ったら余計面倒になるんだけどな」
我愛羅の目がわずかに動く。
「それでも聞くか?」
砂が静かに回る。
答えは決まっているらしい。
俺は肩を竦めた。
「分かった」
ゆっくり口を開く。
「俺の名前は――」
その時だった。
門の上から声が飛んだ。
「おい!」
木ノ葉の門番が慌てて降りてくる。
「風影様!」
どうやら向こうも騒ぎに気付いたらしい。
当然だ。
門前で砂が浮いていれば、ただ事じゃない。
そのうちの一人が俺を指差した。
「そいつ、さっき突然――」
言葉が止まった。
俺を見て。
固まる。
「……え?」
もう一人も同じ顔になった。
二人は顔を見合わせる。
それから、もう一度俺を見る。
「……いや」
「まさかな」
なんだその反応。
嫌な予感がした。
中忍の一人が恐る恐る言う。
「……お前」
指が震えている。
「名前、言ってみろ」
(あー)
詰んだ。
俺は観念した。
「うちは」
一拍。
「オビト」
空気が止まった。
砂忍たちがざわめく。
我愛羅の目が細くなる。
門番二人は――
完全に青ざめていた。
「は?」
一人が言った。
「……死んだだろ」
正論である。
俺もそう思う。
だから俺は肩を竦めた。
「俺もそう思う」
数秒の沈黙。
そして。
門番が絶叫した。
「火影様呼べぇぇぇ!!」
門前が一気に騒然となった。
砂忍が構え直す。
我愛羅は無言で俺を見ていた。
まるで。
本当に本人か見極めるように。
(やっぱそうなるよな)
俺は火影岩を見上げた。
そこに刻まれている顔。
初代。
二代目。
三代目。
四代目。
そして――
五代目、綱手。
(……そっか)
今はまだ。
六代目への引き継ぎ段階。
正式な火影は、まだ綱手だ。
俺は小さく息を吐いた。
その時、ふと思う。
先に来るのは誰だろうな。
火影本人か。
それとも――
**はたけカカシ**か。
風が吹く。
懐かしい木ノ葉の匂い。
俺は小さく呟いた。
「……久しぶりだな」
木ノ葉。
そして。
三度目の人生が、動き出した。
低い声だった。
静かなのに、圧がある。
赤い髪の男が、俺をまっすぐ見据えていた。
我愛羅。
間違いない。
かつて**守鶴**を宿し、
一尾の人柱力として孤独を背負っていた少年。
そして今は――
砂隠れの里、五代目風影。
その護衛たちが、すでに臨戦態勢に入っていた。
砂忍が二人、俺を囲むように立つ。
背後の巨大な瓢箪が軋む。
さらさらと。
砂が静かに宙へ浮いた。
(うわぁ)
完全に。
警戒されている。
まあ当然だ。
木ノ葉の門前に突然現れた不審者。
しかも忍装束ですらない。
黒い詰襟の制服。
高専の制服。
どう見ても場違いだった。
俺はゆっくり両手を上げた。
「待て待て。落ち着け」
敵意はない、というポーズ。
だが砂は止まらない。
我愛羅の目が細くなる。
「ここは木ノ葉の里の門前だ」
静かな声。
だがその奥に、はっきりとした警戒がある。
「何者だ」
(……だよな)
俺は内心でため息をついた。
さて。
どう説明する?
「実は異世界から来ました」
――怪しい。
「さっきまで呪術師やってました」
――もっと怪しい。
「俺、うちはオビトです」
――最悪だ。
死んだはずの男が門前に立ってるとか、
完全にホラー案件である。
俺は空を見上げた。
青い空。
木ノ葉の匂い。
懐かしい風。
(……マジで来たのか)
いや違う。
これは帰還じゃない。
俺は覚えている。
はっきりと。
**大筒木カグヤ**が放った術。
共殺しの灰骨。
体が崩れていく感覚。
そして。
**うずまきナルト**に言った最後の言葉。
『お前は火影になれ』
その後。
呪術師として生きた十八年。
全部、本当に生きた人生だ。
つまりこれは――
三度目の人生。
しかも今は。
第四次忍界大戦が終わったばかりの頃。
里の復興もまだ始まっていない時代。
(なんでこのタイミングなんだよ)
俺は頭を掻いた。
「……迷子だ」
とりあえず言ってみた。
空気が凍った。
砂忍たちの視線がさらに鋭くなる。
我愛羅の砂がわずかに膨らんだ。
(失敗)
そりゃそうだ。
門前に突然現れる迷子がいるか。
「もう一度聞く」
我愛羅が一歩前に出る。
砂が俺の足元に集まり始めた。
「何者だ」
(あーもう)
ここで戦うのはまずい。
風影相手に戦闘なんて、完全に外交問題だ。
しかも今の俺は、忍びとしての登録すらない。
つまり里から見れば、完全に外敵。
俺は息を吐いた。
「……名乗ったら余計面倒になるんだけどな」
我愛羅の目がわずかに動く。
「それでも聞くか?」
砂が静かに回る。
答えは決まっているらしい。
俺は肩を竦めた。
「分かった」
ゆっくり口を開く。
「俺の名前は――」
その時だった。
門の上から声が飛んだ。
「おい!」
木ノ葉の門番が慌てて降りてくる。
「風影様!」
どうやら向こうも騒ぎに気付いたらしい。
当然だ。
門前で砂が浮いていれば、ただ事じゃない。
そのうちの一人が俺を指差した。
「そいつ、さっき突然――」
言葉が止まった。
俺を見て。
固まる。
「……え?」
もう一人も同じ顔になった。
二人は顔を見合わせる。
それから、もう一度俺を見る。
「……いや」
「まさかな」
なんだその反応。
嫌な予感がした。
中忍の一人が恐る恐る言う。
「……お前」
指が震えている。
「名前、言ってみろ」
(あー)
詰んだ。
俺は観念した。
「うちは」
一拍。
「オビト」
空気が止まった。
砂忍たちがざわめく。
我愛羅の目が細くなる。
門番二人は――
完全に青ざめていた。
「は?」
一人が言った。
「……死んだだろ」
正論である。
俺もそう思う。
だから俺は肩を竦めた。
「俺もそう思う」
数秒の沈黙。
そして。
門番が絶叫した。
「火影様呼べぇぇぇ!!」
門前が一気に騒然となった。
砂忍が構え直す。
我愛羅は無言で俺を見ていた。
まるで。
本当に本人か見極めるように。
(やっぱそうなるよな)
俺は火影岩を見上げた。
そこに刻まれている顔。
初代。
二代目。
三代目。
四代目。
そして――
五代目、綱手。
(……そっか)
今はまだ。
六代目への引き継ぎ段階。
正式な火影は、まだ綱手だ。
俺は小さく息を吐いた。
その時、ふと思う。
先に来るのは誰だろうな。
火影本人か。
それとも――
**はたけカカシ**か。
風が吹く。
懐かしい木ノ葉の匂い。
俺は小さく呟いた。
「……久しぶりだな」
木ノ葉。
そして。
三度目の人生が、動き出した。
【〆栞】