五代目火影
門の奥から、怒鳴り声が響いた。
「どこのどいつだい!!」
重い足音が石畳を叩く。
木ノ葉の忍たちが一斉に道を開いた。
現れたのは――
綱手。
木ノ葉隠れの里、五代目火影。
金色の髪を揺らしながら、堂々と門前へ歩いてくる。
その後ろには補佐役の忍が数名。
だが綱手の視線はまっすぐ、俺へ向けられていた。
俺のすぐ横には腕を組んで立つ男。
はたけカカシ。
警戒しているようで、どこか静かに様子を見ている。
「……お前か」
綱手が言った。
低い声。
怒気を含んでいる。
俺は軽く手を上げた。
「どうも」
その瞬間。
綱手の拳が振り上がった。
「門前で騒ぎを起こしてる馬鹿は!!」
地面を蹴る。
一瞬で距離を詰めてくる。
速い。
俺は慌てて後ろへ跳んだ。
拳が振り下ろされる。
轟音。
石畳が粉々に砕け散った。
門前の忍たちがざわめく。
俺は着地して苦笑した。
「いきなりですか」
綱手が睨む。
「当然だ」
一歩、近づく。
「正体不明の忍が木ノ葉の門前に現れた」
さらに一歩。
「名乗れ」
短い命令だった。
俺は肩を竦めた。
「その前に」
少し笑う。
「久しぶりです、綱手様」
綱手の足が止まった。
「……あ?」
低い声。
「今」
目が細くなる。
「私の名前を呼んだな」
「呼びました」
俺は頷く。
横でカカシが小さく息を吐いた。
「綱手様」
「黙ってろカカシ」
即答だった。
綱手は俺を睨む。
「もう一度聞く」
拳を握る。
「お前は誰だ」
俺は迷わなかった。
「うちはオビト」
沈黙。
門前の空気が凍りついた。
砂忍たちがざわめく。
後ろで砂がわずかに揺れる。
**我愛羅**の視線が俺に向いた。
綱手は腕を組む。
「……ほう」
低い声。
「死んだ忍の名前を騙るか」
俺は苦笑する。
「まあ、そうなりますよね」
綱手の顎が動く。
「証明しろ」
「簡単ですよ」
俺は右目を細めた。
万華鏡が回る。
空間が歪む。
渦が生まれる。
空気が巻き込まれる。
神威。
門前がざわめいた。
木ノ葉の忍たちが息を呑む。
綱手の目がわずかに見開かれる。
カカシが静かに言った。
「……綱手様」
綱手は目を逸らさないまま答える。
「分かってる」
そして言った。
「カカシ」
「はい」
「お前はどう思う」
カカシは少しだけ黙った。
それから俺を見る。
目を細める。
「正直」
小さく息を吐く。
「信じたくありません」
俺は笑った。
「ひどいな」
カカシは続ける。
「でも」
俺の目を見る。
「神威は」
短く言った。
「オビトの術です」
沈黙。
綱手が動いた。
ゆっくりと俺の前まで歩いてくる。
距離、二歩。
掌が光る。
医療チャクラ。
「動くな」
俺は両手を上げた。
「どうぞ」
綱手の手が胸に触れる。
チャクラが流れ込む。
身体の内部を探るように。
静かな時間が流れる。
綱手の眉がわずかに動いた。
「……妙だね」
カカシが言う。
「何がです」
綱手はさらにチャクラを流した。
そして言った。
「細胞年齢」
一拍。
「十八前後」
門前がざわめく。
カカシの目がわずかに見開かれた。
綱手は続ける。
「改造の痕跡はない」
「柱間細胞もなし」
俺は肩を竦めた。
「健康体ですよ」
綱手はまだチャクラを流している。
そして眉をひそめた。
「だが」
俺を見る。
「チャクラの質が異様だ」
カカシが目を細める。
「どういう意味です」
綱手は答える。
「忍としては若すぎる」
それでも。
「影クラスに近い」
門前の忍たちがざわつく。
俺は苦笑した。
「まあ」
頭を掻く。
「色々ありまして」
綱手はゆっくり手を離した。
長く息を吐く。
そして言う。
「……カカシ」
「はい」
「こいつを火影室に連れてこい」
俺は肩を竦めた。
「尋問ですか」
綱手が睨む。
「当然だ」
そして小さく呟く。
「もし本当にオビトなら」
言葉は途中で止まった。
その時だった。
門の奥から叫び声が響く。
「待ってくれってばよ!!」
聞き覚えのある声。
俺の心臓が跳ねた。
カカシが小さく呟く。
「……最悪のタイミングだ」
門の奥から全速力で走ってくる忍。
金髪。
青い瞳。
その姿を見た瞬間。
俺の口から自然に名前がこぼれた。
「……ナルト」
現れたのは
うずまきナルト。
そして。
ナルトの足が止まる。
その青い瞳が――
俺に
釘付けになった。
門前の空気が凍る。
ナルトの口が、ゆっくり開く。
「……オビト?」
【〆栞】