木ノ葉の闇

木ノ葉の地下。

光の届かない場所。

そこには静寂だけがあった。

足音が響く。

杖の音。

コツ……コツ……

現れたのは、右目を包帯で覆った老人。

志村ダンゾウ。

その前に跪く忍たち。

感情を捨てた顔。

根の忍。

ダンゾウが口を開く。

「報告しろ」

一人の忍が答える。

「忍者アカデミーにて」

「うちはの少年が写輪眼を開眼しました」

ダンゾウの杖が止まる。

「名は」

「うちはオビト」

沈黙。

ダンゾウの目が細くなる。

「うちは、か」

木ノ葉の名門。

だが同時に危険な一族。

そして。

ダンゾウは思い出す。

屋根の上から見た模擬戦。

子供とは思えない体術。

そして。

あの瞳。

「写輪眼」

低い声。

「しかも、あの動き……」

ただ覚醒しただけではない。

戦闘経験がある。

そうとしか思えない。

ダンゾウはゆっくり言った。

「監視を開始しろ」

根の忍が頷く。

「は」

だが。

ダンゾウは続けた。

「ただの監視ではない」

静かな声。

「調べろ」

「何故あの年齢であの戦闘技術を持つ」

杖が床を叩く。

コツ。

「何故**波風ミナト**が接触している」

根の忍の目がわずかに動く。

「……接触を確認?」

ダンゾウは頷いた。

「森で会っていた」

そして。

少しだけ口元が歪む。

「未来を知る」

根の忍が顔を上げる。

ダンゾウは言う。

「少年はそう言ったらしい」

沈黙。

普通なら笑い話。

だが。

ダンゾウは笑わない。

「この世界には」

「禁術がある」

「時空間忍術もある」

「ならば」

「未来を知る術があっても不思議ではない」

根の忍が問う。

「どうしますか」

ダンゾウの目が冷たく光る。

「場合によっては」

静かな声。

「根に引き入れる」

地下の空気がさらに冷える。

根。

そこは忍の感情を捨てる場所。

完全な兵器になる場所。

ダンゾウは続けた。

「もし少年が本当に未来を知るなら」

「それは木ノ葉最大の武器になる」

そして。

「同時に」

杖を強く突く。

コツン。

「最も危険な存在にもなる」

ダンゾウは命じた。

「監視を続けろ」

「報告はすべて私に」

根の忍たちは頭を下げる。

「は」

影が動く。

木ノ葉の闇が。

静かに動き始めた。



その頃。

うちは地区。

屋根の上でオビトは空を見ていた。

うちはオビト。

風が吹く。

そして。

オビトは小さく呟いた。

「……来たな」

気配。

遠く。

完璧に隠している。

普通の忍なら気付かない。

だが。

オビトには分かった。

(根)

未来で何度も見た気配。

(やっぱりダンゾウか)

オビトはため息をついた。

「面倒くさいな」

だが。

表情は落ち着いている。

むしろ少し笑っていた。

(まあいい)

むしろ。

想定より遅い。

オビトは拳を握る。

体の中で。

チャクラ。

そして。

呪力が静かに流れる。

(俺はもう)

ただのガキじゃない。

忍としての人生。

呪術師としての人生。

二つを生きた。

(ダンゾウ)

オビトの瞳が赤く光る。

写輪眼。

「今度は」

静かな声。

「好きにはさせない」

夜の木ノ葉の上で。

未来を知る少年は。

静かに闇と対峙していた。


〆栞
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