闇の勧誘

夜。

木ノ葉の外れ。

森の奥。

月明かりの下で、**うちはオビト**は一人で座っていた。

木の枝に背を預け、空を見ている。

静かな夜。

だが。

オビトは小さくため息をついた。

「……そろそろ出てきたらどうだ?」

沈黙。

風が揺れる。

数秒。

そして。

闇の中から一人の老人が姿を現した。

杖をついた男。

片目を包帯で覆った男。

志村ダンゾウ。

その背後には、感情のない顔の忍が数人。

根。

オビトは肩をすくめた。

「やっぱりあんたか」

ダンゾウはオビトを見下ろす。

「気付いていたか」

オビトは笑う。

「監視されてる気配くらい分かる」

ダンゾウの目が細くなる。

(面白い)

普通の子供なら怯える。

だがこの少年は違う。

落ち着いている。

まるで。

忍の会談のようだ。

ダンゾウは言った。

「うちはオビト」

オビトは手を振る。

「自己紹介はいい」

「用件は?」

ダンゾウは少し黙った。

そして。

単刀直入に言う。

「私の部下になれ」

空気が止まった。

オビトは少し笑う。

「根か」

ダンゾウの眉がわずかに動く。

「知っているのか」

オビトは肩をすくめた。

「まあな」

未来で何度も見た組織だ。

ダンゾウは続ける。

「お前の力」

「そして写輪眼」

「木ノ葉のために使うべきだ」

オビトは黙って聞いていた。

ダンゾウはさらに言う。

「波風ミナトのような甘い忍では」

「この世界は守れない」

静かな声。

だが。

その言葉には強い確信がある。

「忍とは」

「感情を捨てるものだ」

「里のために」

「必要なら仲間すら切り捨てる」

ダンゾウの目が鋭くなる。

「それが本当の忍だ」

沈黙。

風が吹く。

オビトは空を見上げた。

(懐かしいな)

この理屈。

未来で何度も聞いた。

そして。

それがどんな世界を作るか。

知っている。

オビトはゆっくり言った。

「質問していいか?」

ダンゾウは頷く。

「許可する」

オビトは笑った。

「もし」

静かな声。

「そのやり方で里を守ったとして」

ダンゾウは黙る。

オビトは続けた。

「仲間も家族も全部捨てて」

「最後に残るのは何だ?」

ダンゾウの目が冷たくなる。

「里だ」

即答。

オビトは首を振った。

「違う」

そして。

ダンゾウの目を真っ直ぐ見る。

「何も残らない」

沈黙。

空気が重くなる。

ダンゾウの背後で、根の忍がわずかに身構えた。

だが。

オビトは続ける。

「その考え」

「未来で証明される」

ダンゾウの眉が動く。

「未来……か」

オビトは言った。

「あんたのやり方は」

静かな声。

「里を壊す」

ダンゾウの杖が地面を叩く。

コツ。

「言うな」

低い声。

「子供が知ったような口を」

オビトは笑った。

「残念」

そして。

ゆっくり言う。

「知ってるんだよ」

ダンゾウの目が細くなる。

オビトは続けた。

「うちは一族」

「九尾事件」

「そして――」

ほんの一瞬。

言葉を止める。

「その右腕」

ダンゾウの背後の根が一斉に殺気を出した。

ダンゾウの表情が止まる。

(なぜ)

この少年が。

そこまで知っている。

沈黙。

そして。

ダンゾウはゆっくり言った。

「……やはり危険だな」

オビトは肩をすくめる。

「だろ?」

だが。

ダンゾウは笑った。

「だからこそ」

「欲しい」

静かな声。

「お前のような忍こそ」

「木ノ葉には必要だ」

オビトは少し考えた。

そして。

笑った。

「断る」

即答。

ダンゾウの目が細くなる。

オビトは立ち上がる。

月明かりの中。

写輪眼が赤く光る。

「俺は」

静かな声。

「俺のやり方で木ノ葉を守る」

風が森を抜ける。

ダンゾウは数秒オビトを見ていた。

そして。

背を向けた。

「……監視を続けろ」

根の忍たちが頷く。

オビトは小さく呟いた。

「まあ」

空を見る。

「こうなるよな」

だが。

表情は落ち着いている。

むしろ少し楽しそうだった。

(いいさ)

敵でも。

味方でも。

未来は変える。

オビトの瞳が赤く光る。

うちはの写輪眼。

そして。

二つの世界を生きた忍の覚悟。

忍界の運命は。

静かに変わり始めていた。


〆栞
PREV  |  NEXT
LIST