極秘任務

火影岩の裏。

夜。

木ノ葉でも人がほとんど来ない場所だ。

そこに立っているのは一人の男。

金色の髪。

静かな青い瞳。

木ノ葉最速と呼ばれる忍。

波風ミナト。

ミナトは腕を組みながら空を見上げていた。

(……来たね)

風が揺れる。

次の瞬間。

背後の木の枝に一人の少年が降り立った。

「先生」

振り返らなくても分かる声。

うちはオビト。

ミナトは振り返り、少し笑った。

「時間ぴったりだ」

オビトは肩をすくめる。

「忍なんで」

ミナトは軽く頷いた。

そして本題に入る。

「今日は……任務の話だ」

オビトの表情が少しだけ真剣になる。

ミナトは言った。

「ただし」

静かな声。

「これは極秘任務だ」

風が止まる。

オビトは黙って聞いていた。

ミナトは続ける。

「最近、里の外で妙な動きがある」

オビトの眉がわずかに動く。

ミナトは地面に地図を描いた。

「この辺り」

木ノ葉から数十キロ離れた森。

「正体不明の忍が出入りしている」

「人数は少ない」

「だが」

ミナトの目が鋭くなる。

「気配の消し方が異常だ」

オビトは小さく息を吐いた。

(ああ……)

未来の記憶。

いくつかの可能性が浮かぶ。

ダンゾウの根。

他里のスパイ。

あるいは――

「うちは関係?」

オビトが聞く。

ミナトは少し驚いた顔をした。

「どうしてそう思う?」

オビトは誤魔化す。

「勘」

ミナトは少し笑った。

「君の勘は当たることが多い」

そして真剣な顔になる。

「正確には分からない」

「だが」

「うちはの写輪眼を使った形跡がある」

沈黙。

オビトの瞳がわずかに細くなる。

(やっぱり)

未来の断片が頭をよぎる。

ミナトは言った。

「この任務」

「普通なら上忍チームを送る」

オビトを見る。

「だが」

「君に頼みたい」

オビトは少し笑った。

「俺一人?」

ミナトは首を振る。

「違う」

そして。

もう一人の名前を言った。

「**はたけカカシ**だ」

オビトは眉を上げた。

「カカシ?」

ミナトは頷く。

「君たちはまだアカデミー生だ」

「だからこそ」

「敵は警戒しない」

オビトは少し考えた。

確かに合理的だ。

ミナトは続ける。

「任務内容は三つ」

指を立てる。

「一つ」

「偵察」

「二つ」

「敵の正体確認」

「三つ」

「危険なら即撤退」

ミナトの声が低くなる。

「絶対に無理はするな」

オビトは少し笑う。

「先生」

ミナトを見る。

「俺」

「結構強いよ?」

ミナトは笑った。

「知ってる」

そして真剣な顔になる。

「でも」

静かな声。

「君はまだ子供だ」

その言葉に。

オビトは少し黙った。

二つの人生。

戦争。

死。

それでも。

今の体はまだ少年だ。

ミナトは続ける。

「もう一つ」

オビトを見る。

「これは任務というより」

「お願いだ」

オビトは首を傾げる。

ミナトは言った。

「カカシを守ってほしい」

オビトは一瞬固まった。

「……は?」

ミナトは少し苦笑した。

「彼は天才だ」

「でも」

「一人で抱え込みすぎる」

オビトは小さく笑った。

「それは知ってる」

未来でも同じだった。

ミナトは続ける。

「君なら」

「彼を止められる」

沈黙。

夜風が吹く。

オビトは空を見上げた。

(カカシを守る)

前の人生では。

守れなかった。

リンも。

カカシも。

全部。

失った。

オビトはゆっくり息を吐く。

そして。

ミナトを見た。

「分かった」

短い答え。

ミナトは頷く。

「ありがとう」

そして最後に言った。

「出発は明日」

「カカシには私から伝える」

オビトは木の枝に飛び乗った。

「了解」

そして。

消える直前。

オビトは小さく呟く。

「先生」

ミナトが顔を上げる。

オビトは笑った。

「未来」

「少しずつ変わってる」

ミナトは少し驚いた。

だが。

何も聞かなかった。

風が吹く。

オビトの姿はもうない。

ミナトは静かに空を見上げた。

(未来か……)

そして。

小さく笑った。

「楽しみだね」

忍界の運命が。

静かに動き始めていた。



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