闇に潜む影

地下。

光の届かない空間。

巨大な洞窟の奥。

無数の柱のように伸びる白い根。

その中心に、椅子のような岩があった。

そこに座る一人の老人。

白髪。

深い皺。

そして、赤く光る瞳。

うちはマダラ。

老人は静かに目を閉じていた。

その前に、一人の忍が跪いている。

「報告します」

低い声。

「木ノ葉の偵察任務により、部隊は壊滅」

マダラの瞳がゆっくり開く。

「ほう」

「誰だ」

忍は答える。

「アカデミー生」

沈黙。

洞窟の空気が止まる。

マダラの片眉がわずかに動いた。

「……子供?」

忍は続ける。

「一人は」

「銀髪」

「天才忍者」

はたけカカシ。

マダラは小さく鼻を鳴らす。

「旗木の倅か」

興味はない。

だが。

忍は続けた。

「もう一人」

少し迷う。

「黒髪」

「うちは」

沈黙。

マダラの目が細くなる。

「名は」

忍は答えた。

「うちはオビト」

その瞬間。

マダラの指が止まった。

静かな声。

「……もう一度言え」

忍は繰り返す。

「うちはオビト」

洞窟の奥。

巨大な影が動いた。

マダラはゆっくり立ち上がる。

年老いた体。

だが。

その瞳は鋭い。

「面白い」

小さく呟く。

忍が続ける。

「その少年」

「写輪眼を使用」

「さらに」

迷う。

「未知の術を使いました」

マダラの目が細くなる。

「未知?」

忍は言う。

「血を操る術」

マダラの瞳がわずかに光る。

「血……」

(聞いたことがない)

忍はさらに言った。

「そして」

「戦闘能力」

「上忍級」

洞窟に沈黙が落ちた。

マダラはゆっくり笑った。

「くく……」

低い笑い。

「アカデミー生が上忍級」

そして。

静かに言う。

「あり得ん」

だが。

報告の忍は嘘をついていない。

マダラは考える。

(うちはオビト)

その名。

本来なら。

ただの落ちこぼれ。

平凡な少年。

未来では。

岩に潰され。

闇に堕ち。

そして。

――自分の駒になるはずの男。

だが。

マダラの瞳が細くなる。

(違う)

このオビトは。

「最初から強すぎる」

未来が変わっている。

マダラは空を見るように天井を見た。

「誰だ」

静かな声。

「誰が盤面を動かした」

忍界は巨大な将棋盤。

駒は決まっている。

だが。

このオビトは。

配置が違う。

マダラは笑った。

「面白い」

そして。

ゆっくり言う。

「監視を続けろ」

忍が頭を下げる。

「は」

マダラはさらに言う。

「必要なら」

「接触する」

洞窟の空気が重くなる。

マダラの瞳が赤く光る。

「うちはオビト」

小さく呟く。

「本来なら」

「私の後継者になる男」

沈黙。

そして。

マダラは笑った。

「だが」

「この駒は」

「最初から盤面を知っているようだ」

興味。

これは何十年ぶりの感覚だ。

マダラは椅子に戻る。

そして静かに言った。

「見せてみろ」

「うちはの少年」

闇の中で。

マダラの写輪眼がゆっくり回る。

「この忍界を」

「どう変えるのかを」

その頃。

遠く離れた森。

オビトは空を見ていた。

理由は分からない。

だが。

背筋に寒気が走る。

オビトは小さく呟く。

「……見られてる」

写輪眼がゆっくり回る。

未来の敵。

忍界最大の黒幕。

二人の運命は。

まだ出会っていない。

だが。

確実に。

近づいていた。


〆栞
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