報告書に残らない違和感

夕方。

木ノ葉の火影塔。

任務帰還の鐘が鳴る頃。

廊下を二人の少年が歩いていた。

**はたけカカシ**と
うちはオビト。

カカシが静かに言う。

「ミナト先生が呼んでる」

オビトは肩を回した。

「報告だろ」

「まあな」

二人は扉の前に立つ。

コンコン。

「失礼します」

扉を開けると――

机の前に立っていたのは金髪の上忍。

波風ミナト。

ミナトは振り返り、優しく笑った。

「おかえり」

二人は軽く頭を下げる。

ミナトは椅子に座り、手を組んだ。

「任務報告を聞こう」

カカシが前に出る。

「敵は四人」

「一人は移植写輪眼」

ミナトの目が細くなる。

「写輪眼……」

カカシは続ける。

「戦闘になりました」

「三人は戦闘不能」

「一人は毒で自害」

ミナトは静かに頷いた。

「君たちは無事か?」

オビトが笑う。

「余裕」

カカシは少しだけため息をつく。

「ほとんどオビトが倒しました」

ミナトは一瞬だけ驚いた顔をしたが、すぐ戻る。

「そうか」

だが。

ミナトの視線は鋭くなった。

「その写輪眼」

「どんな感じだった?」

オビトが答える。

「粗悪品」

ミナトの眉がわずかに動く。

オビトは続ける。

「チャクラの流れが不自然」

「写輪眼を無理やり使ってる感じ」

ミナトは机を指で軽く叩いた。

コツ。

コツ。

静かな音。

カカシが言う。

「さらに」

「敵はこう言いました」

ミナトが顔を上げる。

カカシはその言葉を思い出す。

「計画はもう始まっている」

部屋の空気が少し重くなる。

ミナトはしばらく黙っていた。

そして。

ゆっくり言った。

「なるほど」

オビトが聞く。

「何か分かった?」

ミナトは立ち上がる。

窓の外を見る。

火影岩。

夕焼けの木ノ葉。

そして。

静かに言う。

「この任務」

振り向く。

「思っていたより危険だ」

カカシが眉を寄せる。

「どういう意味ですか」

ミナトは言った。

「普通」

指を立てる。

「写輪眼は移植できる」

カカシが頷く。

「はい」

「だが」

ミナトの目が鋭くなる。

「子供の偵察任務の場所に」

「写輪眼部隊が配置されるのはおかしい」

沈黙。

オビトが小さく言う。

「つまり?」

ミナトは答えた。

「君たちは」

「最初から狙われていた可能性がある」

カカシの目が細くなる。

「罠?」

ミナトは頷く。

「あるいは」

「実験」

その言葉に。

オビトの写輪眼がわずかに回った。

(実験か)

あり得る。

この時代。

写輪眼を研究している人間は少なくない。

ミナトはさらに言う。

「もう一つ」

カカシを見る。

「敵の動き」

「どうだった?」

カカシは少し考えた。

「普通の忍より」

「統制が取れていました」

ミナトは頷く。

「やっぱり」

そして小さく呟く。

「どこかの組織だ」

オビトが言う。

「里?」

ミナトは少し迷った。

そして。

静かに答える。

「可能性はある」

だが。

それ以上は言わない。

証拠がない。

オビトはミナトの表情を見ていた。

(先生)

気付いている。

完全ではない。

だが。

忍界の裏の動きに。

ミナトは二人を見た。

「今回の任務」

「よくやった」

カカシが頭を下げる。

オビトは軽く手を振る。

ミナトは笑った。

「今日は休め」

二人が部屋を出ようとした時。

ミナトが言う。

「オビト」

オビトが振り向く。

ミナトの目は静かだった。

「君の写輪眼」

「いつからだ?」

オビトは少し笑う。

「最近」

ミナトは数秒見つめた。

そして。

何も言わなかった。

「そうか」

二人は部屋を出る。

扉が閉まる。

静かな部屋。

ミナトはゆっくり椅子に座った。

そして呟く。

「写輪眼部隊」

「未知の術」

「そしてオビト」

机の上の報告書を見る。

そこには一行。

「血を操る術」

ミナトは目を閉じた。

(これは……)

ただの偵察任務ではない。

忍界のどこかで。

何かが動き始めている。

ミナトは静かに言う。

「調べる必要があるね」

夕焼けの木ノ葉。

その平和の裏で。

見えない戦いが。

静かに始まっていた。



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