根の牙

夜。

木ノ葉の外れの森。

月明かりの中、少年が一人歩いていた。

うちはオビト。

任務帰還から数時間。

オビトは夜風を感じながら森を歩いていた。

そして。

小さく呟く。

「……来たか」

次の瞬間。

シュッ――

木々の影から忍が現れる。

一人。

二人。

三人。

全員が仮面。

感情のない瞳。

**志村ダンゾウ**の直属部隊。

“根”。

オビトはため息をついた。

「早いな」

一人が言う。

「目標確認」

「うちはオビト」

「排除」

その瞬間。

三人が同時に動く。

完全に訓練された連携。

背後。

側面。

正面。

オビトは動かない。

(やっぱり根か)

未来でも何度も戦った。

動きは覚えている。

敵の一人が印を結ぶ。

「風遁!」

刃のような風。

もう一人はクナイ。

最後の一人は写輪眼。

移植だ。

オビトの瞳が赤く光る。

写輪眼。

世界がゆっくりになる。

(遅い)

オビトは一歩動く。

風刃を避ける。

クナイを弾く。

そして。

「火遁・鳳仙火」

無数の火球。

根の忍が散開する。

その瞬間。

オビトが呟く。

「黒閃」

拳。

空気が歪む。

ドン。

衝撃波。

根の忍の一人が吹き飛ぶ。

カカシが見たら確実に驚く威力。

もう一人が叫ぶ。

「接近戦!」

二人同時に突撃。

だが。

オビトの手がわずかに動く。

指先から血が落ちる。

そして。

「赤血操術」

血が空中で形を変える。

細い刃。

高速で飛ぶ。

シュッ!

根の忍の腕が切れる。

「ぐっ!」

だが。

さすが根。

痛みを無視して突っ込む。

オビトは笑った。

「いい忍だな」

次の瞬間。

印を結ぶ。

「雷遁」

雷が腕に走る。

チャクラと呪力。

混成。

拳が振り抜かれる。

ドゴン!

一人が地面に叩きつけられる。

残るは一人。

写輪眼の忍。

男は低く言う。

「……異常」

オビトが笑う。

「よく言われる」

男は印を結ぶ。

「土遁!」

地面が盛り上がる。

土の槍。

だが。

オビトの写輪眼はすでに見切っていた。

「遅い」

瞬間。

オビトが消える。

男の背後。

「終わり」

拳。

ドン。

男が倒れる。

静寂。

森に風が吹く。

オビトは肩を回した。

「ふう」

そして。

後ろを見た。

「見てるんだろ」

木の影。

そこから一人の男が出てくる。

杖。

片目の包帯。

志村ダンゾウ。

オビトは苦笑した。

「暗殺失敗」

ダンゾウは冷たい目で言う。

「……予想以上だ」

倒れた根の忍を見る。

「アカデミー生とは思えんな」

オビトは肩をすくめる。

「そうかもな」

ダンゾウはゆっくり近づく。

「その術」

「どこで覚えた」

オビトは笑った。

「秘密」

ダンゾウの目が細くなる。

沈黙。

そして。

低く言う。

「やはり危険だ」

オビトは軽く言う。

「そっちが先に殺しに来た」

ダンゾウは答える。

「里のためだ」

オビトは少し呆れた。

「またそれか」

月明かりの下。

二人の視線がぶつかる。

ダンゾウは言う。

「うちはオビト」

「最後に聞く」

「根に来い」

静かな声。

「お前の力は必要だ」

オビトは笑った。

「断っただろ」

ダンゾウはしばらく見ていた。

そして。

背を向ける。

「監視を続ける」

根の忍たちが現れる。

倒れた仲間を回収。

オビトは小さく呟いた。

「しつこいな」

ダンゾウは立ち止まる。

そして。

振り返らずに言った。

「お前は」

「いずれ里を揺るがす」

オビトは笑った。

「もう揺れてるだろ」

ダンゾウは何も言わず去った。

森に再び静寂。

オビトは空を見た。

(ダンゾウ)

(マダラ)

(未来)

全部。

盤面は動いている。

オビトは小さく笑った。

「いいさ」

写輪眼が静かに回る。

「全部」

「変えてやる」

夜の森で。

一人の少年が。

忍界の運命を静かに動かしていた。



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