尾行者

夜明け前。

霧に包まれた森を、一人の忍が駆けていた。

うちはオビト

任務は極秘。

消息を絶った師の確認。

自来也

目的地は――

雨隠れの里

枝の上に着地した瞬間。

オビトはわずかに目を細めた。

(……いるな)

背後。

微かな気配。

普通の忍なら気付かない距離。

だが。

瞳が赤く染まる。

写輪眼

木の影。

わずかな揺れ。

(尾行)

オビトは気付かないふりをして進む。

森の奥。

人の気配のない場所。

そこで立ち止まった。

「出てこい」

沈黙。

数秒。

枝の上から影が降りた。

仮面の忍。

黒装束。



オビトは肩をすくめた。

「やっぱりダンゾウか」

志村ダンゾウ

忍は無言。

次の瞬間。

クナイを持って踏み込む。

速い。

オビトは半歩ずらして回避。

忍が印を結ぶ。

「風遁!」

風刃が飛ぶ。

オビトは木を蹴って回避。

(さすが根)

普通の暗部より強い。

だが。

オビトは小さく指を切る。

血が滲む。

「赤血操術」

空中に血が浮かぶ。

忍の動きが一瞬止まる。

オビト

「赤縛」

血の縄が走る。

シュッ!!

腕。

足。

胴。

一瞬で拘束。

忍は動けない。

オビトは歩み寄る。

「質問」

忍は黙る。

オビト

「命令は?」



「……監視」

オビト

「危険なら?」



「排除」

オビトはため息。

「やっぱりな」

その瞬間。

忍の口から血が流れる。

オビトの目が見開く。

(毒!?)

忍の体が崩れる。

自決。

オビトは舌打ちした。

「チッ」

だが。

すぐに忍の体を支える。

まだ温かい。

(心臓は……)

弱い。

止まりかけ。

オビトは忍の胸に手を当てる。

思い出す。

教師の言葉。

五条悟

「呪力ってのはな」

「負のエネルギーなんだ」

オビトが呟く。

「だったら」

「負のエネルギーを――」

両手に呪力を集める。

圧縮。

重ねる。

「もう一つの負で掛け合わせる」

呪力が歪む。

「負 × 負」

オビトの瞳が光る。

「= 正」

呪力が反転する。

暖かいエネルギー。

「反転術式」

反転術式

正のエネルギーが流れる。

忍の体へ。

止まりかけた心臓。

ドクン

ドクン

忍の目が開いた。

「……!」

オビトは軽く息を吐く。

「助かったな」

忍は驚いた顔でオビトを見る。

「なぜ……」

オビトは立ち上がる。

「別に」

「殺す理由がない」

沈黙。

忍は呟く。

「……報告する」

オビト

「好きにしろ」

空を見る。

遠くに見える塔。

雨が降り始めていた。

雨隠れの里

オビトは背を向ける。

「じゃあな」

忍は動けないまま。

その背中を見ていた。

未来を知る忍。

うちはオビト。

その背中は――

かつてとは違っていた。

オビトは森を抜ける。

「さて」

呟く。

「自来也先生」

運命の場所へ。

「迎えに来ましたよ」

雨の国へ。

うちはオビトが踏み込んだ。


〆栞
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