黄色い閃光への接触

木ノ葉の夕暮れ。

空は橙色に染まり、訓練場の影が長く伸びていた。

うちはオビトは一人で座っていた。

忍具ポーチを膝に乗せ、静かに考えている。

(そろそろ動くか)

未来を知っている。

だが未来を変えるには、味方が必要だ。

そして忍界で最も信頼できる男。

それは――

波風ミナト。

未来の四代目火影。

そして。

(カカシの先生)

さらに言えば。

(ナルトの父親)

忍界で数少ない、本当に信頼できる人間。

(この人なら話が通じる)

問題は。

「どうやって接触するか」

今のオビトはアカデミー生。

普通に話しかけても相手にされない。

だが。

(方法はある)

未来知識。

それを使う。



その頃。

木ノ葉の森。

一人の忍が訓練していた。

金髪。

優しい顔立ち。

だがその動きは鋭い。

瞬間。

シュン!

消える。

そして次の木の上に現れる。

時空間忍術。

飛雷神。

それを扱う男。

波風ミナト。

(少し精度が上がったかな)

ミナトは苦笑した。

まだ若い。

だがすでに木ノ葉屈指の忍。

その時だった。

「……やっぱりここにいた」

背後から声。

ミナトの瞳が鋭くなる。

だが振り向いた瞬間。

「……あれ?」

そこにいたのは。

赤いゴーグルの少年だった。

「アカデミー生?」

オビトは笑った。

「はじめまして」

「うちはオビトです」

ミナトは困った顔をする。

「えーっと……」

(なんで子供がここに?)

普通なら追い返す。

だが。

オビトの目。

妙に落ち着いていた。

「どうしたの?」

ミナトはしゃがんだ。

すると。

オビトは言った。

「飛雷神のマーキング」

空気が止まった。

ミナトの笑顔が固まる。

「……」

「三点じゃなくて四点にした方がいいですよ」

オビトは続ける。

「三角配置だと死角ができます」

ミナトの背筋が冷えた。

(なんで)

今の話。

飛雷神の術式構造。

それは極秘だ。

(この子)

ただの子供じゃない。

「……誰から聞いたの?」

ミナトの声が少し低くなる。

だが。

オビトは平然と言った。

「未来です」

沈黙。

風が木々を揺らす。

ミナトは苦笑した。

「未来、か」

普通なら笑い話。

だが。

目の前の少年は。

冗談を言っている顔じゃない。

「……詳しく聞こうか」

ミナトは座った。

「代わりに」

オビトが言う。

「俺の話も聞いてください」

ミナトは頷く。

「いいよ」

オビトは空を見上げた。

(ここが分岐点だ)

この男に未来を話すか。

それとも。

一人で戦うか。

だが。

もう決めている。

「あなたは火影になります」

ミナトが目を丸くする。

「そして」

オビトの声は静かだった。

「九尾が木ノ葉を襲う」

森の空気が凍る。

「その日」

「あなたと奥さんは死にます」

ミナトの瞳が鋭くなる。

(冗談じゃない)

だが。

オビトの目。

嘘をつく目じゃない。

「……続けて」

オビトは言う。

「その九尾事件」

「犯人は仮面の男です」

そして。

「万華鏡写輪眼を持った、うちは」

ミナトは小さく息を吸った。

「名前は?」

オビトは少しだけ黙った。

そして言う。

「……まだ言えない」

本当は知っている。

仮面の男。

暁。

第四次忍界大戦。

全部。

でも。

(今言うと世界が壊れる)

未来は変える。

だが無理な改変は危険だ。

ミナトはしばらく黙っていた。

そして。

ふっと笑う。

「信じるよ」

オビトが目を瞬かせる。

「……え?」

「だって」

ミナトは言った。

「君、嘘つく顔じゃないから」

それから。

少しだけ真面目な顔になる。

「それに」

「飛雷神の配置の話」

「あれは確かに弱点だった」

オビトは苦笑した。

(さすが天才)

理解が早すぎる。

ミナトは立ち上がる。

「オビト君」

「はい」

「君、忍者になったら」

少し笑う。

「僕の部隊に来ない?」

オビトは固まった。

未来では。

カカシ。

リン。

そして自分。

ミナト班。

(もう未来が動いてる)

オビトは笑った。

「もちろん!」

その瞬間。

誰も知らないところで。

未来の歯車が、大きく動き始めていた。


〆栞
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