未来を知る少年

木ノ葉の森。

夕暮れはすでに夜へと変わり始めていた。

静かな風が木々を揺らす。

だが、**波風ミナト**の頭の中は静かではなかった。

(未来を知る、か)

普通なら笑い話。

子供の空想。

そう片付ける。

だが。

(あの子は違う)

うちはオビト。

まだ忍者アカデミーの生徒。

だが彼の目は――

戦場の目だった。

(僕は何度も見てきた)

任務。

戦争。

死地。

その中で生き延びた忍だけが持つ目。

子供が持つには重すぎる。

(しかも)

飛雷神。

それも術式配置の弱点。

あれを知る人間はほぼいない。

(誰にも教えていない)

開発途中の忍術。

木ノ葉でも数人しか知らない。

(つまり)

あの少年は。

本当に。

未来を知っている可能性がある。

ミナトは小さく息を吐いた。

そして。

「……九尾」

さっきの言葉を思い出す。

木ノ葉を襲う。

そして。

「僕とクシナが死ぬ」

妻の名前を聞いた瞬間。

胸が少しだけ痛んだ。

うずまきクシナ。

強くて。

優しくて。

誰よりも真っ直ぐな女性。

(あの人が死ぬ未来)

想像したくない。

だが。

(もし本当なら)

絶対に止めなければならない。



ミナトは空を見上げた。

星が見え始めている。

その時。

気配。

「ミナト」

振り向く。

赤い髪。

怒った顔。

「こんな時間まで何してるのよ!」

クシナだった。

ミナトは苦笑する。

「ごめんごめん」

クシナは腕を組む。

「また修行?」

「うん」

「働きすぎ!」

彼女はため息をついた。

「たまには休みなさい」

ミナトは少し迷った。

(言うべきか)

未来の話。

だが。

クシナは人柱力。

九尾の話は無関係じゃない。

「クシナ」

「なに?」

「もし」

ミナトは慎重に言葉を選ぶ。

「未来を知る子供がいたら」

クシナは即答した。

「面白そう!」

ミナトは笑ってしまった。

「普通は疑うよ?」

「だって」

クシナは肩をすくめる。

「忍の世界なんて変な術だらけじゃない」

確かにそうだ。

封印術。

時空間忍術。

禁術。

未来視があっても不思議ではない。

「それで?」

クシナは聞く。

「その子は何て言ったの?」

ミナトは少し黙った。

そして。

「九尾が木ノ葉を襲うって」

クシナの表情が止まった。

風が吹く。

数秒。

沈黙。

そして。

「……あたしが原因?」

ミナトは首を振る。

「そこまでは聞いてない」

クシナは空を見た。

そして。

「その子」

真剣な顔になる。

「嘘ついてる感じだった?」

ミナトは即答した。

「全然」

むしろ逆。

あれは。

「何かを背負ってる顔だった」

クシナは少しだけ笑った。

「なら」

「信じてみれば?」

ミナトは驚いた。

「いいの?」

「いいのよ」

クシナは言う。

「もし未来が本当なら」

拳を握る。

「ぶっ飛ばして変えればいいだけ!」

ミナトは苦笑した。

(この人らしい)



その頃。

うちは地区。

うちはオビトは屋根の上に座っていた。

夜風が心地いい。

(話しちゃったな)

未来の一部。

ミナトなら理解する。

そう思った。

(あの人なら)

世界を任せられる。

だが。

問題は別にある。

(俺の力)

呪力。

術式。

反転術式。

この世界には存在しない力。

そして。

御厨子。

**両面宿儺**の術式。

(まだ完全に使えない)

だが。

もし完全に解放すれば。

忍界でも最強クラスになる。

オビトは空を見上げる。

(でも)

それだけじゃ足りない。

未来には。

もっと恐ろしい敵がいる。

暁。

十尾。

そして。

六道マダラ。

かつての自分が作った地獄。

(全部止める)

そのために。

オビトはもう一度生きている。

そして。

その最初の一歩が。

今日。

**波風ミナト**に会ったことだった。


〆栞
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