落ちこぼれの正体

朝。

木ノ葉の住宅街。

**はたけカカシ**は屋根の上に立っていた。

視線の先には一人の少年。

赤いゴーグル。

うちはの紋。

うちはオビト。

(……やっぱり変だ)

カカシはここ数日ずっと考えていた。

アカデミーの実技。

体術。

チャクラ操作。

どれも落ちこぼれの動きではない。

むしろ。

(上忍でも通用する動きだった)

特に体術。

あの崩し。

あれは戦場の技だ。

子供が使うものじゃない。

(だから)

今日、尾行している。

忍として当然の判断だ。

危険な存在なら調べる。

それだけ。



オビトは住宅街を出る。

里の外れ。

森へ入る。

カカシは屋根から屋根へ飛ぶ。

音を消す。

気配を消す。

父――
**はたけサクモ**から教わった技術だ。

(……気付かれてない)

オビトは振り返らない。

普通の子供なら尾行に気付くはずもない。

だが。

それでもカカシは慎重だった。

(この距離なら大丈夫)

オビトが森の奥へ進む。

そして。

止まった。

「来てくれてありがとう」

声が聞こえた。

カカシの瞳が少し開く。

(この声……)

木の上から覗く。

そこにいたのは。

金髪の忍。

波風ミナト。

カカシは一瞬固まった。

(なんで)

木ノ葉でも有名な上忍。

天才忍者。

そんな人物と。

アカデミー生が会っている。

(どういう関係だ)

会話が始まる。

「テストですか?」

「どうして分かったの?」

カカシは耳を澄ませる。

そして。

聞こえた言葉。

「未来を知ってるだけのガキですよ」

カカシの眉が動く。

(未来?)

意味が分からない。

だが。

次の瞬間。

戦闘が始まった。



「始め!」

声。

その瞬間。

ミナトが消えた。

カカシの目でも追えない。

(速い……!)

次の瞬間にはオビトの背後。

手刀。

だが。

オビトが半歩動く。

攻撃が空振りする。

カカシの目が見開かれる。

(避けた?)

偶然じゃない。

完全に見えていた動き。

さらに。

ミナトが消える。

次は右。

左。

背後。

連続で位置が変わる。

飛雷神。

カカシは知っている。

木ノ葉でも数人しか使えない時空間忍術。

(なんで)

そんな相手と。

オビトが戦っている。

しかも。

避けている。

すべて。

カカシの背筋に冷たいものが走る。

(ありえない)

アカデミー生だぞ。

それなのに。

上忍の攻撃を読んでいる。

そして。

次の瞬間。

オビトが振り向いた。

拳。

ドン!

衝撃が森に広がる。

枯葉が舞う。

ミナトが後ろへ着地する。

カカシは固まっていた。

(今の……)

ただの体術じゃない。

拳の衝撃。

何か別の力が混ざっていた。

チャクラとも少し違う。

(何なんだ)

うちはオビト。

落ちこぼれのはずの少年。

だが今。

目の前で起きていることは。

完全に。

(上忍レベルの戦闘)

ミナトが言う。

「オビト君」

静かな声。

「何者?」

オビトが苦笑する。

「未来を知ってるだけのガキですよ」

ミナトは少し考え。

そして笑った。

「嘘だね」

だが。

次の言葉にカカシの呼吸が止まる。

「忍者になったら」

ミナトが言う。

「僕の弟子にならない?」

カカシの思考が止まる。

(弟子)

それはつまり。

ミナト班。

木ノ葉でもエリートしか入れない部隊。

そして。

オビトは笑った。

「もちろんです」

カカシは木の上で固まっていた。

頭の中が整理できない。

落ちこぼれ。

ドジ。

うるさいやつ。

そう思っていた。

だが。

今日見たものは違う。

(……こいつ)

うちはオビト。

あいつは。

落ちこぼれなんかじゃない。

むしろ。

(化け物だ)

カカシの中で。

何かが大きく変わり始めていた。



一方その頃。

オビトは森を出ながら思っていた。

(……気付いてるな)

背後。

かなり遠く。

だが。

ずっとあった気配。

カカシ。

(まあいい)

むしろ好都合だ。

いずれ知ることになる。

未来の仲間。

未来の親友。

そして。

未来で。

自分が一番傷付けた男。

オビトは空を見上げた。

(今度こそ)

絶対に守る。

カカシも。

リンも。

そして。

この世界も。



〆栞
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