木登り修行

霧の中の戦いは、突然終わった。

橋の上に倒れた
**桃地再不斬**の首に、針が突き刺さる。

いつの間にか現れていた仮面の少年。

白。

白は静かに再不斬の体を抱き上げた。

「僕は霧隠れの追い忍です」

穏やかな声だった。

「再不斬さんは危険人物なので、処理します」

カカシはじっとその様子を見つめる。

「そうか……」

そして白は再不斬を抱えたまま消えた。

霧が晴れていく。

静寂が戻る。

その瞬間だった。

ドサッ。

カカシが膝をついた。

「カカシ先生!?」

ナルトが駆け寄る。

カカシは苦笑した。

「ちょっと……チャクラ使いすぎたかな」

そのまま地面に倒れた。

写輪眼は膨大なチャクラを消費する。

上忍同士の戦闘。

水遁の応酬。

限界だった。

オビトはそれを見下ろしながら思う。

(やっぱりな)

(チャクラ切れ)

だがそれは予想通りだった。

タズナが慌てて言う。

タズナ
「家まで運ぶぞ!」

こうして第七班はタズナの家へ向かった。



タズナの家。

海の見える小さな家だった。

カカシは布団に寝かされている。

まだ意識はあるが、動けない。

ナルトは落ち着かない様子だった。

そこへ現れた少年。

タズナの孫。

イナリ。

暗い目をしている。

イナリはナルトたちを見て言った。

「忍者なんて……」

吐き捨てるような声だった。

「どうせ誰も助けてくれない」

ナルトの顔が歪む。

「なんだって?」

イナリは続けた。

「強い奴には誰も勝てないんだ」

「泣いて生きてる方がいい」

ナルトの拳が震えた。

だがサクラが止める。

「ナルト!」

イナリはそれ以上何も言わず部屋を出た。

重い空気が残る。

布団の中のカカシが小さく笑った。

「元気だねぇ」

ナルトが振り向く。

「カカシ先生!」

カカシはオビトを見た。

うちはオビト。

「オビト」

「ナルトたちに修行教えてあげて」

ナルトが驚く。

「え?」

カカシが言う。

「木登り」

忍者の基本修行。

「できるでしょ?」

オビトは肩をすくめた。

「まあな」

こうして修行が始まった。



森の中。

三人は木の前に立っていた。

オビトが説明する。

「チャクラを足に集めて木に張り付く」

「ただそれだけ」

ナルトが言う。

「簡単そうだってばよ!」

ナルトが走る。

ベチャ。

すぐ落ちた。

サクラが挑戦する。

トントンと登る。

途中で落ちた。

サスケは黙って登る。

かなり高くまで行ったが――

ズルッ。

落ちた。

三人は息を切らす。

オビトは木の上から見下ろしていた。

軽く座っている。

ナルトが叫ぶ。

「なんでそんな簡単にできるんだってばよ!」

オビトは言った。

「チャクラのコントロールだ」

サスケが歯を食いしばる。

「くそ……」

修行は続いた。

夕方になるまで。

ナルトは何度も落ちた。

サスケも。

サクラも。

だが少しずつ高く登れるようになっていた。



夜。

タズナの家。

月明かりが庭を照らしていた。

縁側に一人の少年が座っている。

イナリだった。

そこへ足音。

オビトが隣に座る。

「寝ないのか」

イナリは答えない。

オビトは海を見た。

波の音。

静かな夜。

オビトが言う。

「怖いんだろ」

イナリの肩が震えた。

「……」

オビトは続ける。

「強い奴に逆らったら死ぬ」

「そう思ってる」

イナリが小さく言った。

「だって……」

「みんなそうだから」

オビトは少し笑った。

「昔、俺もそうだった」

イナリが驚いて見る。

オビトの目は遠くを見ていた。

「だけどな」

静かな声。

「それでも立つ奴がいる」

ナルトの顔が浮かぶ。

真っ直ぐなバカ。

でも。

それが眩しい。

オビトが言った。

「明日、見てろ」

「面白いもん見れるぞ」

イナリは何も言わなかった。

だが。

少しだけ。

その目の奥の暗さが揺れた。


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