届かなかった雷

翌朝。

波の国の森は、まだ冷たい空気に包まれていた。
海から吹く湿った風が、木々の葉を静かに揺らしている。

タズナの家の裏にある林の中で、三人は一本の大木を見上げていた。

うずまきナルト。
うちはサスケ。
春野サクラ。

その少し上。

太い枝に腰を下ろし、腕を組んで三人を見下ろしている少年がいる。

**うちはオビト**だった。

三人の足にはチャクラが集まっている。

ナルトが拳を握る。

「今日は絶対登りきるってばよ!」

ナルトが走る。

トントントンッ。

昨日より高い。

だが。

ズルッ。

「うわああ!」

地面に落ちた。

サクラがため息をつく。

「ナルト、チャクラ出しすぎ!」

ナルトが頭を押さえる。

「いてぇ……」

サスケは黙って木を見上げていた。

そして走る。

トン。

トン。

トン。

昨日より高い。

だが。

ズルッ。

軽く地面に着地する。

サスケが歯を食いしばる。

「くそ……」

枝の上からオビトが言った。

「昨日より良い」

三人が見上げる。

オビトは静かに続けた。

「チャクラは多すぎても少なすぎても落ちる」

「均等に流せ」

ナルトが顔をしかめる。

「そんなの難しいってばよ!」

オビトは肩をすくめた。

「だから修行だ」

三人はまた走り出した。

修行は昼まで続いた。

そして夕方。

ナルトが叫ぶ。

「できた!!」

ナルトが木の途中まで登る。

サクラも。

サスケも。

昨日より確実に高い。

オビトはそれを見て小さく頷いた。

(十分だ)

その時だった。

遠くから叫び声が聞こえる。

「助けてくれ!!」

橋の方向。

ナルトの顔が変わる。

「タズナのじいちゃん!」

四人は走り出した。

だが。

数歩進んだところで、オビトが足を止めた。

ナルトが振り返る。

「オビト?」

オビトは周囲を見回していた。

空気の中に混ざる違和感。

ほんの僅かな――

悪意。

呪いの切れ端のような気配。

(橋じゃない)

タズナの家の方からだ。

オビトが言った。

「ナルト」

「橋はカカシたちに任せる」

ナルトが驚く。

「え?」

「タズナの家に別の連中が向かってる」

ナルトの目が鋭くなる。

「……行くぞ!」

二人は方向を変えた。

森を駆け抜ける。

そして見えた。

タズナの家。

その前に数人の男。

武器を持ったガトーの手下たち。

家の中から悲鳴が聞こえる。

**ツナミ**と
**イナリ**だ。

ナルトが叫ぶ。

「やめろォ!!」

ナルトが突っ込む。

オビトも続いた。

戦いは一瞬だった。

影分身。

体術。

数秒で男たちは地面に転がる。

ナルトが怒鳴る。

「弱い者いじめしてんじゃねぇってばよ!」

男たちは慌てて逃げていった。

ナルトとオビトは橋へ向かおうとする。

その時。

イナリがナルトの服を掴んだ。

「行かないで……!」

震える声。

「また来るかもしれない……」

ナルトが振り向く。

そして怒鳴った。

「バカ!!」

イナリがびくっとする。

ナルトが言う。

「誰が母ちゃん守るんだよ!」

拳を突き出す。

「お前だろイナリ!!」

イナリの目が揺れた。

その隣で。

オビトがくっと笑った。

イナリの頭に手を置く。

「勇気を持て」

静かな声。

「イナリ」

「お前ならやれる」

イナリの目から涙が落ちる。

だが。

袖で拭った。

「……わかった」

小さく笑った。

ナルトが笑う。

「よし!」

「じゃあ行くぞ!」

二人は森へ走った。

だが途中。

森の中で複数の男たちとすれ違う。

ガトーの手下。

ナルトが構える。

だが。

オビトが手を上げた。

「ナルト」

「先に行け」

ナルトが言う。

「でも――」

オビトは軽く笑った。

「すぐ追いつく」

ナルトは少し迷い。

そして頷いた。

「絶対来いよ!」

ナルトは橋へ走った。

オビトは一人残る。

森の中で。

ガトーの手下たちを見ながら。

(再不斬と白は)

(ただの駒か)

森で聞こえた会話。

ガトーにとって、あの二人は捨て駒。

利用するだけの存在。

オビトはゆっくりと歩き出した。

戦いはすぐ終わった。

そして橋へ向かう。

その頃。

橋の上では戦いが激化していた。

氷の鏡が並ぶ。

魔鏡氷晶。

**白**の術。

ナルトとサスケが閉じ込められていた。

針が飛ぶ。

サスケがナルトを庇う。

ドスッ。

体に針が突き刺さる。

ナルトの目が見開かれる。

「サスケ……?」

サスケが崩れ落ちる。

静寂。

ナルトの呼吸が荒くなる。

そして。

赤いチャクラが溢れ出した。

九尾の力。

ナルトが吠える。

鏡を拳で叩く。

ドン!!

氷が砕けた。

白が驚く。

その直後。

カカシが動いた。

はたけカカシ。

手に雷を纏う。

雷切。

再不斬へ突進する。

**桃地再不斬**の前に。

白が飛び出した。

自分を盾にするように。

雷切が胸を貫こうとする。

その瞬間。

一つの影が割り込んだ。

オビトだった。

カカシの前に立つ。

雷切が止まる。

カカシの目が見開かれる。

「オビト……!?」

オビトは振り返らない。

静かに言った。

「やめとけ」

一瞬。

橋の上の空気が凍りつく。

オビトの脳裏に浮かんだのは――

血。

崩れ落ちる少女。

野原リン。

カカシの手。

胸を貫く感触。

オビトは小さく息を吐いた。

「戦場でも」

「敵でも」

ゆっくり振り向く。

写輪眼がカカシを見る。

「胸を貫く感触は」

静かな声。

「良いもんじゃないだろ」

そして。

小さく笑った。

「特にカカシ」

「お前はな」


〆栞
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