巻物

死の森の奥深く。

空を覆うように枝葉を広げた巨木たちの下で、湿った空気が淀んでいる。
わずかな光だけが木々の隙間から差し込み、地面にまだらな影を落としていた。

その巨大な木の根元。

二人の少年が横たわっている。

うずまきナルト。
うちはサスケ。

どちらもまだ意識は戻っていない。

サスケの首元には、黒い紋様が薄く残っていた。
皮膚の下を這うような、不気味な印。

呪印。

だが、それは広がっていない。

暴走するはずの呪印は、途中で止められていた。

少し離れた木の枝。

そこに腰掛けているのは――

うちはオビト。

腕を組み、静かに地面を見下ろしている。

その視線の先には、

春野サクラ。

サクラは二人の傍に座り込んでいた。

髪は短くなっている。

先ほどの戦いで、自ら切り落としたものだ。

衣服には土や傷が残っている。
それでも彼女は、二人の側から離れようとはしなかった。

少し離れた場所では、

**山中いの**が腕を組み、
**奈良シカマル**が木にもたれ、
**秋道チョウジ**が地面に座っている。

チョウジが袋を開けた。

「お腹減った……」

ポテトチップスを取り出す。

いのが呆れた顔をした。

「こんな状況で食べるの?」

チョウジは真顔だった。

「だって減るんだもん」

シカマルが空を見上げる。

「はあ……」

大きくため息をつく。

「めんどくせー試験だな」

森の空気は重い。

だが、さっきまでの緊張は少しだけ解けていた。

枝の上でオビトは静かに思考を巡らせていた。

(……大蛇丸)

サスケの首元を見る。

呪印。

そしてナルトに施された封印。

どちらも――

自分の知る出来事に近い流れだった。

(ここまでは……変わらないか)

だが。

オビトの瞳がわずかに細くなる。

(違うものもある)

胸に孔の空いた忍。

虚。

あの存在は、オビトの知識の中には無い。

(確実に混ざっている)

森の奥。

気配はもう遠ざかっている。

だが完全に消えたわけではない。

(第三試験か)

オビトはそう判断していた。

今はまだ動かない。

その時だった。

サスケの指が、わずかに動く。

サクラがすぐに気付いた。

「サスケくん!」

サスケの瞳がゆっくり開く。

ぼんやりと天井の枝葉を見る。

「……ここは」

体を起こそうとした瞬間。

ズキッ

首元に鋭い痛みが走った。

「……っ」

サスケが歯を食いしばる。

サクラが慌てる。

「無理しないで!」

その時。

枝の上から声が降りた。

「目が覚めたか」

オビト。

サスケが顔を上げる。

「……オビト」

サスケは首元を触る。

「これは」

オビトは短く答える。

「呪印だ」

空気が少し重くなる。

サスケの瞳が鋭くなった。

「……大蛇丸」

低い声だった。

怒りと屈辱が混ざっている。

オビトは静かに続ける。

「暴走は止めた」

「だが消せない」

サスケは黙った。

自分の首元を見つめる。

その時だった。

ナルトが

「うーん……」

唸る。

サクラが振り向いた。

「ナルト!」

ナルトがゆっくり目を開ける。

ぼんやりと空を見て――

そして言った。

「……腹減った」

サクラが叫ぶ。

「第一声それ!?」

ナルトが起き上がろうとする。

だが体が妙に重い。

「……あれ?」

オビトが言う。

「封印術だ」

ナルトは顔をしかめる。

「なんだってばよ……」

だが深くは気にしていない。

サスケが言う。

「巻物は」

サクラがすぐに取り出す。

一つ。

第七班の持っていた

天の巻物。

そしてもう一つ。

雨忍から奪った

地の巻物。

シカマルが肩をすくめた。

「条件は揃ったな」

いのが頷く。

「中央の塔に行けば第二試験クリア」

チョウジがポテチを食べながら言う。

「早く行こうよ」

サスケが立ち上がる。

まだ完全ではないが、歩ける。

ナルトも勢いよく立つ。

「よーし!」

拳を握る。

「行くってばよ!」

サクラも頷いた。

四人は顔を見合わせる。

そして歩き出した。

死の森の奥へ。

中央の塔へ向かって。

その背中を。

森の暗がりから、静かに見つめる影があった。

胸に――

孔の空いた忍。

虚(ホロウ)。

それは小さく笑う。

「……うちは」

声は森に溶けて消えた。

第三試験。

その時は、もう近い。


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