揺れる想い

中央の塔、大広間。

戦闘場の中央に立つのは――
うちはオビト。

足元には、祓われ消えていく黒い残滓。
虚――絡繰波間の痕跡は、もうほとんど残っていない。

静寂。

観戦席はまだざわついている。

だがその中心にいる当人は――

オビトは小さく息を吐いた。

「……血、出しすぎたな」

そう呟いた瞬間、体がわずかに揺れた。

視界が少し白くなる。

赤血操術で使った血量はかなりのものだ。
さらに黒閃を連続で叩き込んだことで、体への負荷も小さくない。

(まぁ……このくらいは)

一歩踏み出そうとして――

ぐらり。

身体が傾いた。

その瞬間。

シュンッ――

背後から腕が伸び、肩を支える。

「無理するな」

落ち着いた声。

支えたのは――

**はたけカカシ**だった。

オビトが少しだけ目を向ける。

「……カカシ先生」

カカシは肩を貸したまま、戦場を見渡した。

「派手にやったな」

その声は、いつもの気だるい調子だったが。

わずかに。

感心が混じっていた。

オビトは苦笑する。

「ちょっと本気出しすぎた」

カカシはため息をつく。

「“ちょっと”じゃないだろ」

そして小さく言った。

「……見たかったけどな」

オビトが眉を上げる。

「何を?」

カカシは目を細めた。

「お前の本気の戦い」

ほんの一瞬。

空気が止まる。

オビトは視線を逸らした。

「いやいや」

「今のでも十分本気だって」

カカシは肩をすくめる。

「そうか?」

「どう見てもまだ余裕あったぞ」

図星だった。

オビトは少しだけ苦笑する。

(……さすがにバレるか)

本気の術式。

領域。

まだ何一つ使っていない。

使えば――

この試験場が消し飛ぶ。

カカシはそれ以上は追及しなかった。

ただ肩を貸したまま言う。

「歩けるか」

「まあな」

オビトは体勢を整える。

血はもう止まっている。
反転術式で内部はほぼ回復済みだ。

だが。

観戦席からの視線は、まだ熱かった。



観戦席。

**うずまきナルト**が身を乗り出す。

「オビトーー!!」

「めちゃくちゃ強かったってばよ!!」

隣で

**春野サクラ**は、何も言えなかった。

ただ。

戦場を見つめていた。

オビトの腹を貫いた刃。

あの瞬間。

自分は叫んでいた。

(でも……)

次の瞬間には。

血を操り、戦い続けていた。

そして最後は――

黒い閃光。

虚を祓う拳。

胸の奥が、妙にざわつく。

(……強い)

それだけじゃない。

落ち着いていて。

余裕があって。

仲間を守ることを迷わない。

気づけば視線が追っている。

サクラは小さく首を振った。

(な、何考えてるのよ私……!)

本命はサスケ。

それは変わらない。

はずだった。

だが。

戦場から戻るオビトの背中を見て。

胸が少しだけ――

高鳴った。

その様子を横から見ていた人物がいる。

山中いの。

いのはニヤリと笑った。

(あーあ)

(サクラ、揺れてる)

面白そうに腕を組む。



別の観戦席。

**日向ネジ**が静かに言った。

「信じられないな」

隣の

**ロック・リー**は目を輝かせている。

「青春の極みです!!」

「なんという血の闘志!!」

**テンテン**は苦笑した。

「いや……あれは普通じゃないって」

ネジは腕を組む。

「体術の精度も異常だ」

「しかも、あの拳……」

ネジの白眼には見えていた。

黒閃の瞬間。

チャクラでも気でもない――

別の何かが、空間を歪ませていた。



砂の忍たちの席。

**我愛羅**は黙っていた。

赤い血。

戦う力。

それは、自分に似ている。

だが。

決定的に違うものがある。

我愛羅が呟いた。

「……守る力」

隣の

**テマリ**が振り向く。

「え?」

我愛羅は答えなかった。

ただ戦場を見つめていた。



その頃。

火影席。

**猿飛ヒルゼン**は静かに煙を吐く。

「……面白いのう」

隣で

カカシがオビトを支えながら歩いている。

ヒルゼンは目を細めた。

「うちはオビト」

「ますます目が離せん」

第三試験は、まだ続く。

だが。

今日の試験で――

最も強烈な印象を残した忍の名は

すでに広間中に刻まれていた。


〆栞
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