本戦当日・朝

木ノ葉の朝。

空は澄み渡り、里の空気はどこか浮き立っていた。

今日は――
中忍試験本戦の日。

だが。

その朝、うちは屋敷には別の緊張が流れていた。

縁側に座る
**うちはフガク**の前に、一つの封書が置かれていた。

火影直轄の印。

極秘任務。

フガクはゆっくり封を切る。

横には
うちはイタチ。

中の文書を読み進める。

その内容は――

抜け忍。

そして。

潜入。

フガクの目が細くなる。

「……暁か」

暁。

忍界の裏で動く、正体不明の組織。

その内部へ潜入し、情報を得る。

任務の内容は明確だった。

表向き。

うちはイタチは木ノ葉を裏切る。

抜け忍となり、暁へ加入。

そして内部から情報を流す。

だが。

一人ではない。

フガクは文書をもう一度読む。

「……三人」

その名が並んでいた。

桃地再不斬。
白。

波の国で保護された二人。

その実力と境遇を踏まえ、選ばれた任務。

三人での潜入セル。

役割は明確だった。

イタチ。

暁内部の諜報。

再不斬。

外部との連絡役。

白。

受け取った情報を、火影直轄の暗部へ渡す。

完璧な情報経路。

だが。

その代償は大きい。

表向き。

うちはイタチは――

裏切り者になる。

フガクはしばらく黙っていた。

庭の木々が揺れる。

やがて言う。

「……危険だな」

イタチは静かに答える。

「はい」

フガクが聞く。

「行くか」

イタチは迷わなかった。

「行きます」

短い言葉。

だがそこに迷いはない。

フガクは息を吐いた。

「そうか」

そして立ち上がる。

「うちはの名を背負う者として」

「恥じぬ働きをしろ」

イタチは静かに頷いた。

「はい」

だが。

一瞬だけ。

イタチの脳裏に浮かんだのは――

一人の少年。

うちはオビト。

あの異質な力。

あの視線。

そして。

呪霊を祓った夜。

(……)

イタチは目を閉じた。

(まだ)

(話しておくべきことがある)



その頃。

うちは屋敷の門。

外へ出ていくオビト。

本戦会場へ向かうところだった。

「……人多そうだな」

観客。

忍。

各国の使節。

かなり騒がしいはずだ。

その時。

「オビト」

背後から声。

振り返る。

そこに立っていたのは――

うちはイタチ。

オビトは少し驚く。

「イタチ?」

「どうした」

イタチは数歩近づく。

その瞳は静かだった。

「少し」

「話がある」

オビトは首を傾げる。

「今?」

イタチは頷く。

「今だ」

短い沈黙。

朝の光が庭に落ちる。

オビトは肩をすくめた。

「……本戦前に重い話はやめろよ?」

イタチはわずかに目を細める。

「重いかどうかは」

「お前が決める」

オビトの直感が告げる。

(……なんか)

(面倒そうだな)

だが。

それでも。

オビトは笑った。

「いいぜ」

「聞こうか」

中忍試験本戦。

その直前。

うちはの二人の会話が――

静かに始まろうとしていた。


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