黒い閃光

**四紫炎陣**の内側。

穢土転生で呼び出された
**千手柱間**と
**千手扉間**は、すでに動きを鈍らせていた。

魂を直接叩かれた衝撃。

それは術式の制御を大きく乱していた。

三代目火影
**猿飛ヒルゼン**はその隙を逃さない。

印を結ぶ。

封印術。

「封じる!」

術式が二人を縛り上げる。

柱間が静かに笑った。

「やるのう……三代目」

扉間も目を細める。

「妙な術の若造だが」

「助かったな」

二人の身体が崩れていく。

穢土転生の制御は完全に乱れた。

土へ還る。

残されたのは――

二人。

ヒルゼンと。

そして

大蛇丸。

大蛇丸は静かに笑った。

「やっぱり面白いわね」

その視線がオビトへ向く。

「あなた」

「本当に下忍?」

**うちはオビト**は肩をすくめる。

「一応」

その足元。

蛇が這う。

ズルリ。

次の瞬間――

巨大な蛇が口を開いた。

「潜影蛇手!」

蛇が一斉に襲いかかる。

オビトは横へ跳んだ。

だが蛇は追う。

巻きつこうとする。

その瞬間。

水が動いた。

地面に散った水が、鋭い刃へ変わる。

ザシュッ!!

蛇の群れが一斉に切り裂かれた。

水が空中で歪む。

螺旋を描く。

大蛇丸の目が細くなる。

「水遁……?」

「でも違うわね」

オビトは静かに言った。

「さあな」

ヒルゼンは二人を見ていた。

(この子は……)

忍術だけではない。

だが。

今はそれを問う時ではない。

大蛇丸が印を結ぶ。

風が巻く。

草薙の剣が伸びる。

「終わりよ」

剣が突き出された。

オビトは踏み込む。

拳を引く。

逕庭拳。

わずかな時間差。

そして――

拳が触れる瞬間。

黒い稲妻が弾けた。

ドンッ!!

空気が爆ぜる。

大蛇丸の体が大きく吹き飛んだ。

闘技場の壁へ叩きつけられる。

ヒルゼンが目を見開く。

「今のは……!?」

黒い閃光。

それは一瞬だった。

大蛇丸がゆっくりと起き上がる。

腕が震えている。

「……ふふ」

口元が歪む。

「なるほど」

腕を見つめる。

指がうまく動かない。

印を結ぼうとして。

止まる。

「これは……」

オビトが言う。

「サスケに変なもの付けただろ」

呪印。

その言葉に大蛇丸が笑う。

「気に入らないの?」

オビトは答えない。

ただ拳を握る。

大蛇丸は静かに息を吐いた。

「今日はここまでにしておくわ」

ヒルゼンが構える。

「逃がさん!」

だが大蛇丸は舌を鳴らした。

煙が広がる。

その姿が溶けるように消えていく。

最後に声だけが残る。

「また会いましょう」

静寂が戻った。

そして。

バチッ。

四紫炎陣が崩れる。

外から忍たちが飛び込んできた。

はたけカカシ
マイト・ガイ

カカシが周囲を見る。

「火影様!」

ヒルゼンはゆっくりと息を吐いた。

「……無事じゃ」

その視線がオビトへ向く。

「助かったぞ」

オビトは頭を掻いた。

「別に」

そのとき。

外から爆音が響く。

遠くの森。

ナルトと我愛羅の戦い。

ヒルゼンは空を見上げた。

「まだ終わっておらん」

オビトも視線を向ける。

そして。

小さく呟いた。

「ナルト」

体の奥で声が笑う。

九尾。

――面白い小僧だ。

木ノ葉崩しはまだ続いている。

だが。

火影の戦いは終わった。

この日。

木ノ葉の忍たちは一人の忍を強く印象に残すことになる。

うちはオビトという名の忍を。


〆栞
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