母の砂

森の中。

倒れた木々の間を、風が静かに吹き抜けていた。

戦いの跡だけが残っている。

地面に横たわる二つの影。

**うずまきナルト**と
**我愛羅**だった。

二人とも満身創痍だ。

ナルトは大の字になり、空を見上げている。

「……いてぇ」

かすれた声。

その横で我愛羅は静かに呼吸していた。

先ほどまで暴れていた守鶴の気配は、もうない。

しばらく沈黙が続く。

ナルトが小さく笑った。

「でも……」

「勝ったってばよ」

我愛羅は答えない。

ただ、空を見ていた。

その目に浮かぶのは――

ナルトの言葉。

仲間。

守りたいもの。

理解できないはずのものだった。

我愛羅は呟く。

「……なぜ」

声はかすれていた。

「なぜ……そこまで」

ナルトは少し考える。

そして言った。

「さあな」

「でも」

少しだけ笑う。

「俺にはいるからだ」

「大事な奴らが」

その言葉を聞いた瞬間。

我愛羅の胸が強く揺れた。

大事な奴。

そんなもの、自分にはない。

――ないはずだった。

その時。

砂が動いた。

サラ……。

我愛羅の体の周囲で、砂が静かに揺れる。

まるで守るように。

ナルトは気付かず、ただ空を見ている。

だが。

その砂を見ていた者がいた。

木の上。

静かに立つ影。

**うちはオビト**だった。

オビトは二人を見下ろす。

そして、小さく息を吐いた。

「……終わったか」

戦闘の気配はもうない。

ナルトが勝った。

それを確認すると、オビトは木から降りた。

砂が動く。

我愛羅の前に、オビトが立つ。

我愛羅の目がゆっくり動いた。

「……誰だ」

オビトは答えない。

ただ、我愛羅の周囲の砂を見ていた。

サラ……。

砂は我愛羅を守るように動いている。

オビトは静かに言った。

「その砂」

我愛羅の眉が動く。

「……なんだ」

オビトはしゃがみ込み、砂を見つめた。

「お前を守ってる」

我愛羅は即座に否定する。

「違う」

「これは俺の力だ」

オビトは首を振る。

「違う」

短く言った。

そして。

静かに続ける。

「母親だ」

我愛羅の瞳が揺れた。

「……なに」

オビトは砂を指で掬う。

さらりと流れる砂。

「お前を守ってる砂」

「それは母親の意思だ」

我愛羅の呼吸が止まる。

「嘘だ」

即座に否定した。

「母は俺を呪って死んだ」

「守鶴の器として生まれた俺を……!」

オビトは静かに言う。

「違う」

我愛羅を見た。

その瞳は、真っ直ぐだった。

「お前の母親は」

「お前を守るために死んだ」

森の空気が静まる。

我愛羅の瞳が揺れる。

信じられない。

だが。

その時。

砂が動いた。

サラ……。

まるで優しく撫でるように。

我愛羅の頬を、砂がそっと触れた。

我愛羅の目が見開かれる。

オビトは小さく言った。

「守ってくれる砂がある時点で」

少し笑う。

「お前は俺より恵まれてる」

我愛羅は言葉を失った。

ナルトは静かに眠っている。

森の中で。

我愛羅の瞳から――

涙がこぼれた。

遠くから声が聞こえる。

「我愛羅!!」

砂忍の忍たちだった。

**テマリ**と
**カンクロウ**が走ってくる。

我愛羅が顔を上げた。

だが。

その時にはもう。

オビトの姿は消えていた。

木の上。

オビトは静かに森を見ていた。

その体の奥で声が響く。

九尾。

――甘いな

オビトは肩をすくめた。

「ガキにはあれくらいでいい」

九尾が低く笑う。

――フン

――人柱力同士の情けか

オビトは森の奥を見る。

ナルトが運ばれていく。

そして呟いた。

「ナルト」

「いい戦いだった」

風が吹く。

木ノ葉崩しは終わった。

だが。

その影響はまだ残っている。

火影の席。

忍の均衡。

そして――

動き始める新たな時代。

物語は次の章へ進む。



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