うちはの家

夕暮れの木ノ葉。

戦いの傷跡はまだ残っていたが、里はすでに動き始めていた。

瓦礫を運ぶ忍たち。

医療班の慌ただしい足音。

その中を、無言で歩く少年がいた。

うちはサスケ。

頭の中で、兄の言葉が何度も繰り返されている。

うちはイタチ。

暁に入る。

里を出る。

もう戻らない。

拳が自然と強く握られた。

気付けば、うちはの屋敷の前に立っていた。

扉を開ける。

「サスケ?」

声をかけたのは

**うちはミコト**だった。

台所から顔を出した母は、サスケの表情を見た瞬間にすべてを察した。

「……兄さんは」

サスケの声が低く震える。

「里を裏切った」

部屋が静かになる。

ミコトは一瞬目を伏せた。

だがすぐにサスケを見つめる。

「サスケ」

優しい声だった。

「イタチはあなたを嫌ってなんかいないわ」

サスケの眉が歪む。

「……そんなはずない」

ミコトは微笑んだ。

「あなたのこと、ずっと大事にしてたもの」

サスケは首を振る。

「だったら……なんで!」

声が強くなる。

ミコトは答えない。

答えられない。

だからただ、こう言った。

「いつか」

「分かる日が来るわ」

サスケは唇を噛み、何も言わず家を出た。



庭の縁側。

**うちはフガク**が座っていた。

サスケは立ち止まる。

フガクは静かにサスケを見た。

「聞いた」

短い言葉。

サスケは拳を握る。

「兄さんは里を裏切った」

フガクは否定しない。

肯定もしない。

ただ言った。

「忍だ」

その一言。

サスケの眉が寄る。

フガクは続ける。

「任務には理由がある」

サスケの感情が爆発する。

「じゃあ父さんは!」

「兄さんを許すのか!?」

フガクは静かにサスケを見つめた。

そして言う。

「……強くなれ」

それだけだった。

サスケは歯を食いしばる。

「……分かった」

そう言うと、家を後にした。



夜。

修練場。

クナイが木に突き刺さる。

ガンッ!

ガンッ!

ガンッ!

だが軌道が乱れている。

サスケは苛立ち、クナイを地面に投げつけた。

「くそっ……!」

その時。

背後から声がした。

「荒れてるな」

振り向く。

そこに立っていたのは

**うちはオビト**だった。

サスケは不機嫌そうに言う。

「……なんだよ」

オビトは肩をすくめる。

「修練場は共有だろ」

サスケは視線を逸らす。

少しして口を開いた。

「兄貴は裏切り者だ」

オビトは少し考えた。

「……そう見えるな」

サスケの目が鋭くなる。

だがオビトは続けた。

「でもな」

修練場の木を見ながら言う。

「本当に里を裏切る奴は」

「もっと派手にやる」

サスケの視線が動く。

オビトは静かに続けた。

「イタチは」

「誰も殺してない」

「何も壊してない」

「ただ里を出ただけだ」

沈黙。

風が吹く。

そしてオビトはサスケを見る。

「それをどう思うかは」

「お前が決めろ」

サスケは黙った。

長い沈黙の後。

サスケはクナイを拾う。

「……俺は強くなる」

オビトは小さく頷いた。

「そうだな」

「うちははそれでいい」

サスケはもう何も言わなかった。

だが。

クナイの軌道は、さっきよりも真っ直ぐになっていた。



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