抜け忍イタチ

夜。

火影室。

静かな部屋の中で、数人の忍が集まっていた。

机の前に座るのは
綱手。

その横には
猿飛ヒルゼン。

さらに
**自来也**の姿もある。

扉が開いた。

「報告します」

入ってきたのは暗部。

仮面の忍。

綱手が短く言う。

「話せ」

暗部は跪いた。

「数日前」

「火の国南方にて、ある男の目撃情報がありました」

ヒルゼンが目を細める。

「誰だ」

暗部は答える。

「うちはイタチ」

部屋の空気が変わる。

綱手が腕を組む。

「続けろ」

暗部は言った。

「その男は」

「二人組で行動していました」

「その相手は――」

一瞬の沈黙。

「霧の里の抜け忍」

「干柿鬼鮫」

自来也が低く呟く。

「鬼鮫か」

暗部は続けた。

「二人は」

「暁の外套を着ていました」

静寂。

綱手の目が鋭くなる。

「つまり」

ヒルゼンが言う。

「うちはイタチは」

「暁に入った」

暗部は頷く。

「はい」

火影室の空気が重くなる。

綱手はゆっくり言った。

「うちは一族の天才が」

「犯罪組織に入ったわけか」

自来也が腕を組む。

「面倒な話だな」

ヒルゼンは黙っていた。

そして静かに言う。

「この件」

「里にはどう伝える」

綱手は即答した。

「事実だけだ」

「うちはイタチは抜け忍」

「暁の一員」

「それでいい」



その情報はすぐに里へ広まった。

忍たちがざわめく。

「本当なのか……」

「イタチが……?」

「暁だって?」

不安。

疑念。

そして――

恐れ。



その頃。

うちはの屋敷。

庭の修練場。

少年が立っていた。

うちはサスケ。

拳が震えている。

息が荒い。

「……嘘だ」

その言葉を何度も繰り返す。

そこへ足音。

現れたのは

うちはミコト。

「サスケ」

サスケは振り向かない。

「母さん」

「兄さんは」

声が震える。

「本当に……?」

ミコトは答えなかった。

代わりに

「……」

沈黙が落ちる。

その沈黙が答えだった。

サスケの拳が強く握られる。

「……くそ」

写輪眼が開く。

赤い瞳。

怒り。

憎しみ。

その時。

背後から声。

「落ち着け」

振り向く。

そこに立っていたのは

うちはオビト。

サスケは睨む。

「オビト」

オビトは静かに言う。

「今は」

「感情で動くな」

サスケが叫ぶ。

「兄さんは裏切ったんだぞ!」

「里を!」

「うちはを!」

オビトは何も言わない。

ただ。

サスケを見る。

静かな目。

サスケが歯を食いしばる。

「……俺は」

「俺は」

言葉が止まる。

オビトはゆっくり言った。

「今のお前じゃ」

「イタチには届かない」

サスケの拳が震える。

悔しさ。

怒り。

そして。

無力。

オビトは空を見上げた。

夜空。

遠い空のどこかに。

うちはイタチがいる。

オビトは心の中で思う。

(始まったな)

暁。

抜け忍。

そして――

うちはの運命。

物語は

静かに

動き始めていた。


〆栞
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